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2024/03/24

「標準レンズの帝王」と呼ばれるオールドレンズで撮影!Photo Shoot Oldlens 【アームズフォトグラフ】

 

 「アームズフォトグラフ」は筆者が撮影した写真についてロケーションや設定、レタッチなど写真全般について色々語るコーナーだ。できる限り詳しく語っていこうと思っているので、ぜひとも写真を撮る際の参考にしていただけたら幸いだ。

 

 今回のテーマは「オールドレンズ」だ。

 

 

 

「標準レンズの帝王 」で撮る

 

 ここで使用したオールドレンズは「標準レンズの帝王」と呼ばれる『CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4(以下Planar)』だ。Planarの中でも東ドイツ製の「AEJ型」と日本製の「MMJ型」といった型があり、筆者が使用しているのは「MMJ型」になる。

 

 一番長く所有しているオールドレンズであり、メインレンズの一角として使用しているレンズだ。今回はそんなPlanarもといオールドレンズについて少し語っていこうと思う。

 

恐らくF2.8 / 1/160 / ISO 100
Planarの豊かな階調(ラチェード)を活かした一枚。オールドレンズなのでレトロな雰囲気を切り取るのにピッタリ

 

※オールドレンズという性質上exifに絞り値のデータが書き込まれないため、状況とSS・ISOから割り出したおおよそのF値で記載しています。また、焦点距離は50mm固定なので記載していません

 

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オールドレンズ / Planarとは

 

 まず先ほどから言っている「オールドレンズとは?」についてだが、簡潔に言うとフィルムカメラ時代に使われていたレンズのことを指すことが多い(厳密には70年代以前の物を指すこともある)。

 そして今回紹介する『CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 MMJは1985年発売の京セラ傘下のヤシカが製造したレンズだ。

 

恐らくF10ぐらい / 1/160 / ISO 100

 

恐らくF1.4 / 1/60 / ISO 160
夜の一枚、個人的にこういう写真は大好きだ

 

 ちなみに先ほどから呼んでいるPlanarという名称だが、これはレンズの名称ではなくCarl Zeissが開発したレンズ構成の名前になる(カメラ・レンズメーカーHPにかかれる○群〇枚といったアレだ)。

 

 レンズ構成が前後対象のダブルガウス型であり、昔の設計にしては空気面が大きいなど云々と書くと長くなるので興味がある人は「プラナー」「ダブルガウス」とかで調べてほしい。
 その次に書かれている「T*」はレンズに施されてる多層膜のコーティングのことだ。この辺りも歴史があるので興味あったら検索してほしい。
 

Carl Zeiss = ドイツの光学機器メーカー。カメラのレンズだけでなく双眼鏡や望遠鏡、医療・工業用光学機器にプラネタリウム投影機、さらに軍事用途では艦砲用光学測量機、潜望鏡、各種照準器といった光学機器も製造している。メーカーの方向性としては、日本の場合ニコンと似ている。

 

恐らくF2.8 / 1/160 / ISO 100
オールドレンズにしては意外と逆光耐性も高い。オールドレンズらしいフレアを楽しみたいのであれば逆光耐性が高すぎるのだが、オールドレンズらしい描写をだけ楽しみたいのであれば最適なレンズだ

 


 

Carl Zeiss Planarの魅力

 

 さて、ここからはPlanarレンズ自体の魅力に話を進めていこう。

 せっかくなので外装から。1980年代のレンズということもあり、50/1.4という性能ながらかなりコンパクト、そして後玉側に絞り・前玉側にフォーカスリングスイッチ類は無しのオールドレンズらしいデザインだ。

 

 もちろんAFなどはなくマニュアルフォーカスだが、フォーカスリングのトルクが滑らかでガタもない。現代のAFがメインのレンズでは中々味わえないスムーズなトルク感で回すことができ心地いい。

 

写真に写っているレンズがPlanar。ボディはCONTAX 167MT。メインで使ってるCONTAX RTSIIと違って単4乾電池で動き、自動巻き上げもあるのでラフに使えるカメラだ

 

ミラーレス一眼に取り付けた姿。
ソニー機で使用する場合、Y/CマウントからαEマウントへの変換と、フィルム(センサー)からレンズの後玉までの距離(フランジバック)を稼ぐためにレンズとボディの間にマウントアダプターを噛ます必要がある


 映りとしては設計したCarl Zeiss製レンズ自体の特徴として感覚的な評価だと発色とコントラストの良さや空気感、数値的なところだと完全補正型と像面の平坦性が高い(絞り開放から使えて画面全域の解像が均一)。それらをしっかり受け継いだCarl Zeissらしい正統派なレンズがPlanar…と言われても「???」となるだろう。

 

 レンズは数値と評判と感覚で語ったところで分かりにくいので、実際の映りを見て「こんな写り方になるレンズなんだ」と思ってもらえたら幸いだ。

 

F1.4 / 1/1250 / ISO 100
珍しく少しフレアが発生した一枚。逆光のため普通のオールドレンズであればコントラストが低下するシーンだが、しっかりと明暗を分けて描写している

 

F1.4 / 1/1000 / ISO 100
絞り開放時の光を写す力は現代のレンズにはない要素の一つだ。
手前の樋を流れる水と反射する光の描写だけでなく、奥に向けて描かれる緩やかなラチェードとボケも目を見張るものがある


 Planarの写りは古いレンズらしく開放は柔らかく淡い色の描写とは一線を画す。

 ピントが合った位置はしっかりと芯がある繊細な描写をし、色表現とコントラストが高くコッテリとした映りに近いが意外としっとりしたラチェードの描写で、感覚的な表現になってしまうが「湿度の高い写り」「空気まで写す」という言葉がピッタリだ。

 

 そしてオールドレンズらしく、絞るとキレのあるシャープな描写になってしまうのでオールドレンズらしさを味わうなら開放だが、絞って現代レンズと遜色がない描写も味わえる二面性も持つ。

 

恐らくF8.0ぐらい / 1/60 / ISO 400
開放では時々飽和しそうな彩度だったり淡い色になるが、絞ると忠実に色を再現する力の高さを思い知る。ただ、こう撮ると少し湾曲が目立つ

 

恐らくF1.4~4.0ぐらい / 1/2500 / ISO 200
雨の日もこのレンズが得意とするシチュエーション、やはり黒の締まりがいい。光が雲によって巨大な面光源になるので柔らかな光のラチェードを描くのに向いている。その場の雰囲気そのまま切り取ったかのような写真になる

 

 とはいえ欠点がないわけでもない。

 Carl Zeissの優れたレンズ設計とコーティングがあれど、やはり古いレンズ。斜めから強い光が入ると強い筋のような、オールドレンズらしいフレアというには説明がつかないほど強いフレアが発生する。そして被写体に強い光が当たっているとエッジに強いパープルフリンジが発生するのも特徴だ。

 

 ただ、どちらも撮り方や後処理でどうにかなるレベルであったり、レンズの癖と思うとそこまで苦ではない。

 

恐らくF11~16 / 1/125 / ISO 400
Planarの湿度が高い映りと色表現の良さが出て静謐な一枚となった写真。濃い色の緑の中に赤色がアクセントになっていい

 


 

なぜオールドレンズを使うのか

 

 さて、ここまで話してきてこの疑問を抱いている人も多いと思われるのが「なぜ古いレンズを使うのか?」だ。見た目がいいだけなら巷にあるオールドレンズらしい見た目の最新レンズも出ている。

 先ほど話したとおり、SSやISOはカメラ側で自動にできても絞りと手動フォーカスはマニュアルのみ、映りに均一性はなくフレアも出やすい。極めつけは生産は終わりメーカー修理などはなく、それなのに経年劣化による故障が付きまとう。

 

F1.4 / 1/640 / ISO 100
コンパクトながら1.4の大口径レンズなのでこういった風景で開放で撮ると、奥に向けて緩やかにボケるので奥行き・空気感を感じさせる写真にしつつ、奥は情報量が減って情報が過密すぎない写真になる

 

 そんなレンズをなぜ使うのか? 第一に「撮る過程が楽しい」からである。

 カメラを構えてレンズ側で絞りとフォーカスを調整し、よりフィルムらしさを味わうならカメラ側のダイヤルでSSを操作しISOは固定で撮る。今時AT車でなくMT車をわざわざ運転する気持ちに近い。

 滑らかなフォーカスリングやクリック感と実際に動いている感触のある絞りリングの操作も撮る楽しさに一役買っている。

 

F1.4 / 1/400 / ISO 100
Planarを使い撮影し、帰ってデータを見て驚いた一枚。開放ながらもピント位置はしっかりと解像されていてシャープだが、エッジが自然なため見ていて不自然を感じさせない。
昔のレンズの開放ながらも流体表現や葉脈の解像感といった繊細な描写には目を見張るものがある

 

恐らくF1.4~F2.8 / 1/30 / ISO 1000
落ち着いた色味とラチェードが素晴らしい。ただ、このレンズの特徴として背景に自然があると少しだけボケがうるさく主張が激しい時がある

 

 次に「映り」だ。

 趣味で使うレンズなので映りが好みというポイントはレンズ選びにおける最も優先される事項だ。現代レンズでは味わえない描写は一度触ったら癖になる人は癖になるだろう。優等生じゃなく、癖のある描写でしか味わえない写真がある。

 

 ちょっとしたポイントで、現代の主流となる非球面レンズが使われてないのでタマネギボケと呼ばれる現象が起こらず、丸ボケが綺麗なことが多い(現代でも高級なレンズはより精密な加工技術によって発生しないレンズはある)。

 

 またマニュアルフォーカスなためピントが少し前後にずれた写真が撮れる時もあるが、ピントが少し被写体からずれた写真もなぜか場の雰囲気を感じられていい写真になる。

 

F1.4 / 1/320 / ISO 100
雨天の枝垂桜を撮った一枚。湿度を感じさせる繊細な写りと滑らかなボケが好みな写真で、その場の空気感が伝わってくる

 

 最後の理由が「ロマン」だ。

 往年の銘玉と呼ばれたレンズを扱う高揚感や、憧れの写真家が実際に使っていたレンズを使って撮るときは何事にも代えがたい楽しさがある。

 また、そのレンズの歴史を思い馳せながら撮るのも一興だ(東西に分かれ別々の道を歩んだ東側のCarlZeissことCarlZeiss jena製レンズや、今は亡きZUIKOやASAHIなどのロゴが入ったメーカーのレンズなど)。

 

F1.4 / 1/2500 / ISO 100
絞り開放で撮ったが、しっかりと芯のある写りでビルを写しているのにシャープネスは高すぎず自然な写り。そして緩やかに影に落ちていくラチェードも最高だ

 


 

 実は『標準レンズの帝王』という二つ名の初出は広告のキャッチコピーであったが、このレンズの性能はキャッチコピーに恥じない性能を秘めている。

 

 オールドレンズという物の性質上、新品は存在せず中古品しか存在しないので、筆者から軽率に購入を薦めることはできない。このレンズの写りを見てオールドレンズに魅かれた方は、個人売買のサイトではなく、古いレンズを取り扱うカメラ・レンズショップや「世界の中古カメラ市」といった場所に赴いて、実物を見てから購入することをお薦めする。

 ぜひオールドレンズを使ってみて、その魅力に気づいていただければ幸いだ。

 

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PHOTO&TEXT:出雲

 


 

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