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2024/02/04

【解説】警視庁の救助隊「機動救助隊」「SRT」とは? ~日本の警察~【第5回】

 

警視庁が独自に編成する救助隊

 

 我々にとってもっとも身近な法執行機関「警察」。道に迷った、物を落としたといった際に、交番に駆け込んだ経験のある方も多いだろう。その一方で、事件が起こった際に、普段見ることのない部隊が登場することもある。間口は広く、奥行きは深い……。

 知っているようで知らない「警察」の世界を、取材歴25年以上の軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、実際の事件も例に取りながらわかりやすく解説していく。

 

 第5回は警視庁が独自に編成する2つの救助隊を解説しよう。
 

第1回「警察庁編」はこちら

第2回「警視庁編」はこちら

第3回「警察本部」はこちら

第4回「広域緊急援助隊」はこちら

 

防災訓練において、埋没した土砂から要救助者を助け出し搬送する機動救助隊

 

●警視庁が独自に編成する「機動救助隊」


 警視庁には独自の救助部隊がある。
 その名も「機動救助隊」。
 1972(昭和47)年に新編された歴史の古い部隊だ。黒豹がシンボルマークとなっており、警察レスキューを表す「R110」とともに、車輌・資器材等いたるところに描かれている。約3,000人もの機動隊員を有する警視庁だからこそ編成できる部隊といえよう。
 発足当時から2011年までは、濃い緑色を部隊カラーとし、車両や出動服もすべて緑で統一されていた。しかし、荒天時や夜間などに目立たないし、一般の人や他機関から救助部隊であると分かりづらいとの理由から、出動服が一新された。
 新しい出動服は、消防レスキューのようにオレンジ色を基調とし、胸と背中の部分に反射材を付けて、目立つようにした。その上で、肩周りから袖の部分に「緑」を残した。肘と膝の部分を刺し子にして耐久性もアップ。さらに背中には警視庁との表記の他、POLICE RESCUEとオレンジ色で記され、外国人にも救助部隊であることが一目で認識できるようにもした。
 現在、警視庁内に10個ある機動隊すべてに、2~3個の機動救助小隊が編成されており、全22個小隊が交代しながら24時間体制で待機している。
 ほとんどの機動救助隊員が広域緊急援助隊員も兼ねており、大規模災害が発生した際には、緑から青の出動服に着替えて現場へと向かうことになる。さらに国際緊急援助隊員として指定されている隊員も多い。

 

警視庁部隊出動訓練にて行進する機動救助隊。消防レスキューのようにオレンジ色を基調とした出動服に一新されている

 

 

●東日本大震災を教訓に生まれた「特殊救助隊 SRT」

 

 警視庁は、東日本大震災を契機として、さらなる災害警備力の向上をはかっている。
 その一環として、2012年9月1日、警備部災害対策課の中に「特殊救助隊SRT(Special Rescue Team)」が発足した。
 未曾有の大災害において、東京消防庁のレスキュー部隊と同じような高度な救助技術、災害医療の知識などを習得した部隊の必要性を痛感したことが大きなきっかけとなっている。隊員は主として機動救助隊員から選抜された。

 

 SRTは完全なる救助専門部隊であり、機動隊内の機能別部隊とは異なる。
 機能別部隊の中には上記の機動救助隊のほかに、国際緊急援助隊、水難救助隊など、救助部隊はいくつも存在する。だが、いずれの部隊にも専従の隊員はいない。機動隊員は保有する資格に応じて、機能別部隊を2~3個掛け持ちしているのが基本なのだ。楯をもってデモ隊と対峙している隊員が、次の日には広域緊急援助隊として被災地に赴くことだってある。
 対してSRTは完全なる救助専門部隊として編成された。だから隊員たちは、救助に関する任務に専念することになる。


 SRTの拠点となるのは、立川広域防災基地内にある多摩総合庁舎である。ここは東京消防庁第八消防方面本部消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)、陸上自衛隊立川駐屯地、災害医療センターなどが隣接しており、警視庁だけを見ても、航空隊や第四機動隊などが真横にあり、まさに災害時の要所とも言える場所だ。
 訓練については、航空隊立川飛行センターの横にある備蓄倉庫の一部が訓練棟となっているほか、夢の島総合訓練場などが使われる。
 

災害医療の知識もあるSRT及び機動救助隊が、民間医療機関と連携し救急救命に当たる

 

●指導班と実施班、SRTに課せられた2つの役割

 

 SRTの構成人数は36名。隊長1名(警視)、班長2名(警部)の幹部がおり、指導班(7名)と実施班(28名)に分かれる。
 指導班は各警察署を巡り、レスキューに関わる指導等を行なう。2013年4月より、警視庁では102署すべての警察署を対象に救出救助部隊を置く事を決めた。この警察署救助隊、通称警察署レスキュー部隊は地域課員を中心に指定されており、警視庁全体で約3,600名にもなる。指導班は彼らを指導するという重大な役割を担っているのである。
 SRT実施班は災害時に即時派遣される。迅速に対応できるよう9名3交代制となっている。
 実施班の役割はあくまで初動対処。だから救助活動において、重機や特殊救助ツールが必要な場合はそれらを装備している広域緊急援助隊や消防レスキューと協力しながら進めていく。一方で、JPTEC(病院前外傷教育プログラム)やMCLS(多数傷病者への対応標準化トレーニングコース)で知識や技能を習得しているので、医療機関やその他救助機関との意思疎通も完璧に行なうことが可能だ。
 部隊には「広域用情報収集自動二輪車」「広域緊急援助隊用レスキュー車」「災害用資器材運搬車」「災害活動用高床バン型車」などが配備されている。

 

防災訓練にて救助活動を行なう旧出動服姿の機動救助隊員

 

 

TEXT&PHOTO:菊池雅之

 

※日本の治安を守る警察についてわかりやすく解説するホビージャパンMOOK「日本の警察」が2024年2月29日に発売予定です。

 


 

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