2024/01/07
【解説】日本の警察 ~道府県に設置される「警察本部」~【第3回】
道府県に設置される「警察本部」
我々にとってもっとも身近な法執行機関「警察」。道に迷った、物を落としたといった際に、交番に駆け込んだ経験のある方も多いだろう。その一方で、事件が起こった際に、普段見ることのない部隊が登場することもある。間口は広く、奥行きは深い……。
知っているようで知らない「警察」の世界を、取材歴25年以上の軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、実際の事件も例に取りながらわかりやすく解説していく。
第3回では道府県に設置される「警察本部」について解説しよう。
●各道府県が運営する警察本部
警視庁をのぞく日本全国46の道府県では、各自治体名を冠した警察本部を運営している。もはや説明は不要であろうが、大阪府であれば大阪府警察、埼玉県であれば埼玉県警察といった具合だ。表記方法や呼び方については、“察”の字を省略し、埼玉県警などとするのが一般的だ。
いずれもトップの役職は本部長となる。道、府、一部県の警察本部では、本部長の階級は警視監となっている。それ以外の警察本部では、本部長の階級は警視長となっている。
警察庁及び警視庁と同じように各警察本部も公安委員会が所管している。大阪府警や福岡県警など、大規模警察本部については、5名の公安委員会が所管する。そして本部長をトップとして、総務部、警務部、生活安全部、地域部、刑事部、交通部、警備部、市警察部、警察学校等で構成されている。
それ以外の警察本部については、3名の公安委員会が所管してる。そして本部長をトップとして、警務部、生活安全部、刑事部、交通部、警備部、地域部(一部の警察本部のみ)、警察学校等で構成されている。このように、警察本部によって各部の構成は多少異なる。例えば、地域部がない警察本部については生活安全部の中に地域課として内包されている。和歌山県警は、地域課とは呼ばず、地域指導課としているが同じ役割を果たす。
趣が異なるのが北海道警察だ。本部長をトップとして、総務部、警務部、生活安全部、地域部、刑事部、交通部、警備部、市警察部、警察学校及び分校等で構成されている。担当するエリアが広大であるため、道内を札幌、函館、旭川、釧路、北見の5つに分け、各方面本部を置いている。札幌は本部直轄という位置付けであるが、それを除く4つの方面本部は、独立した運営ができるようになっている。そのため、北海道警察を所管する北海道公安委員会(5名の委員)の他、各方面本部でも、方面公安委員会(委員3名)が所管する形をとっている。警察学校についても、各方面本部に方面分校を配置し、それぞれの方面隊ごとに教育できるようになっている。こうした編成となっているのは北海道警察のみだ。
なお、道府県警察には市警察部が存在している。これは警視庁にはない。政令指定都市など人口が多く、重要な施設が多い都市に配置している。“市”警察部と呼ぶからと言って、各市が独立した警察組織を持っているわけではなく、方面本部に近いイメージだ。現在14道府県18市に市警察部がある。
●警察本部にも大きな違いがある
警察本部の違いは名称だけではない。警察官及び警察職員の数、警察署の数なども人口に比例しているので、違いがある。
当然日本警察で一番規模が大きいのは警視庁である。
それ以外の道府県警察で見ていくと、一番警察官の数が多いのは大阪府警であり、警察官及び警察職員の数は約23,200人を抱える。それに次ぐのが神奈川県警で、警察官及び警察職員の数は約17,000人を抱える。
警察や交番の数も警察本部により異なる。こちらも一番多いのは警視庁であり、102個の警察署がある。大阪府警は66個の警察署、神奈川県警は54個の警察署となっている。ちなみに1番数が少ないのが鳥取県警で、9個の警察署のみ。
警察署が少ないと、住民にとっては、免許証の更新や拾得物の取り扱い、各種相談などが不便となる。そこで、警察署に準ずる「警部交番」を設けている警察本部もある。
通常の交番は、警部補または巡査部長が交番所長を務めるが、こちらはそれらよりも上の階級である「警部」を所長とし、権限を拡大して、警察署で行なうような手続きができるようにしている。ちなみに「幹部交番」「警察署分庁舎」などと呼ぶ警察本部もあるが、役割は同じである。
TEXT&PHOTO:菊池雅之
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