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2023/12/24

【解説】日本の警察 ~首都、東京の治安を守る「警視庁」~【第2回】

 

首都の治安を守る「警視庁」

 

 我々にとってもっとも身近な法執行機関「警察」。道に迷った、物を落としたといった際に、交番に駆け込んだ経験のある方も多いだろう。その一方で、事件が起こった際に、普段見ることのない部隊が登場することもある。間口は広く、奥行きは深い……。

 知っているようで知らない「警察」の世界を、取材歴25年以上の軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、実際の事件も例に取りながらわかりやすく解説していく。

 

 第2回では日本の首都の治安を守る警視庁の役割と組織を解説しよう。

 

第1回はこちら

 

 

●日本最大規模の警察組織

 

 日本の首都である東京の治安を守る警視庁は、日本最大規模の警察組織だ。他の警察本部とは桁違いの人員、装備、予算で構成されている。
 警視庁の人員は約43,000人。日本第2位の警察本部である大阪府警では、約23,300人(警察職員含む)。担当する面積の広い北海道警は、約11,700人(警察職員含む)。比べてみると圧倒的な人数だ。では、警視庁同等の人員を抱える組織を探すと、海上自衛隊の約45,000人となる。
 警視庁が保有するパトカーは約1,300台、白バイは約1,000台、警備艇は22隻、ヘリコプターは14機。同じく大阪府警と比較すると、パトカーは約470台、白バイ約120台、警備艇12隻、ヘリコプター6機となり、装備の数も2位以下を大きく引き離す。

 本来ならば、警視庁ではなく、東京都警察本部とすべきである。そうしなかったのは、日本が警察機構を作る際に参考にしたイギリスやフランスが、それぞれ首都警察を別格としていたのに倣ったと言われている。英語表記はMetropolitan Police Departmentとし、頭文字を取ってMPDとしている。

 

警視庁には広域緊急援助隊等救助部隊を複数編成しており、日本全国の災害現場へと派遣している

 

●ルーツは明治時代から

 

 現在の自治体警察たる警視庁となったのは1948(昭和23)年から。
 だが、内務省管轄で警視庁が誕生したのは1874(明治7)年のことである。津山藩江戸藩邸(鍛冶橋)に本部を置き、初代大警視(後の警視総監)となる薩摩藩の川路利良が作った。よって今でも「日本警察の父」として、警視庁に留まらず他警察本部でも、警察官になったからには必ず川路大警視の足跡を警察学校で学んでいる。

 

中村徳五郎著「川路大警視」より​​​​​​

 

 川路大警視は、戊辰戦争の際、鳥羽伏見の戦いから会津戦争までを大隊長など、指揮官として戦い抜いた。明治時代に入り、警察機構を学ぶため、欧州へ派遣。その結果、日本の警察は、フランスの警察制度を参考にした。
 1877(明治10)年に西南戦争が起きると、警視隊が組織され、別働第三旅団として陸軍の中に組み込まれる。このため、川路大警視は陸軍少将を兼任し、同旅団長を務めた。圧倒的強さを誇る西郷軍に立ち向かうため、別働第三旅団の中から腕の立つ者を選抜し、抜刀隊を新編。後に田原坂の戦いと呼ばれる西南戦争最大の戦闘に勝利した。

 1911(明治44)年、東京駅を作るにあたり、その敷地に警視庁本庁舎も含まれたため、鍛冶橋から日比谷へと移転することになる。新庁舎は、日比谷赤煉瓦庁舎と呼ばれ、警視庁のシンボル的存在となるも1923(大正12)年の関東大震災で炎上し崩壊。しばらく同地にて仮庁舎を建てて業務を行なっていたが、1931(昭和6)年に現在の桜田門前に新庁舎を建てた。その後警視庁創設100周年記念事業の一環として、1980(昭和55)年に現在の庁舎へと建て替えられ、現在に至る。

 

警視庁は警察官やパトカーの数など、他の警察本部と比較にならないほど多い

 

●警視庁の編成

 

 警視庁は、関東管区警察局には属していない。所管するのは東京都公安委員会だ。5名の委員で構成されている。警視庁を指揮するのは警視総監。これは、役職でもあり階級でもある。ただし、警視総監の階級にあるのは、警視庁のトップである警視総監ただ一人。
 基本的に警察庁長官は、警視総監経験者から選ばれるが、その際階級はなくなるので、事実上日本警察官のトップは警視総監となる。なお、警察庁長官の下には警察庁次長と言うポストがあるが、こちらの階級は警視監。よって、階級だけ見ると、警察庁長官に次ぐポストとなるのは警視総監とも言える。
 警視庁は、総務部、警務部、交通部、警備部、地域部、公安部、刑事部、生活安全部、組織犯罪対策部、警察学校、犯罪抑止対策本部で構成されている。各部長は警視監、警視長の階級の幹部が当たる。

 

参考:警察白書

 

日本警察の最高位の階級及び役職である警視総監による部隊巡閲

 

 各部の中で注目すべきは公安部の存在だ。公安部とは、「公共の安全と秩序」を守るため、活動内容を秘匿し、内偵や潜入といった特殊な捜査を得意とする。公安部として独立しているのは、47都道府県警察の中で警視庁だけだ。他の警察本部では、警備部内に公安課としている。警視庁公安部は、日本全国を担当しているので、規模も活動範囲も大きくなる。

 組織犯罪対策部も警視庁のみ。こちらは主として暴力団対策を行なう。他の警察本部では、刑事部内に「捜査第4課」「暴力団対策課」「組織犯罪対策課」としている。ちなみに暴力団対策を行なうセクションを部として独立させているのは、警視庁の他に福岡県警のみ。こちらは暴力団対策部としている。なお、大阪府警などは組織犯罪対策本部、兵庫県警などは組織犯罪対策局と、部や局を名乗っているが、独立はしておらず、刑事部内に内包されている。

 警視庁では、東京都を10個に区切り、それぞれ方面本部を置いている。各方面本部の下に警察署が編成されている。当然ながら、日本で1番警察署が多いのは警視庁であり、102個の警察署がある。
 警察署には警務課、会計課、交通課、警備課、地域課、刑事課、生活安全課、組織犯罪対策課がぶら下がっている。地域課はさらに担当管轄内に、交番や駐在所を置いている。また、警視庁湾岸警察署には、水上安全課があり、警備艇を運用している。

 

警視総監による年末の特別警戒の視察。神宮前交番の警察官が警戒・警備状況を説明する

 

第3回はこちら

 

TEXT&PHOTO:菊池雅之

 

※日本の治安を守る警察についてわかりやすく解説するホビージャパンMOOK「日本の警察」が2024年初頭に発売予定です。


 

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