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2023/12/10

【解説】日本の警察 ~警察のトップ「警察庁」~【第1回】

 

日本警察のトップ「警察庁」

 

 我々にとってもっとも身近な法執行機関「警察」。道に迷った、物を落としたといった際に、交番に駆け込んだ経験のある方も多いだろう。その一方で、事件が起こった際に、普段見ることのない部隊が登場することもある。間口は広く、奥行きは深い……。

 知っているようで知らない「警察」の世界を、取材歴25年以上の軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、実際の事件も例に取りながらわかりやすく解説していく。

 

 第1回では日本警察の上位組織である「警察庁」の役割と組織を解説しよう。

 

 

●警察を「監督」する役割

 

 日本には約30万人の警察官(警察職員含む)がいる。そして各都道府県に警察本部を置き、日本の治安を守っている。

 その警察組織のトップとなるのが警察庁だ。ただし、警察庁には、直接的に捜査や警備の指揮権はなく、厳密にいえば「監督」するのが仕事となる。1954(昭和29)年に(新)警察法が施行され、国家公安委員会と警察庁、都道府県警察が設置された。

 内閣総理大臣の下にぶら下がる中央省庁の一つであり、警察庁を取りまとめるのは警察庁長官だ。警察官僚のポストであるが、階級は存在しない。ちなみに現長官である第30代警察庁長官は、京都大学卒業後、警察庁へ入庁。警視庁や埼玉県警などで刑事畑を歩んできたキャリアだ(編注:2023年11月現在)。

 その警察庁は国家公安委員会が所管する。というのも、警察は時には人の身柄を確保し、自由を奪う権限を持つ。その圧倒的権力が間違った方向に向かないように、警察がきちんと正しく運営されているかを監視するためだ。政治的中立性が確保されているか、民主的な運営がなされているかを判断するのは、国務大臣たる委員長と5人の委員により構成されている国家公安委員となる。当然ながら、国家公安委員長、そして5名の委員には、警察官やその関係者が就くことができない

 

全国の都道府県警察本部に所属する警察官が携行する警察手帳(右が現行、左が旧警察手帳)

 

●全国にある警察庁の組織

 

 警察庁は、長官官房、生活安全局、刑事局、交通局、警備局、情報通信局、そして付属機関として、皇宮警察本部、警察大学校、科学警察研究所を持つ。各局は、警視監の階級の局長が指揮する。これは警視庁でいえば副総監、他警察本部で言えば本部長等となるので、かなり上位の階級だ。そして各局の下には各課がぶら下がる。警察庁交通局でいえば、交通企画課、交通指導課、交通規制課、運転免許課など。各課長の階級は警視正(例外あり)。

 

交通警察において、法執行に欠かせないヴィークルとなっている白バイこと、交通取締用オートバイ


 さらに地方機関として、日本列島を7つに区分し、それぞれ監督している。それが、東北管区警察局、関東管区警察局、中部管区警察局、近畿管区警察局、中国管区警察局、四国管区警察局、九州管区警察局だ。

 例えば、東北管区警察局は、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島を管轄し、それぞれを担当する各県警をまたぐような広域対応を必要とする警察事象その他の国の公安に係る警察活動をはじめ、監察や教育訓練、警察情報通信等の業務について主体的な役割を果たしている。

 なお“北海道管区警察局”が存在しないのは、北海道には北海道警察1つしかなく、地理的に他県とまとめる事ができないからだ。また警視庁は、管区としては関東管区にあたるが、そこには含まれていない。というのも警視庁は、これまた巨大な組織力、警察力を持つ大規模警察本部であるため、まとめる必要がないとの判断からだ。もちろん警視庁と関東管区内の各都道府県警察本部とはしっかりとした協力体制で結ばれている。警視庁と北海道警が独立しているため、前述のように管区に含めない代わりとして、北海道警察情報通信部、東京都警察情報通信部を置き、警察庁との情報共有や調整、連絡に当たる。

 中部、近畿、九州警察局は、総務監察部、広域調整部、情報通信部、管区警察学校という編成だ。一方の東北、中国、四国警察局は、総務監察・広域調整部、情報通信部、管区警察学校という編成。残る関東管区警察局は他の管区警察局よりも規模が大きいので、総務部、監察部、広域調整部、情報通信部、管区警察学校となっている。各部長の階級は警視長だ。

 

参考:警察白書

 

 

警察庁が直轄運営する皇宮警察本部は天皇皇后両陛下、上皇上皇后両陛下、そして皇族殿下方の護衛と皇居、御所、御用邸などの警備を行なう

 

●警察庁と警視庁はライバル!?

 

 警察を描く映画やドラマ、小説には、度々警察庁と警視庁がいがみ合い、時には足を引っ張り合うような描写がある。だが、実際は、警察庁の各局には、直接捜査や取り締まりなど活動を行なう指揮権も執行部隊もない。何よりも、基本的に警察庁は、警視庁や各警察本部を経験した者が就くので、警察庁での勤務を経て、再び各警察本部へと戻るといった“行ったり来たり”人事が基本だ。後ろ足で砂をかけるようなことをする理由もないし、する必要もない。

 ちなみにある警察庁長官の足跡を辿ってみると、警察庁入庁後、和歌山県警、千葉県警、警察庁、警視庁、警察庁……と、やはり行ったり来たりだ。警察官僚ではなく、ノンキャリアの警察官であっても、警察庁勤務を経験する人は多いので、現場レベルでの対立も起きないし、起こす意味もない。

 よって、対立はあくまで演出上のお話と割り切ろう。

 

各警察本部はマスコットキャラクターを作り、交通安全運動等のイベントで活躍している

 

第2回はこちら

 

TEXT&PHOTO:菊池雅之

 

※日本の治安を守る警察についてわかりやすく解説するホビージャパンMOOK「日本の警察」が2024年初頭に発売予定です。

 


 

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