2023/11/21
【解説】映画『ゴジラ-1.0』で登場した「九九式短小銃」とは?
現在上映されている映画『ゴジラ-1.0』。その舞台はこれまでのゴジラシリーズとは異なり、戦後の焦土と化した日本である。この映画ではタナカワークスがメディア協力しており、「九九式短小銃 グレースチールフィニッシュ モデルガン」が劇中で使用されているという。はたしてこの小銃はどんな銃なのか。
九九式小銃の誕生
九九式小銃は、昭和15(1940)年に制式が制定された。製造は昭和16(1941)年12月に始まり、昭和20(1945)年8月の敗戦までこれが続く。実質3年9ヵ月の製造期間ではあったが、この間に240万挺程が製造されたといわれている。
九九式小銃の特徴は二つある。一つは従来の主力口径である6.5×50mmSR弾から7.7×58mm弾への増口径であり、もう一つはリミットゲージ法を使用した完全部品互換であることだ。日本陸軍には、三十年式銃で6.5mm口径を採用した当初から、.30口径(7.62mm)クラスの大口径弾薬を採用したいという願望が底流にあったようで、大口径弾薬の研究は再三行なわれてきた。
また、大正9(1920)年に策定された「陸軍技術本部兵器研究方針」という、第一次世界大戦中に急速に進歩した列強の兵器に追いつくための研究課題にも、主力小銃の.30口径クラスへの増口径が謳われている。ただ陸軍の主力弾薬の変更は、銃本体の製造に加えて膨大な備蓄弾薬の確保など、予算面での問題が大きく、なかなか増口径に踏み切れないのが実情であった。
しかし、昭和12(1937)年に支那事変が勃発すると臨時軍戦費が青天井となり、急遽主力小銃の増口径に踏み切る予算上の問題がなくなって、九九式小銃が誕生することになる。以上が、九九式小銃制式制定の経緯だ。
九九式小銃には、三八式歩兵銃と同等の長さの長小銃と、それより全長を15cmほど減じた短小銃の制式が制定されたが、制式制定直後に少数の長小銃が製造されただけで、以降は陸軍省の兵器製造令達により短小銃が作られ続けた。
何故、三八式歩兵銃の方が有名なのか?
陸軍の悲願であった主力小銃の7.7mm化を達成した九九式小銃。だが、実際のところ、第二次大戦における日本軍の主力小銃は三八式歩兵銃という認識が主流となっている。これは一体、何故だろうか。
それは九九式小銃の生産の始まりは対米戦開始とほぼ同時であったため、従来装備していた三八式6.5mm系との入れ替えることはできず、九九式7.7mm系と併用する形でこの戦争に臨むことになってしまったからである。この際、陸軍は、内地と満州に7.7mm系を重点配備し、南方と支那派遣軍の主力装備は6.5mm系という二本立てとする方針を打ち出した。
このため、最も激しかった戦闘正面の主力銃は依然として三八式6.5mm系のままであり、九九式小銃は、第二次世界大戦の主戦場ではあまり活躍できなかったという結果に終わってしまった。これは九九式小銃に問題があるというより、その制式制定の時期選択が間違っていたということに尽きるだろう。
九九式短小銃を再現したタナカワークスのエアガン
そんな九九式小銃だが、タナカはそのバリエーションの中から対空照尺や単脚が備わっている初期型をガスガン、モデルガンでリリースしてきた。今回紹介するのは、ブラック仕上げの鬼胡桃銃床仕様となったVer.2ガスガン。ストックは実銃にも使われている鬼胡桃(オニグルミ=国産のウォールナット材)が用いられ、特徴的な「合わせ式」銃床の雰囲気が再現されている。三八式歩兵銃ではボルト周りは白磨きを再現したグレースチール仕上げだったが、九九式はバレルやレシーバーに加えてボルトも重厚感溢れるブラック仕上げとなった。
タナカ
九九式短小銃
Ver.2 Black 鬼胡桃銃床仕様ガスガン
DATA
- 全長:1,120mm
- 全高:175mm
- 全幅:96mm
- 重量:3,020g
- 装弾数:10発
- 価格:¥108,900
- お問い合わせ先:タナカ
タナカ 九九式短小銃 Ver.2 Black 鬼胡桃銃床仕様ガスガン
ガスボルトアクションらしい軽快かつスムーズなボルト操作に加えて、Ver.2仕様ならではのパワフルな撃ち応えが楽しめる。映画『ゴジラ-1.0』を見て興味が出た方はぜひお手に取ってご覧いただきたい1挺だ。
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日本の軍用小銃
日本軍小銃 究極の研究書
明治13年から昭和20年の敗戦まで、日本陸海軍が制式制定したすべての小銃についての研究書。最初の国産小銃である村田銃から、昭和19年の海軍四式小銃まで、アジア歴史資料センター等に残されている公式記録を詳細に精査し、その開発から採用、運用に至るまでを詳しく分析、それを元に解説している。近代日本が対外戦争で用いた道具に対し、いたずらに賛美したり、あるいは貶めたりすることなく、可能な限り主観を排し、事実のみをここに記した。現時点でこれは、日本軍小銃に関する究極の研究書であると自負している。気になる方はぜひご覧いただきたい。
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