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2023/05/02

アニメやドラマで登場する国際刑事警察機構、インターポールとは【解説】

 

インターポールとは?

 

 アニメやゲーム、ドラマなどに「インターポール」と呼ばれる組織が登場することがある。彼らは犯罪を防止する使命の下に設立された政府間組織であり、フランスに本拠を構えている。では一体彼らはどのような組織なのだろうか? ここでは公式資料や警察白書を参考に、インターポールについて解説しよう。

 

International Criminal Police Organization

 

 インターポールは正式名称、 国際刑事警察機構International Criminal Police Organizationという国際的な刑事警察機関にあたり、その頭字語からICPOと呼ばれることもある。といっても彼らは世界中を飛び回って凶悪犯を追いかける捜査組織、法執行機関ではない。彼らは国家や地域の間に立って情報交換などを調整を行なう政府間組織なのだ。1923年に前身の国際刑事警察委員会が設立されて以来、現在では195カ国(地域を含む)が加盟している。

 

 彼らの主な役目は国際的な警察協力の促進だ。加盟国のそれぞれにはINTERPOL National Central Bureau (NCB)が配置され、連絡役となって自国の警察とインターポールを繋いでいる。NCBは24時間365日役割を果たし、どんなときでも情報の交換を行なうことができる。重大な犯罪情報は迅速に共有され、対策することが可能だ。

 

 また、インタポールの特徴の1つとして政治的中立であることが挙げられる。これによって国同士に外交関係がない場合、あるいは敵対関係にあったとしても仲介を行ない、警察組織同士の協力を促している。インターポールの活動も各国の現行法の範囲内で実施されているため、相手国の主権を侵すことはない。

 

 そして国際犯罪を防止するためにも、インターポールは広く犯罪情報収集し、分析を行なっている。どのような手口で犯罪が行なわれているのか、どのような場所が狙われるのか、どのような犯罪が増加しているのか――分析から得た情報を加盟国に共有することで、国際的な犯罪の防止と対策を推進している。

 

 インターポールは情報の分析や共有によって各国警察をサポートし、警察もインターポールの情報を得ることで的確な捜査が可能になる。役割は違えど同じ目的のために、インターポールは警察の捜査を支え続けている。

 

Photo by Josh Denmark
U.S. Immigration and Customs Enforcement 

 

NOTICES -手配-

 

 ニュースで時折聞く国際指名手配――先日、暴力行為等処罰法違反などで逮捕状が発行されたガーシーこと東谷義和容疑者にも、この国際指名手配がなされている。

 これはNOTICESノーティスと呼ばれ、加盟国の警察がインターポールに要請することで手配される。2016年に公開され、人気を博した映画『シン・ゴジラ』の劇中、キーパーソンについての会話セリフの中で「レッド・ノーティス」という単語が出ていたのを覚えている方はいるだろうか。これはNOTICESの一種にあたり、引き渡しまたは同等の法的措置を目的として、被手配者の所在の特定及び身柄の拘束を求める手配を示す。レッドノーティスは犯罪人の手配だが、他にもNOTICESは行方不明者や情報に対しても行なわれる。

 NOTICESの種類は以下の通りだ。

 

  • Red Notice:引き渡しまたは同等の法的措置を目的として、被手配者の所在の特定及び身柄の拘束を求めるもの
  • Yellow Notice:行方不明者(主に未成年)の所在の特定または自己の身元を特定することができない者の身元特定のため、情報を求めるもの
  • Blue Notice:事件に関係のある人物の人定、その所在地または行動に関する情報を収集するもの
  • Black Notice:身元不明の死体に関する情報を求めるもの
  • Green Notice:罪を犯した者で、その犯罪を他国で繰り返すおそれのある者に関する警告及び情報を提供するもの
  • Orange Notice:公共の安全に対し、深刻かつ切迫した脅威となる行事、人物、事物又は手口に関する警告を行なうもの
  • Purple Notice:犯罪者が使用する手口、物、仕掛けや隠匿方法に関する情報を求める又は提供するもの
  • INTERPOL–United Nations Security Council Special Notice:国際連合安全保障理事会の制裁対象である個人又は団体に対する情報を提供するもの

 

 このほか、盗難された美術品又は文化的価値を有する物品を探し出すこと又は疑わしい状況で発見された物品を特定することを目的とした盗難美術品手配書がある。

 

 日本警察が要請によるRed Noticeの一例が、平成24年9月2日未明に発生した六本木五丁目雑居ビル飲食店内殺人事件で、唯一逃走を続けている主犯格の男、見立真一に対するものだ。なお、前述の東谷義和に対してはBlue Noticeとなっている。

 各国はこれらを通じて外国の警察組織に捜査協力を依頼。また発行された手配書や要請、提供された情報を元に当局は捜査を行なう。

 

インターポール、移民・関税執行局(Immigration and Customs Enforcement)執行・排除活動(Enforcement and Removal)、U.S. Marshalの合同計画によって検挙された様子(Photo by U.S. Immigration and Customs Enforcement)

 

INVESTIGATIONS AND OPERATIONS

 

 前述の通り、インターポールは各国の現行法の範囲内で活動するため、他国で勝手な捜査活動を行なうこと――例えば某怪盗を逮捕するために、捜査を行なうことは基本的にはできない。そのため、インターポールは捜査組織というより各国法執行機関の連絡機関としての役割が強い。

 だが、加盟国の要請がある場合、法執行を支援するチームを派遣することがある。

 

  • Incident Response Teams

 

 甚大災害や重大犯罪によって危機的状況にある加盟国の要請で派遣されるチームであり、状況に応じて2つのIRTが活動する。甚大災害の際は災害被害者の身元確認などを支援するDisaster IRTs、重大犯罪の際は警察に対して特定の専門知識と捜査支援を提供するCrime IRTsが存在する。例えば2019年3月10日、乗客・乗員157名が死亡したエチオピア航空ET302便の墜落事故ではエチオピア当局の要請によって派遣され、DNA鑑定などで身元の特定を支援している。

 

  • Major Event Support Teams

 

 国際サミットやワールドカップなど、国際的イベントは人々やメディアの関心を引くため、テロの標的になる場合がある。そんなイベントおける警備の準備、調整、実施において加盟国を支援するために派遣されるチームがIMEST(INTERPOL Major Event Support Team)だ。2017年11月に開催されたマニラにおけるASEANサミットではフィリピンの要請により派遣され、フィリピン入国管理局とともに入国審査を強化。結果、43件不審な乗客を発見し、5人の逮捕に貢献した。

 

 以上のように各国の要請があれば、相手国内での捜査を行なうことができる。だが、あくまで支援であるため、実際に逮捕・起訴などの法執行を行なうのは現地警察だ。

 

日本警察とインターポール

 

 日本警察は1952年(昭和27年)8月にインターポールの前身である国際刑事警察委員会へ加盟して以来、年次総会に代表団を毎回派遣するとともに、その他の会議にも職員を派遣するなど、インターポールの活動に積極的に関与している。令和4年の分担金支払額は約 615万3,000ユーロ(約7億8,760万円)であり、加盟国中、第2位の財政的な貢献を果たしている。

 連絡役であるNCBは警察庁が指定され、警察庁は日本の盗難車輌、紛失・盗難旅券等に関する情報をインターポールに提供。その一方でインタポールを通じて外国に対して捜査協力を要請している。

 

各国で盗まれた車輌はカー・クローニングという被害に遭う場合もある。カークローニングとは、正規に所有されている車のIDを盗み出し、それを盗難車に装着すること。こうすることで盗難車を正規の車輌として偽装しているのだ。写真は2009年、複数機関の合同捜査によって押収されたBMW(Photo by FBI)​​​

 

 仮に日本国内で犯罪を犯した被疑者が国外に逃亡した場合、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認を行ない、犯罪人引渡条約等に基づき被疑者の引き渡しを受ける、あるいは相手国で強制退去処分になった被疑者を公海上で引き取るなど、確実な検挙に務めている。このほか、事案に応じ、被疑者が日本国内で行なった犯罪に関する資料を提供することで、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促している。適用された被疑者は相手国における起訴、裁判によって裁かれることになる。
 

国外逃亡被疑者に対する主要な措置
※平成21年度 警察白書を参考

 

参考文献

 

 

TEXT:珈琲

 

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