2024/01/08
【実銃】AR15とMP5の良いとこ取りのカービン「B&T SPC9 SD G」の細部をチェック!【中編】
B&T
SPC9 SD G
AR15とMP5が持つそれぞれの利点をうまくミックスしたハイブリッドデザインのセミオートマチックピストルキャリバーカービン、それがB&T SPC9だ。アメリカ軍に採用され、成功しつつあるAPC9とは異なるマーケットに向けて2020年にリリースされた。そのサプレッサー仕様で、グロックマガジンを使用するSPC9 SD Gをご紹介したい。
セミオートマチックカービン
B&T SPC9 SD G
- 口径 9×19mm
- 全長 692mm/775mm(629mm/709mm)
- 全幅 50mm
- 重量 33連空マガジン+Aimpoint Micro T1装着時2,950g(2,700g)
- バレル長 115mm(230mm)
- マガジン装弾数 10, 15, 17, 19, 24, 31, 33発 グロックマガジンを使用
(カッコ内はSD仕様ではないスタンダードのSPC9 Gのスペック)
APCシリーズはAPC9の9mm口径を皮切りに5.56mm口径、300BLK、そして7.62×51mmへと同様のプラットフォームで、サブマシンガンからアサルトライフルへとラインナップを広げていった。
レシーバーをAR15系に近づけて操作感をそのまま継承している。但し、AR15をコピーしただけでなく左右どちらからでもアクセスできるアンビで設計されている。SPC9も基本的に同じだ。
セイフティレバーはAR15系の90°作動から、APCと同様にMP5に近いデザインを採用している。但し、SPC9はセミオートマチックカービンで、フルオートマチック仕様は開発されていない。サブマシンガンとしてはAPC9を展開し、SPC9はフルオート機能を求めない警察などにその販売対象を絞った戦略なのだ。
したがってこれはセレクターではなく、セイフティレバーだ。
面白いのは、AR15系と似たチャージングハンドルを装備すると共に、MP5と同じ位置にもコッキングハンドルがあることだ。AR15系のチャージングハンドルは構えた姿勢での操作がやりにくく、MP5と同位置にある方が遙かに操作しやすい。こちらのコッキングハンドルは脱着式で左右切り替えができる。さらにSPC9のコッキングハンドルはフォールディングタイプで、必要な時だけ起こして使用する。
SPC9 Gの魅力のひとつは、グロック、またはSIG P320のマガジンが使用できる設計になっている仕様があることだ。B&Tではオーダー時にロアレシーバーを、従来のB&Tマガジン(APC9)仕様、あるいはアメリカ軍のサイドアームでもあるSIG 320(M17/M19)マガジン仕様、それとグロックマガジン仕様を選択できる。
今回のグロック用のモデルではグロックの33連マガジンはもちろん、サブコンパクトカテゴリーであるG26用の一番短いマガジンも装填できるのだ。もっともこのマガジン選択肢は、APC9でも採用されていたもので、SPC9で始まったわけではない。
今回のモデルはSD仕様なので装備されていないが、サウンドサプレッサー標準装備ではないスタンダードモデルの場合、マズル部にはMP5同様の3ラグが設けられており、MP5用のマズルアタッチメント(サウンドサプレッサーやフラッシュハイダー等)がそのまま装着できるようになっている。
これもAPC9と同じで、従来MP5を採用していた警察などが、今までのアクセサリーをそのまま使用継続できるというコンセプトの継承だ。
B&Tはかなり以前からダットサイトが標準装備で、SPC9にはビジネスパートナーであるエイムポイントのマイクロT-1が装着されている。標準装備ということで、エマージェンシーサイトであるフリップアップ式サイトを起こしてみると、ピタリとドットに合う位置になっていた。
外観からは判らないが、Hydraulic Buffer(ハイドラウリックバッファ:油圧バッファ)が組み込まれていて、これでリコイルを制御している。以前に取材したB&TのコンパクトサブマシンガンMP9も、油圧ではないがバッファが内蔵されていて、そのリコイルはマイルドに抑えられ、フルオートでの集弾性はみごとだった。そういった経験を踏んでの油圧バッファの採用はどんなフィーリングなのか興味津々だ。
SPC9 SD Gはその名の通りMP5SD同様に消音効果を最大限に発揮するため切り詰められたバレルを完全に覆う専用の大型のサプレッサーが取り付けられている。もちろん取り外しはできるが、取り外して撃つことを考慮していない。
ノーマルのバレル長は230mmだがSDは115mmだ。バレルが短いので有効射程距離は劣るだろうが、その消音効果はかなり高いだろう。ただし、9mmパラベラムは音速を超えるため、発射音は大きい。実際にその効果を得るにはサブソニック弾の使用が必要だ。
Photo&Text:Tomonari SAKURAI
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年11月号に掲載されたものです
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