実銃

2023/10/06

【実銃】クラシックなM1Aから生み出されたタクティカルライフル「SOCOM16 CQB」【Part1】

 

Springfield Armory 
M1A
SOCOM16 CQB

 

クラシックなM1Aのデザインから誕生したコンパクトタクティカルライフル

 

 

 1950年代、西側各国が採用した第一世代アサルトライフルの中で、米国のM14は古いライフルのデザインを引きずっていた。しかし、それは同時に“鋭い切れ味”の優れたデザインでもあった。それゆえ、同時代のG3やFALが過去の遺物になってしなった今でも、M14(M1A)は進化を続けている。

 

 


 

アイコニックなバトルライフル

 
 米軍に正規採用された小火器は、現役を解かれた後も、その多くが自国民に親しまれ続けている。退役軍人にとっては軍隊時代を共に過ごした相棒であり、時を経てもそれにノスタルジーを感じずにはいられないからだ。

 

2004年に登場したM1AのコンパクトタクティカルライフルSOCOM16を発展させ、2016年に登場したのがSOCOM16 CQB(Close-Quarters Battle:クロースクォーターズバトル)だ。従来の伝統的スタイルを持つブラックコンポジットストックをやめ、マガジンメーカーのProMag(プロマグ)が製造するArchangel(アークエンジェル)AACQSクロースクォーターストックにSFAのロゴを入れて装着した。
今回のテスト機はこれにVOLTEX(ヴォルテックス)のドットサイトVenom(ヴェノム)を標準装備させたSFAが供給するメーカーバリエーションで、targetacquisition(ターゲットアクイジション/目標補足)能力を飛躍的に向上させ、タクティカルライフルとしての完成度を高めたモデルだ


 ハンドガンは軍用と並行してほぼ同じ仕様のコマーシャルモデルが販売されるし、ライフルもフルオート機能を除いただけでほぼ同じ機能の製品が市販化されるので、軍を離れたあとも軍用火器に近い製品を手にできる。

 

 またその銃のパテントが消滅すると他のメーカーが軍用モデルのクローン製品を市販する場合もある。M16、M4に対し、おびただしい数のメーカーが供給するAR15やM4のクローン、M1911A1に対するガバメントモデル、あるいはそのクローンである様々な1911などがその例だ。

 

バレルの短縮化に伴い専用設計されたソーコムの小型マズルブレイク。スリット状の穴が加工され、通常型フラッシュハイダーよりも短い。バレルの短縮化、軽量化により体感リコイルは増した分、より効果的に反動抑制効果が得られるよう、斜め上の範囲にのみ小孔が開けられている

 

 軍用として採用されていた期間が長ければ長いほど、多くの世代がそれを使用するので、よりアイコニック(象徴的)な銃として、その名が歴史に刻まれる。いずれベレッタのM9もそんな存在になるだろうし、ずっと先にはSIG SAUERのM17もそうなる日が来るだろう。


 その中でも、1957年から68年までと採用期間が短かったものの、今でも安定した人気と高い評価を得ているモデルがある。米軍が戦後第一世代のライフルとして採用したM14だ。

 

真っ暗闇でも発光し狙える32mm幅のXSトリチウムフロントサイト

 

 M16の採用に伴ってモスボールとなったM14だが、21世紀になると長い眠りから目覚めさせられ、7.62mmNATO弾を撃つ軍用銃としてモダナイズド化されて戦場に投入された。このような例はかつてほとんどなかったと思う。強いていえば、20世紀初頭、米比戦争後のフィリピンでモロ族との戦闘に引っ張り出された.45ロングコルトのSAAのようだ。

 

22インチから16.25インチにバレルを短縮させた事で大変取り回しが良くなり、maneuverability(マニューバビリティ:機動性)が向上。ライフリングは6条1回転11インチの右回り。今回のテスト弾での22インチとの銃口初速差は約7%程度で、大きくパワーを失っているわけではなく、5.56mmクラスよりも遥かに強力な銃口エネルギーを保持している


 M14,M1Aの場合、『コール オブ デューティ』のようなビデオゲームにも登場し、若い世代にも知られた存在となった。古い世代の銃だが、M14系の存在感はまだまだ大きい。


 このM14人気の立役者がSpringfield Armory, Inc.(スプリングフィールドアーモリー:SFA)だ。彼らが1974年から販売し続けるM1Aシリーズは、M14の市販型であるM1Aのクローンであり、ロングセラーモデルとなっている。

 

モダンなタクティカルモデルには、素早くサイティングが可能な光学サイトの組み合わせが一般化、そこでソーコム16シリーズで追加されたのが、このフォワードスカウトスタイルピカティニーレイルだ。バレル基部に位置し通常のスコープ取り付け位置よりもかなり前方にマウントする事が可能だ。オペレーティングロッド側面にはSOCOM16 CQBの刻印が刻まれている


 第二次世界大戦後に各国が採用した、NATO軍統一カートリッジ7.62mmNATO弾を撃つバトルライフルは、その後の小火器開発に多大な影響を与える先進的なデザインを多く持っていた。その中でM14は大戦中のM1ガーランドの延長線上にあり、斬新さに欠ける一面もあったが、同時にM1を堅実に発展させたデザインでもあった。


 M1ガーランドから続く伝統的なライフルデザインは、シューターにとって実に扱いやすい。SFAはパラミリタリー競技をスポンサードしており、オハイオ州キャンプペリーでCMP(シビリアンマークスマンシッププログラム)の支援のもとM1Aマッチを開催。結果的に新規愛好家を獲得し、軍隊経験とは関係なしに更に多くの愛好家を築く事にも成功している。

 

フォアエンドの3時、6時、9時方向にM-LOKスロットを備え、アクセサリーを増設可能。拡張性はタクティカルライフルには欠かせない要素だ


 SFAはM1Aシリーズのバリエーション開発も進めてきた。拡張性の高いAR系には遠く及ばないが、原型から大きく離れない形でのモダナイズド化がM1Aのような伝統的なライフルには相応しい。外観をほぼそのままで高精度化したナショナルマッチ、カスタムフィーチャーを追加したローデッド(口径6.5クリードモアを含む)、高精度カスタムのハイエンドであるスーパーマッチなどが登場したが、どれもM14の基本デザインを維持している。

 

このデザインは1980年代にJeff Cooper(ジェフ・クーパー)が提唱したスカウトライフルのコンセプトに端を発する。携行しやすい小型軽量のライフルに、低倍率のロングアイリリーフスコープ等をアクションより前方に配置する事で、周辺視野を広げると同時にアクション上からのリロードの妨げにならないというものだ。
マッチする低倍率ズームスコープが手元になかったので今回はノーベルアームズのSURE HIT T2ソーラーを装着(ロングアイリリーフスコープは数が少ない)した。対物レンズ径21mmで3MOAドットを採用、CR2032電池を使うが、上部のソーラーパネルにより電池が切れても太陽光だけでもドットを発光可能だ。電池併用時には光量と電池残量に応じてバッテリーとソーラーのモードが自動的に切り替わるデュアルパワーソースが特徴だ


 しかし、その中でも異色と呼べる存在が、2004年に登場したSOCOM(ソーコム)16シリーズだ。16.25インチバレルに新規設計のマズルブレイク、スカウトスタイルのピカティニーレイルの追加など、古くて新しいモダンタクティカルライフルの新境地を切り開いた。
 SOCOMの名前の通り、この開発背景には米軍特殊部隊などが運用しているM14発展型の存在があり、単に時流に乗った改造ではなく、現実に即した改良モデルとなっている。

 

M1Aはマガジンを装着した状態でストリッパークリップを用いてレシーバー上部から装填する機能があり、固定用のクリップガイドが備わっている。CQBモデルのこのバリエーションではそこにドットサイトのマウントを追加している

 

 今月はラスベガスのE. Morohoshiさんのご協力により、そのSOCOM16に最新のアップグレードを加えたSOCOM16 CQBモデルをフィーチャーしたい。SFAとM1A SFAは1911やXD/XDMなどハンドガンの成功メーカーの印象が強く、長物系の印象はやや希薄だが、実際にはG3やFALのクローンなどのライフルも以前から販売してきた。

 

ドットサイトを標準装備させた事でかなりモダンなタクティカルライフルのイメージに切り替わったSOCOM16 CQB。レシーバー右側面にはボルトストップがあり、マガジンが空になるとボルトを後退させた状態で保持、レバーを下げるとボルトをリリースさせる事ができる。ただし、ボルトハンドルを若干引いてボルトをリリースする方がやりやすい

 

 意外にもAR系ライフルは2016年のSAINT(セイント)シリーズからと遅れ気味の発進だった。同社はM14スポーターの製造と共にスタートした歴史を持つ。

 そもそもこのブランド名は、米国初代大統領ジョージ・ワシントンの命令により1777年に開設され、1794年より武器の製造を行なってきたマサチューセッツ州スプリングフィールドの国営造兵廠スプリングフィールドアーモリーから継承したものだった。

 

ヴェノムは左側面のプッシュボタンで輝度調整(10段階)を行なう。自動輝度調整のオートモードにも切替可能


 この造兵廠は1968年に閉鎖されるまでM14を製造しており、その関連性を強く連想させるが、あくまでブランド名として使用しているだけでSFAは一般的な民営会社だ。
 M14の市販ライフル計画は現在のSFAのオーナーが手を付けたものではなく、Elmer C. Ballance(エルマー・C.バランス)が造兵廠の閉鎖後、スプリングフィールドアーモリーのトレードマークを登録し、テキサス州サンアントニオでLHマニュファクチャリング社を設立した事に始まる(同社はまもなくして同州ディバインに移転)。

 

回転式ボルトのガス作動方式を採用しており、従来型M1Aと基本メカに変更はない。エジェクションポート直上にドットサイトが固定され、エジェクションの妨げにならないか心配になるが、そこはメーカーもちゃんと考えている。これについては実射の項で解説したい


 製品化したM1Aは好評だったが、エルマーはビジネスを1974年にRobert Reese(ロバート・リース)に売却したことで、民間企業SFAが誕生した。SFAはその後にイリノイ州ジェネシオに拠点を移し、ロバート・リースの息子であるDennis Reese(デニス・リース)が経営を引き継いで現在に至っている。

 

 当初M1Aの生産にはGIサープラスパーツを一部組み合わせていたが、その後完全な生産体制が確立し、フルプロダクションへ移行した。
 

微調整可能な3.4mm径アパチャーを持つゴーストリングサイトでアイアンサイトでも従来と変わらない本格的な射撃能力を備えている。原型でありフルオート切り替え機能を持つM14ではこのサイトの下のあたりにセレクタースイッチが備わっていた

 

ヴェノムは横長のスクリーンで左右の視界が広く、小さめな3MOAドットでAR系やショットガンなど長物系にメーカーは勧めている。アイアンサイトはヴェノムに遮られ使用できないが、固定ネジを緩めればヴェノムは外せる。その際、マウントベース部まで外す必要はない。前方のレイルにドットサイトを備え付ける事もできるが、それでは従来型も同じで目新しさがないとSFAは考えたのだろう。あえてレシーバー固定方式でヴェノムを装着した。スクリーン位置を手前に配置した事でドットサイトがカバーできる視界領域も広がり、狙いやすさを向上させている

 

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TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局 

 

 

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