2023/10/06
【実銃】クラシックなM1Aから生み出されたタクティカルライフル「SOCOM16 CQB」【Part1】
Springfield Armory
M1A SOCOM16 CQB
クラシックなM1Aのデザインから誕生したコンパクトタクティカルライフル
1950年代、西側各国が採用した第一世代アサルトライフルの中で、米国のM14は古いライフルのデザインを引きずっていた。しかし、それは同時に“鋭い切れ味”の優れたデザインでもあった。それゆえ、同時代のG3やFALが過去の遺物になってしなった今でも、M14(M1A)は進化を続けている。
アイコニックなバトルライフル
米軍に正規採用された小火器は、現役を解かれた後も、その多くが自国民に親しまれ続けている。退役軍人にとっては軍隊時代を共に過ごした相棒であり、時を経てもそれにノスタルジーを感じずにはいられないからだ。
ハンドガンは軍用と並行してほぼ同じ仕様のコマーシャルモデルが販売されるし、ライフルもフルオート機能を除いただけでほぼ同じ機能の製品が市販化されるので、軍を離れたあとも軍用火器に近い製品を手にできる。
またその銃のパテントが消滅すると他のメーカーが軍用モデルのクローン製品を市販する場合もある。M16、M4に対し、おびただしい数のメーカーが供給するAR15やM4のクローン、M1911A1に対するガバメントモデル、あるいはそのクローンである様々な1911などがその例だ。
軍用として採用されていた期間が長ければ長いほど、多くの世代がそれを使用するので、よりアイコニック(象徴的)な銃として、その名が歴史に刻まれる。いずれベレッタのM9もそんな存在になるだろうし、ずっと先にはSIG SAUERのM17もそうなる日が来るだろう。
その中でも、1957年から68年までと採用期間が短かったものの、今でも安定した人気と高い評価を得ているモデルがある。米軍が戦後第一世代のライフルとして採用したM14だ。
M16の採用に伴ってモスボールとなったM14だが、21世紀になると長い眠りから目覚めさせられ、7.62mmNATO弾を撃つ軍用銃としてモダナイズド化されて戦場に投入された。このような例はかつてほとんどなかったと思う。強いていえば、20世紀初頭、米比戦争後のフィリピンでモロ族との戦闘に引っ張り出された.45ロングコルトのSAAのようだ。
M14,M1Aの場合、『コール オブ デューティ』のようなビデオゲームにも登場し、若い世代にも知られた存在となった。古い世代の銃だが、M14系の存在感はまだまだ大きい。
このM14人気の立役者がSpringfield Armory, Inc.(スプリングフィールドアーモリー:SFA)だ。彼らが1974年から販売し続けるM1Aシリーズは、M14の市販型であるM1Aのクローンであり、ロングセラーモデルとなっている。
第二次世界大戦後に各国が採用した、NATO軍統一カートリッジ7.62mmNATO弾を撃つバトルライフルは、その後の小火器開発に多大な影響を与える先進的なデザインを多く持っていた。その中でM14は大戦中のM1ガーランドの延長線上にあり、斬新さに欠ける一面もあったが、同時にM1を堅実に発展させたデザインでもあった。
M1ガーランドから続く伝統的なライフルデザインは、シューターにとって実に扱いやすい。SFAはパラミリタリー競技をスポンサードしており、オハイオ州キャンプペリーでCMP(シビリアンマークスマンシッププログラム)の支援のもとM1Aマッチを開催。結果的に新規愛好家を獲得し、軍隊経験とは関係なしに更に多くの愛好家を築く事にも成功している。
SFAはM1Aシリーズのバリエーション開発も進めてきた。拡張性の高いAR系には遠く及ばないが、原型から大きく離れない形でのモダナイズド化がM1Aのような伝統的なライフルには相応しい。外観をほぼそのままで高精度化したナショナルマッチ、カスタムフィーチャーを追加したローデッド(口径6.5クリードモアを含む)、高精度カスタムのハイエンドであるスーパーマッチなどが登場したが、どれもM14の基本デザインを維持している。
しかし、その中でも異色と呼べる存在が、2004年に登場したSOCOM(ソーコム)16シリーズだ。16.25インチバレルに新規設計のマズルブレイク、スカウトスタイルのピカティニーレイルの追加など、古くて新しいモダンタクティカルライフルの新境地を切り開いた。
SOCOMの名前の通り、この開発背景には米軍特殊部隊などが運用しているM14発展型の存在があり、単に時流に乗った改造ではなく、現実に即した改良モデルとなっている。
今月はラスベガスのE. Morohoshiさんのご協力により、そのSOCOM16に最新のアップグレードを加えたSOCOM16 CQBモデルをフィーチャーしたい。SFAとM1A SFAは1911やXD/XDMなどハンドガンの成功メーカーの印象が強く、長物系の印象はやや希薄だが、実際にはG3やFALのクローンなどのライフルも以前から販売してきた。
意外にもAR系ライフルは2016年のSAINT(セイント)シリーズからと遅れ気味の発進だった。同社はM14スポーターの製造と共にスタートした歴史を持つ。
そもそもこのブランド名は、米国初代大統領ジョージ・ワシントンの命令により1777年に開設され、1794年より武器の製造を行なってきたマサチューセッツ州スプリングフィールドの国営造兵廠スプリングフィールドアーモリーから継承したものだった。
この造兵廠は1968年に閉鎖されるまでM14を製造しており、その関連性を強く連想させるが、あくまでブランド名として使用しているだけでSFAは一般的な民営会社だ。
M14の市販ライフル計画は現在のSFAのオーナーが手を付けたものではなく、Elmer C. Ballance(エルマー・C.バランス)が造兵廠の閉鎖後、スプリングフィールドアーモリーのトレードマークを登録し、テキサス州サンアントニオでLHマニュファクチャリング社を設立した事に始まる(同社はまもなくして同州ディバインに移転)。
製品化したM1Aは好評だったが、エルマーはビジネスを1974年にRobert Reese(ロバート・リース)に売却したことで、民間企業SFAが誕生した。SFAはその後にイリノイ州ジェネシオに拠点を移し、ロバート・リースの息子であるDennis Reese(デニス・リース)が経営を引き継いで現在に至っている。
当初M1Aの生産にはGIサープラスパーツを一部組み合わせていたが、その後完全な生産体制が確立し、フルプロダクションへ移行した。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
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