実銃

2023/10/13

【実銃】純日本製のリボルバー「ミロクリボルバー」と日本警察拳銃を考察する【Part1】

 

MIROKU
 LIBERTY CHIEF & SPECIAL POLICE 

 

 

 新中央工業のニューナンブが日本警察に納入され始めたのが1961年だ。一方、ミロクが.38口径のリボルバーを北米に向けて輸出開始したのは1962年となっている。この時間軸から、ミロクのリボルバー開発は日本警察向けであったのではないかと推測が成り立つ。明確な証拠はないが、大いに匂うのだ。

 

 ミロクのリボルバー製造供給は1968年で終わったが、この約7年の間に何度も改良を重ねており、もしその後もミロクがリボルバーの製造を継続していたら、いずれ優れた製品を生み出すようになった可能性がある。北米に残された何機種ものミロクリボルバーを見ていると、その佇まいからそんな思いが浮かんでくるのだ。

 

 

 

日本拳銃ミロク


 皆さんは、2021年3月に発売された別冊「日本警察拳銃」はもうご覧になっただろうか? 松尾副編が睡眠時間を思いきり削って仕上げた渾身の1冊だ。この別冊用に、自分は一枚、ミロクリボルバーの集合写真を撮り下ろした。

 


 現在、手元には4挺のミロクを所持している。リバティチーフの2インチと4インチ、そしてスペシャルポリスの2.5インチと4インチだ。それらを並べて撮ったワケだ。

 日本警察拳銃の別冊になぜミロクの銃をと、皆さんは思われるだろう。実は別冊では、「もしかしたらニューナンブではなく、ミロクが警察官のスタンダードリボルバーになっていた可能性があるのでは」との推察を展開しているのだ。

 


 ご存じのように、日本警察は1961年に公用拳銃として新中央工業のニューナンブモデル60を採用した。その開発へ向けて1950年代に新中央工業が動き出した時、実はミロク工作所も名乗りを上げていたのではないかという大胆な仮説である。


 当時、高知県の株式会社ミロク工作所は捕鯨砲メーカーとして高い技術を誇っていた。1951(昭和26)年に猟銃の製造が解禁されると散弾銃の製造を開始。同社の創業者である弥勒武吉は、銃を製造する鍛冶師の息子として生まれ、大正7年から10年頃まで満州向けのピストルを製造、その後も猟銃の修理や、日本精機製作所として戦争末期には小銃の製造もおこなった実績がある。

 

 

 そんな同社が川口屋林銃砲火薬店とともに新たな猟銃メーカーとして技術の積み重ねを進めていた時期に、警察ピストルの国産化の話を聞きつけ、これに挑戦したのではないだろうかと。警察に試作を提示し、惜しくも選から漏れた代わりに、海外へ目を向けたのではなかろうかと。

 

 同社が2007(平成19)年に発行した“株式会社ミロクのあゆみ・鉄砲造り百年”に寄れば、ミロク製のピストルは1962年にアメリカで販売が開始されている。時期的に、コレは非常に匂う。明らかにダブっている。トライアルに参加した気配が濃厚だ。

 第一、ミロクが作ったピストルはまさに日本警察向けというべき仕様だったし……といった内容で話を進めているのである。十分あり得る話だ。

 

 

 自分も旧Gun誌時代のリポートでソレっぽいことを少し書いた。そしてもしもミロクが新中央工業をビートしていれば、日本警察の拳銃史は大きく異なるものとなっていただろう。そう考えれば何やら夢も膨らむし、手元のミロク銃に対する見方もまったく違ってくる。


 実に興味津々のお話だ。おかげで久しぶりにじっくりミロクたちを眺めたくなり、この記事になった次第である。

 

続きはこちら
 

TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局 

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年6月号に掲載されたものです

 


 

関連書籍

「日本警察拳銃」

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 日本の警視庁、警察庁は警察官が装備する銃に関してはほとんど公にしていない。そこで、本書では目撃情報をもとに日本警察が使用するすべての拳銃、および機関拳銃について、その歴史、機能、導入経緯等について多角的視点から分析。日本警察がどのような経緯でどのような拳銃を装備するようになったのか、戦前の状況を含め詳しく分析し、 米国供与品から国産化、輸入拳銃装備に移行する過程を追っていく。さらに、警察官等拳銃使用及び取扱い規範について、その具体的内容を詳しく解説している。過去から現在にいたる、日本の警察拳銃を完全網羅した1冊だ。

 

 


 

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