2023/07/28
【実銃】さすらいのウエスタン「シマロン ピストレロ.45」との出会い【前編】
CIMARRON
PISTOLERO .45LCTos
オールドウエストガンには何故か惹かれるものがある。とりわけシングルアクションリボルバーはその筆頭だ。安全性を最大限に高めた現代のシングルアクションも機能的で素晴らしいが、4ポジションのクラシックハンマーはもっと魅力的だ。
テキサスのシマロンは、低価格ながら押さえるべき部分はしっかり押さえたSAAレプリカ。147年前はSAAが最先端のファイティングリボルバーだった。この銃を手に、あの当時、これを手に戦った男達に想いを馳せてみたい。
~ さすらいのウエスタン ~
月刊ガンプロフェッショナルズ2021年1月号の『どマイナーワールド』のコーナーで、RUGERのラングラー(.22口径のSAA)をネタに使った。それ以来、気持ちがSAAに傾き、結構なウエスタン脳になってしまっている自分だ。
基本的には、自分はウエスタン音痴である。SAAのような近代銃よりはモデル29のようなシティ派の現代DAリボルバーこそが自分の原点だと、意識の中では感じている。イーストウッドでいえば『荒野の用心棒』ではなく、あくまでも『ダーティハリー』なのだ。しかしその一方で、物心ついた頃には父親のマテル・ファンナーを握って遊んでいた過去も同時に併せ持つ。
父親は自分が小学二年の時に病死し、結果的にそのマテル・ファンナーが形見となった。そのせいで、なのかは分からないが、無意識下の自分はウエスタンに何かしら引っ掛かっている。どうにもムズい状況ではある。無論、同じ鉄砲なのだし、嫌いなワケもない。ただ、自分のどの辺がどう噛み合うのか、向き合い方の模索みたいのがこの歳になっても続いている状態なのだ。
そんなムズい気持ちを胸に秘めつつ、郵便局へ手紙を出しに行ったついでに自宅近くのスポーツ用品店を覗いたら、あったのだ。とても頃合いなウエスタンが。
自分としては、新品中心のこの手のお店は敬遠気味だ。中古銃の出物を探すワクワクがないからだ。まあそれでも、たまにはチェックをせねばと、ここんところのコロナ禍&大統領選の影響でガラガラ状態の弾の棚に悲壮感と脱力感とそろそろ将来に対する恐怖感までも覚えながらショーケースを見渡したらば、シングルアクションのリボルバー群の中に、今や定番のRUGERやら安物Heritageに混じって、とっても綺麗なCimarron(シマロン)を見つけたのである。それも4挺一気に。
「あらら、珍しいじゃん」
自分の経験では、あんましシマロンって見掛けない。単なる巡り会わせの問題か。いや、見掛けなかったのではなく、たぶん気に留めていなかったのだろう。たまたまウエスタン脳になっていたせいで目に付いたに違いない。
4挺の内訳は、.22LRと.357口径が一挺ずつと.45口径が二挺。.45口径の一挺はフレームが銀色の彫刻入りで、残りの3挺はグリップフレームが真鍮製の黒金ツートン仕様だ。バレル長は全部シビリアンの長さ、つまり4-3/4インチ。
自分のチョイスは最初から決まっていた。口径は絶対に.45COLT。さすがに.22LRとか.357マグナムはこの際後回しだろう。そして、彫刻入りモデルは高級感ではあるが、貧乏気質の自分の趣味とはやや違う。従って、.45口径の真鍮ツートン・モデルに決定。
コレはナイスだ。手元にUbertiのシェリフス・モデルを所持する関係上、次回SAAレプリカを買うならフルサイズ、それも真鍮グリップフレームのツートンと心に決めていた。だってソレって、マカロニ・ウエスタンのスタイルでしょ。
ウエスタン音痴の自分ではあるが、あのマカロニのギラギラした世界観には大いに惹かれるものがある。父親の遺品の中にはマカロニ・ウエスタンのサントラLPなども確か混じっていた。
で、さっそく店員を呼んで見せてもらったら、相当に綺麗な仕上げに加えて、一番感動したのがハンマーのコックの滑らかさだ。もうダメ。一発でやられてしまった…のではあるが、中古の一品ものではなく現行品ということで勢いでは買わず、一晩置いて頭を冷やす冷静さは失ってなかった。その夜は価格のチェックも兼ねて、シマロンについて少々お勉強をしたのであった。
Text&Photo:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号 P.156-160をもとに再編集したものです。
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