ミリタリー

2023/11/24

戦車を撮影するテクニックを総火演で解説!Photo Shoot Military【アームズフォトグラフ】

 

 「アームズフォトグラフ」は筆者が撮影した写真についてロケーションや設定、レタッチなど写真全般について色々語るコーナーだ。できる限り詳しく語っていこうと思っているので、ぜひとも写真を撮る際の参考にしていただけたら幸いだ。

 

 

 今回の写真は「富士総合火力演習(総火演)」。
 現在では基本的に動画での一般公開となったこの一大実弾演習だが、「月刊アームズマガジン」記事企画の一環として2023年度の総火演を取材することができた。

 

289mm / F10.0 / 1/2000 / ISO 2000
戦車が発砲煙を纏い、土を巻き上げながら旋回している姿が個人的に射撃をする姿より好きだったりする。榴弾砲や機動戦闘車で射撃自体は味わえても、エンジンを唸らせ1,200馬力で40tを超える車体を全力で旋回させるような動作は戦車じゃなきゃ味わえない

 

 ここでは2023年の総火演で筆者が撮影した写真をご紹介しつつ、戦車写真撮影についての解説も織り交ぜていく。ぜひ参考にしてもらえたら幸いだ。

 

(戦車を撮るコツ、という需要があるか分からない解説だが生暖かい目で見てもらいたい)

 

▼合わせて読みたい!▼

 

 

戦車の発砲炎(マズルフラッシュ)を撮りたい!

 

260mm / F10.0 / 1/2000 / ISO 2000
90式戦車が車列を組みながら射撃するシーンだ。運よく先頭車輌が射撃している瞬間を捉えることができた。撮影時、筆者の好みだともう少し望遠で車列を圧縮して撮るか悩んだのだが引きで撮って正解だった。
発砲炎で車体がオレンジに照らされているのが美しい

 

 というわけで、総火演のような戦車が活躍するイベントで発砲炎(マズルフラッシュ)を撮るにはどうすれば良いのだろうか。一番手っ取り早く元も子もないことを言うのであれば120/60fpsで動画を撮って切り抜く、もしくは連射性能に秀でたカメラを購入することである。

 

 戦車の発砲炎は燃えて消えるまでおよそ0.1秒と言われている。なので理論だけで言えば秒10連射できるカメラであればほぼ確実に撮れるのだ。しかし理論だけでは撮れないのが写真の面白いところであり、難しいところだ。

 

動画から切り出した、74式が射撃する瞬間。logで撮っても普通のカメラであれば写真より編集範囲がかなり狭い。解像度も動画の基準となりつつある4Kですら829万画素しかなくレタッチが少し大変だ

 

260mm / F10.0 / 1/200 / ISO 125
対戦車ヘリのAH-1コブラとOH-1の編隊。
ヘリコプター撮影ではローターのブレで動きを表現したいので1/200で撮影、戦車撮影の1/10のシャッタースピードだ

 

260mm / F10.0 / 1/200 / ISO 125
新装備のティルトローター輸送機、V-22オスプレイの着陸シーン。こちらも1/200で撮影し、ローターがブレるようにしている


 総火演では射撃直前に場内無線で「撃て!」という無線が聞こえる。これを合図に連射すれば撮れるのだが、実際問題これもなかなか大変だ。

 連射の速いカメラで連射し続ければ撮れるのでは? と思う方もいるが、バッファーと呼ばれるカメラでSDカードに書き込む前に一時的に保存する容量がある。それが満杯になってしまうと写真自体が撮れなくなる。そして撮れなくなった瞬間に「ドンッ!」と撃たれることが何度あったことか。

 

100mm / F9.0 / 1/1600 / ISO 1000
こちらは74式が射撃する瞬間を撮り逃した写真。無線交信で射撃命令は聞こえるので射撃の瞬間を予想することはできるが、後段演習では特にどの車輌が撃つのかわからなくなる場合もあり、ある程度狙って撮らないとバッファー切れや、撃たない車輌を連射で撮ってチャンスを逃してしまうことも

 

220mm / F9.0 / 1/250 / ISO 1000
SUBARU製造の陸上自衛隊最新鋭多用途ヘリコプターUH-2。機内から偵察オートを下ろし、迅速に離脱する瞬間を撮影した。いい感じに背景も流れてくれた

 

220mm / F9.0 / 1/250 / ISO 1000
92式地雷原処理車。地雷原処理のための爆索を投射するロケットは初速が遅いので撮影は簡単だ。何なら音が聞こえてからでも捉えられる。ただ、物が物だけに遠くでの射撃が多く、迷彩が施された車輌を見つけるのが少し大変だ


 そんなこんなで苦労と運が合わさって格好よく撮れた時の高揚感は凄まじい。と、これ以上脱線しても仕方ないので話を戻そう。
 カメラ性能云々はいったん抜きにして、単純に撮るための設定は何がよいのだろうか。個人的にお薦めの設定はSS1/2000にし、F値はレンズ次第だがF/10前後。これにISOオートで撮影している。


 これ以外の設定としてはAF-Cにして、フォーカスエリアはトラッキングスポット。AF被写体追従はノーマル、そして連射速度をHi+にして最速にして指切りで撮影している。

 

200mm / F10.0 / 1/200 / ISO 125
土煙を巻き上げながらロープを降ろすチヌーク。航空機でシャッタースピードを落としていたので「ロープブレそうだな」と思ったが、意外にもしっかり映ってくれた。
土煙を巻き上げる瞬間を見るたび、以前の総火演で天候が悪く泥を巻き上げ前の方にいた観客にまで飛び散ってきたのはいい思い出だ

 

200mm / F10.0 / 1/2000 / ISO 2500
射撃後、衝撃で舞い上がった土煙と水蒸気に包まれる10式。もし射撃を逃してしまってもこれはこれでカッコいい瞬間が撮れる

 

 予測と運を味方につけて撮れた後はレタッチの時間だ。

 撮影タイミングにもよるが車輌の走行、ヘリの巻き上げなどで土埃が舞った状態で撮影しているので少し白っぽい写真になっているだろう。

 

200mm / F10.0 / 1/2000 / ISO 2500
撮影したRAWデータをそのまま現像し出力した写真なので、環境によるかすみや発砲炎で急激に露出が変わったことにより少し白ぼけている

 

少し白く霞んでいるのをなくし、露出とハイライトを下げ、発砲炎とオレンジに照らされた車体を強調させた。これにより写真自体に重厚感と発砲炎が強調された写真になった

 

 まずは「かすみの除去」をかけて白っぽさを少し軽減させる。その後、発砲炎のハイライトを少し下げて輪郭のオレンジ色を出す。後は好みのレタッチをかけて完成だ。これで抜けのある写真で、発砲炎も炎らしさが出てカッコよくなると筆者は考えている。

 

せっかくなのでトリミングした写真も。ここまで拡大した写真になると、舞う火の粉一つ一つが見えたり、煙もより雰囲気が出てこっちもカッコいい写真になる

 

 というわけで発砲炎の撮影についてのおさらいだ。

 

  • まず、どの戦車を撮るか狙いをつける。こうしないと別の戦車に気を取られ、一枚も撮れなくなってしまう。
  • 戦車の無線交信が放送され、射撃命令が聞けたら発砲シーンを捉えるチャンス。目で見てからでは撮影することはほぼ不可能なので、聞き逃さないようにしよう。
  • 無駄に連射はしすぎない。射撃する瞬間にカメラが撮れなくなってしまう可能性がある(あと、写真の選別と削除が地味に大変)。
  • 秒10コマ撮影できるカメラだと撮影できる確率がかなり上がる。
  • カメラの設定はシャッタースピードが大事、SS1/1000は遅くとも欲しい。あとAFモードはAF-Cにしよう。

 

 撮影時はこのあたりに注意すればかなり撮影確率は上がる。

 

105mm / F8.0 / 1/1000 / ISO 1000
恐らく総火演では最後の共演となるであろう16式と74式。総火演ではこういった実戦に近い偽装を施した車輌が見られるのも魅力だ

 

300mm / F10.0 / 1/200 / ISO 100
懸垂下降を行なう隊員を被写体にし、背景にコブラを入れてみた。直前に航空機を撮っていたのでシャッタースピードが少し遅く、ブレてしまっているのが惜しいポイント

 


 

 しかしここまで解説して「でも総火演は直接の一般公開がなくなり関係者しか入れないのでは?」と思われるが、なにも総火演だけで使えるテクニックではなく、駐屯地祭の戦闘訓練展示でも戦車や自走砲などの空砲射撃シーンを撮影できるチャンスはある。

 

これは富士駐屯地基地祭での模擬演習で撮影した写真。総火演で発砲炎を狙うより個人的に難しく、一枚も撮影できてない

 

 例えば関東近辺だと富士駐屯地や板妻駐屯地、滝ヶ原駐屯地などの駐屯地祭では戦車や榴弾砲、そして航空機まで活躍する戦闘訓練展示が見られる。

 他にも武器学校のある土浦駐屯地、ドライブインコンバットを行なったことで有名な今津駐屯地、第7師団で有名な東千歳駐屯地等でも迫力のある戦闘訓練展示が行なわれている。

 

 戦車を撮影する機会があれば、ぜひ参考にしていただければ幸いだ。

 

▼合わせて読みたい!▼

 

PHOTO&TEXT:出雲

 


 

 Arms MAGAZINE WEBでは気になるエアガン&サバゲー情報を毎日発信中!! 気になる方は公式X(Twitter)を要チェック♪

 

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×