実銃

2023/10/08

【実銃】M14の不遇、そして新たなる活路。「SOCOM16 CQB」への進化の軌跡を辿る【Part3】

 

Springfield Armory 
M1A
SOCOM16 CQB

 

クラシックなM1Aのデザインから誕生したコンパクトタクティカルライフル

 

 

 1950年代、西側各国が採用した第一世代アサルトライフルの中で、米国のM14は古いライフルのデザインを引きずっていた。しかし、それは同時に“鋭い切れ味”の優れたデザインでもあった。それゆえ、同時代のG3やFALが過去の遺物になってしなった今でも、M14(M1A)は進化を続けている。

 

Part2はこちら

 


 

M14の歴史

 

 軍用ライフルとしてのM14の寿命は、予想したより大幅に早くに終焉を迎えた。ベトナム戦争に投入された結果、M14はジャングルでの戦闘に不向きなことが明らかとなったからだ。米軍は独自の判断で、軽合金と樹脂で構成され軽量かつ小口径の5.56mm×45弾を使用するAR15を1964年に投入した。

 

レシーバーのディスアッセンブルノッチの位置にガイドラグが来るまでオペレーティングロッドハンドルを後退させながら取り外す


 ジャングル戦での現実的な戦闘距離には、7.62mmNATOのパワーは無駄に大きかった。弾頭重量は147grであったが、AR15の5.56mm弾は55grと大幅に軽量な弾頭を採用、その結果反動も少なく、フルオートの制御も比較的容易で、弾の小型軽量化により携行できる弾数も大幅に増える。米軍は1967年、AR15を改良したM16A1を全面採用する決定をくだす。

 5.56mm弾もM193として採用したが、これは後に改良されて62gr弾頭のSS109がNATOサブキャリバーに制定された。

 

ボルトを取り外す


 M16の全面採用に伴い、1968年にM14は退役したが、米陸軍は採用中止の決定が下る前の62年12月に250万挺の追加発注を行ない、1969年6月30日までに納入する事を約束させた。これでM14が米軍装備から消え去ったわけではない。スナイパーユースでその一部が現役を維持し続けた。

 

分解完了

 

 狙撃能力向上のためレザーウッド社のM84スコープをマウントし、ART(アジャスタブルレンジングテレスコープ)Ⅰを装着、70年初頭に改良型ART Ⅱスコープと新型マウントと共にM21スナイパーライフルとして運用が始まった。

 しかし、命中精度においてはM14系がボルトアクションの域に達する事はなく、米陸軍は1988年により高精度な狙撃が可能なボルトアクションのM24スナイパーウェポンシステム(SWS)を採用した。これにより、M21の運用は終了したが、セミオートスナイパーライフルの需要が全くなくなったわけではない。

 

 米陸軍特殊部隊グリーンベレーと海軍ネイビーシールズは、M21をベースにマクミランのファイバーグラスストック等を組み合わせたM25 SWSを開発、M24と併用した。

 

M14では鍛造素材を切削加工したが、M1Aではインベストメントキャスティングで製造されている。それでも強度上問題ない。ボルトが後退する様子をレシーバーの下から見た状態


 今世紀に入りアフガニスタン、イラクでの戦争が勃発し、遮蔽物の少ない荒野や砂漠地帯の切り開かれた戦地では戦闘距離が遠く、5.56mmの実用上の限界が改めて浮き彫りとなり、再び口径7.62mmNATOのセミオートライフルの存在が再評価された。ボルトアクションのスナイパーライフルほどの精度は必要としないが、5.56mmの有効射程外へもある程度の精度で有効弾を撃ち込めるDMR(Designated Marksman Rifle)の需要がそこにあったのだ。

 

発射するとバレル内のガスポートからガスシリンダーに流れ込み、高圧ガスがピストンを作動させ、写真のようにピストンが飛び出し、その先に位置するオペレーティングロッドを後退させる


 7.62mmNATO弾を使用するM14なら、およそ250mから500m程度の中距離内で十分なパワーと実用的精度があり、さらにセミオート能力を活かして、緊急時には積極的に戦闘にも参加できる。M14が持つ遠近両方に対応できる汎用性の高さが評価された。
 そこでネイビーシールズなどの特殊部隊は、モスボール(※)されていたM14を引っ張り出し、航空機材のアルミ合金素材を加工したシャシーストックシステムを組み込んでM14を大幅に近代化させた発展型Mk14EBR(Enhanced Battle Rifle)を導入し、DMRとして運用、同時にこれをCQB戦闘にも用いたのだ。

 

※モスボール:旧式化したり現役から外れた各種装備を廃棄処分せず、必要に応じて現役復帰できるように保存処置(シートで覆ったりオイルに浸して容器に入れたりなど、腐食や劣化を防ぐことをモスボール=繭に例えている)を施した上で保管しておくこと。

 

ボルトのクローズアップ。前方左右に大型のロッキングラグを持ち、プランジャータイプのエジェクターを備える

 

ファイアリングピンはクローム処理されている


 これを受けて、アリゾナ州Smith Enterprises(スミスエンタープライゼス)がEBRを模したMK14SEIを販売。Sage International(セージインターナショナル)もEBRシャシーシステムなどを製品化しており、既存のM1AをアップグレードしてMk14EBRに近づけることができる。M14は朽ちることなく、その価値を今世紀の戦場でも見せつけたのだ。

 

SOCOM 16

 

トリガーハウジンググループの様子。SOCOM16にはナショナルマッチ2ステージトリガーを採用。計測すると約1.777kgという数値が出た。競技モデルやスナイパーライフルなどに比べると遥かに重いが、サービスライフル競技には適度な重さのトリガープルだ


 これら特殊部隊によるM14のアップグレードはM1Aを製造供給するSFA(スプリングフィールドアーモリー)を刺激した。その結果、2004年に新設計のマズルブレイク付き16.25インチバレルで946mmに全長を短縮、3.85kgまで軽量化したSOCOM16が発表された。

 AR系とは異なり、伝統的なライフルスタイルなので全高も低く抑えられ、そのコンパクトサイズに比して高いファイアパワーとバランスの良さを持つこの製品は注目を集めた。

 

ハンマーがコックされセイフティオンの状態。セイフティはトリガーの作動をブロックする


 最も大きな新特徴は、スカウトライフルで知られるフォワードレイルをレシーバー前方に追加したことだ。近距離戦向けのCQBオプティックの装着能力を得たことで、汎用性が格段に増している。
 ブラックコンポジットストック、2ステージナショナルマッチトリガー、トリチウム入りフロントサイトを備えたこの小型タクティカルライフルは、翌年にはハンドガードからレシーバー上にまで延びる長いレイルで大型光学サイトをマウント可能にしたSOCOMⅡが追加されている。

 

発射後セミオートではボルトの後退によって再びハンマーがコックされると手前のハンマーフック(シア)がハンマーをキャッチする。トリガーから指を放すと今度は前方のフック(ハンマーラグ)によって保持されて発射準備が整う。トリガーを引くとハンマーはリリースされて発射となる。M14のフルオートでは、セレクターとオペレーティングハンドルの下に追加されるコネクター等が追加されており、ボルトが閉鎖した直後にコネクターが後方のシアをトリップさせる。トリガーを引き続けている限りハンマーを自動的にリリース、これによってフルオート射撃が行なえる仕組みだ


 さらに2016年、マガジンメーカーと協力し、ArkAngel(アークエンジェル)AACQSクローズクォーターストックを装着したSOCOM16 CQBを発表した。AR系収縮式ストック、ピストルグリップによりEBRのようなモダンなユーザビリティを得た事で、M1Aはよりタクティカルユースに向いたデザインとなった。さらに小型ドットサイト、ヴェノムをマウントしたモデルも発表し高い目標捕捉能力が与えられた。

 

7.62mm×51と5.56mm×45(55gr、M193)の比較。米軍はベトナム戦争で、撃ちやすく、小型軽量、より多くの弾を携行できる5.56mm×45(M193)を採用。その後改良されて62gr弾頭のSS109へと発展した


 同シリーズには大戦中に試作されたM1ガーランドの短縮型T26タンカーガーランドからインスパイアされた、ウォールナットストックを備えるSOCOM16タンカーもある。そしてフォワードマウントを有しながら、18インチバレルと通常型マズルブレイクを装着したスカウトスクワッドシリーズまであり、M1Aのコンパクトモデルの人気は高い。
 

今回はフィリピン製アームスコー グローバルディフェンスのM80カートリッジ(147gr弾頭)を使用。SOCOM16 CQBからの初速は2,471fpsでエナジーは1,993ft-lbs

 

続きはこちら

 

TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局 

 

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×