2023/10/07
【実銃】M14の進化の軌跡 ~「SOCOM16」実銃レポート~【Part2】
Springfield Armory
M1A SOCOM16 CQB
クラシックなM1Aのデザインから誕生したコンパクトタクティカルライフル
1950年代、西側各国が採用した第一世代アサルトライフルの中で、米国のM14は古いライフルのデザインを引きずっていた。しかし、それは同時に“鋭い切れ味”の優れたデザインでもあった。それゆえ、同時代のG3やFALが過去の遺物になってしまった今でも、M14(M1A)は進化を続けている。
M14の歴史
M14の設計母体は、John C. Garand(ジョン・C.ガーランド)が設計し、第二次世界大戦や朝鮮戦争で米軍が広く活用したM1ガーランド(1936年採用)だ。世界中の軍がまだボルトアクションライフルを使用していた時代に、信頼性の高い軍用セミオートマチックライフルを開発したことは、米国の工業技術水準の高さを世界に知らしめる出来事でもあった。
回転式ボルトによるガス作動方式を備え、.30-06カートリッジを8連のエンブロッククリップでまとめてレシーバー上から装填するこのライフルは、他国が使用するボルトアクションライフルを大幅に圧倒する速射性を持ち、その火力の高さは驚異的だった。ただし、マガジンが空になるとクリップが自動的に排出され、その音が弾切れの合図になって戦場では不利に働くこともあったという。
そして伝統的な形状の木製ライフルストックにガスオペレーション式機関部を組み込んだことで、銃としては大型で重量もあった。ドイツやソ連もM1ガーランドの後を追ってセミオートマチックの軍用ライフルを第二次大戦中に開発配備したが、その量産数と信頼性の高さでM1ガーランドは圧倒的であったといえる。
第二次大戦中、米陸軍武器科は、早くもガーランドの改良型開発計画を打ち出していた。ガーランドを使う兵士にこの銃に対する意見を聞くと、真っ先に出てきたのが銃自体の重量が重過ぎるということだった。そしてBARのようなフルオート機能が組み込まれていたら、より戦闘力が高まるという意見や、装弾数をもっと増やせる着脱式ボックスマガジンを使えるようにしてほしい、といった声が多くあった。
1944年にジョン・C.ガーランドも参加し、スプリングフィールド造兵廠で改良試作型の製作が進行した。そして重量を9ポンド(約4kg)に抑え、フルオート機能の追加、20連着脱式マガジンを採用するなどといった現場の声を反映させ、さらにはライフルグレネードやバイポッドを追加するなどの改良を行なったT20が完成した。
米陸軍武器科の試験を経て、1945年に10万挺もの改良型のT20E2の発注が決まるが、終戦を迎えた事で100挺程度の生産で中断された。
1947年にNATO(北大西洋条約機構)が発足、同盟国の間でのNATO標準弾と共用ライフル案が持ち上がり、同盟国間で議論された。米国はすでに完成しているT20を推したが、英国はNATO共用ライフルとして、サブマシンガンの代用も可能な.280口径を推し、ブルパップ方式のEM2を試作した。ベルギーFN社も試作銃(後のFAL)を.280弾仕様で提案したが、米国は.30口径以下の小口径ライフルでは、歩兵の主力ライフルとしては有効射程が不足すると考え、銃とともにこれを否定した。
1945年初頭、米フランクフォード兵器廠で.30-06を短縮した新型弾T65が開発・試験されていた。これが後にNATO加盟国の同意を得て標準弾7.62mmNATOとなった。次にこれを使用する共用ライフルの審議が行なわれたが、この時点でT20の発展型T44と、FN社のFALが最有力候補であった。
しかし、米国の意思決定を待たず英国とカナダはFALを選択する決定を下した。一方、米軍武器科もT48の名称でFALをT44と共に試験し、両者とも基準を満たす銃であると結論づけた。それでも米軍は1957年5月1日付でT48を退け、僅かに軽量で米国内でも生産しやすいと考えられたT44をM14として採用することを決定した。
これによりNATO全軍の共用ライフル構想は事実上、瓦解した。当時、米国を除く多くの国が採用した軍用ライフルを見ると、そのほとんどはドイツが戦争末期に投入し、近代アサルトライフルの礎となったと言われるStG44(MP43/MP44)のような金属レシーバーに独立したピストルグリップ、ストック、ハンドガードを装着した形状を持つ製品だった。それに対してM14は前時代的なライフルの形状を引き継いでいた。
1958年から1963年まで米国政府は4社(スプリングフィールド、ウインチェスター、ハーリントン&リチャードソン、トンプソンラモウールドリッチ)に1,380,358挺のM14を発注した。その際、M1ガーランド製造ラインのツーリングがそのまま流用できると期待されたが、現実はそんなに甘くはなく、工作機械の調整で遅れが出た。
M14の22インチバレルはM1ガーランドより約5cm短く、重量も3.78kgまで軽量化されている。フル装填した20連マガジン込みでもガーランドの4.31kgよりも明らかに軽い。
M14の最大有効射程は460mとされた。新型7.62mmNATO弾の短縮化により、機関部も短縮され右側面にマウント取り付け用のネジ穴が追加された事でスコープやナイトビジョンの増設は容易に可能になった。当初ハンドガード上部は木製だったがフルオート射撃の加熱で焦げることが問題になり、ここはスロット入りのファイバーグラス製に変更されている。
期待されたフルオート機能だったが、新型弾の反動は強力で制御を失いやすく、現実的な使用を疑問視され、無駄弾の消費を抑えるためにフルオートに切り替え不能にするセレクターロックも考案された。
本来M14は、M1ガーランド、M1/M2カービン、M3/M3A1グリースガン、BARといった軍用ショルダーウェポンのすべてを統合・置き換える事を目指したアサルトライフルであったが、フルオート射撃が困難では、サブマシンガンやBARの機能をカバーすることは不可能であることは言うまでもない。
部隊支援火器の役割を担うヘビーバレルのM15も採用されたが、製造数はかなり少なく、これとは別に直線的なストック、可倒式ハンドグリップとバイポッドでフルオート射撃をしやすくしたM14E2が開発された。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
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