2023/09/08
【実銃】護身用で人気なマイクロコンパクトピストル「SIG SAUER P365」【Chapter 1】
SIG SAUER
P365
ハイキャップマガジンを採用したマイクロコンパクトピストル
2017年末に発表されたP365は、9mm×19のCCWに適したサブコンパクトモデルだ。G43と同等のサイズながら、マガジンキャパシティが10+1と大きい。そのため発売と同時に大注目を浴びている。
今回ご紹介するモデルはノーマルのP365ではなく、映画『ジョン・ウィック:パラベラム(John Wick:Chapter 3-Parabellum)』で使用されているグレイガンズカスタムとTTIカスタムだ。
※この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年6月号に掲載されたものを転載しています。
キャリーガンの動向
CCW(Carrying a Concealed Weapon)とは拳銃の携帯を意味し、一般的にはその許可証はCCWパーミット(Permit)と呼ばれている。全米各州が必ずしもこれに対応しているわけではないが、多くの州でCCWパーミットが発行されるようになった。
銃器規制で縛られたカリフォルニア州においても、いくつかの郡(カウンティ)のシェリフは一般市民に対してこれを発行しており、LA周辺ではオレンジ郡やベンチュラ郡の居住者は申請ができる。90年代から徐々にCCWを許可する州や郡が増え、それが小型ハンドガン人気の下地を築いた。同時に1994年から10年もの間、11発以上装填可能なハイキャップマガジンの市販が禁じられていた期間があり、その結果、市場の目線が大型モデルもより小型ハンドガンに向けられる環境が形成されたともいえる。
メーカー各社は一般市民のキャリーガン市場にも強く関心を持つようになったが、その頃の選択肢は現在と比べるとかなり限定的であり、幅1インチ(約2.5cm)を下回るマイクロコンパクトのような銃を積極的に開発するほど前のめりにはなっていなかった。
一般市民にとっては、やや大袈裟で常時携帯するにはあまり適さないフルサイズ、あるいはそれを切り詰めたサブコンパクト、そして薄さ小型さを優先する層にとっては昔からあるワルサーPPK/Sのような.380ACPオートなどがその選択肢の中心にあった。
ただ装弾数を妥協し、コンシーラビリティ(Concealability:隠し持ちやすさ)を最優先にすると、警官のバックアップ用として定着していたS&WのJフレームに代表される小型リボルバーへと行き着く。その考え方は現在でも少なからず見ることができる。
この頃にG26に代表されるサブコンパクト時代が幕を開けた。ただし80年代に急速に発展を遂げたハイキャップマガジンを備える大型オートを、単純にチョップダウン(切り詰めた)するという発想で生まれたものだ。全長/全高は大幅にコンパクト化されていても、その厚みはフルサイズと殆ど一緒なので、腰に挿した時の違和感は少なからずある。
やはり日常的に銃を携行し続けるのに求められる機能は“薄さ”なのだ。それでも厚ささえ我慢すれば、フルサイズのマガジンが挿入可能なので、大幅なファイアパワーの強化が行なえるという点は大変に心強く、現在でもサブコンパクトは各メーカーがほぼ必ずラインアップに用意する定番モデルだ。
従来の.380ACPオート並に薄く、小型なマイクロコンパクトの開発競争に一石を投じたのは、90年代半ばに進出したカーアームズ(KahrArms)が発売したK9で、当時その薄さが大きな反響を呼んだ。
カーアームズはショートリコイル機構とシングルスタックマガジンの組み合わせで9mm×19、.40S&W、.45ACPオートの小型化で市場の先陣を切ったのだが、大手各社がこの分野に本格的に新機種を投入するようになったのはここ10年くらいの事だ。
SIGの小型モデルの発展
SIGは戦後スイス軍が採用したP49(P210)の後継モデルとしてP75(P220)を設計、ドイツのJ.P. Sauer & Sohnが製造を担当し、SIG SAUERブランドで各国に輸出をおこなった。その後、西ドイツ警察ピストルトライアルに、P220を小型化したP225を提出し、これがP6として採用された。その後米軍XM9トライアルにより15連マガジンのP226が開発される。
コンパクトな9mmシングルスタックのP225を持つSIGは、そこからCCW市場に向けた新製品開発を進め、P225の角を落とし携行しやすくしたP239を90年代半ばに発表した。
同じ頃にドイツ警察から退役したサープラスP6達がアメリカに輸入され、安価に市場に提供された。当然そちらもCCW用として注目を集めた。90年代後半には.45ACP派の人達に向けてP245を開発、P220系のコンパクトの種類が増えて人気を博したが、その一方で統合されて消えたモデルもある。
SIGには、70年代からブローバック機構の.380ACPモデルとしてP230があり、その改良型としてP232をラインナップに加えていたが、各社から薄型9mm×19オートが登場してくると、その存在意義が急速に薄れていった。SIG自身も2009年に1911系デザインの.380ACPモデルとしてP238を発売し、それを9mm×19化したP938も登場させた。これによりP232は完全に役目を終え、製造中止になった。
.380ACPモデルはかつて、そのほとんどがブローバックモデルだった。しかし、近年ではショートリコイルの導入が必要条件となっている。そうすることによってスライド重量を減じると同時に、強いリコイルスプリング圧からも開放され、女性には困難なスライドの操作も容易にできるようになるからだ。
そして2011年に2.9インチバレル、ショートリコイル機構、シングルスタックマガジンを備えるハンマー方式のポリマーフレームモデルとしてP290が発表された。これは9mm×19と.380ACPを使用するモデルが同時にオファーされている。それまでのP238/P938は、その扱いが難しい小型サムセイフティレバーによるコック&ロック機構を採用していた。
しかし、市場は、外部セイフティを省略した扱いやすいデザインを求めており、P290はそれに応えた、より一般ユーザー向けの製品だ。
P290はDAO(ダブルアクションオンリー)モデルだったが、従来のダブルアクションとは異なり、不発が起きればスライドを引かないと再びハンマーのコックができない構造をもっていた。しかし、2012年にその点や細部を改良、P290RSへと引き継がれることになった。
P290RSは、不発が発生してもそのまま再度トリガーを引けば、プライマーを叩けるセカンドストライク/リストライク能力を持っており、安心感が増した(一般市販のまともな弾なら、不発の発生率はかなり低いのだが)。
Photo&Text:Gun Professionals LA支局
Special thanks :Taran Butler(Taran Tactical Innovations)/GaryTuers(Xtreme Props And Weapons Rentals)/ Michael Grasso(Grayguns)
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年6月号に掲載されたものです。
『ジョン・ウィック』シリーズ最新作を観る方にオススメ!!
月刊ガンプロフェッショナルズ 2023年10月号
キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの最終決戦が描かれる第4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が、いよいよ9月22日に日本でも公開される。この映画でジョンは様々な銃を使いながら戦いを進めていくが、今月号のガンプロフェッショナルズではメインとなる3機種について、デザインを手がけたタラン・バトラーのインタビューを交えながら詳しくご紹介している。作品登場銃について知ることができるので、上映前にぜひご一読いただきたい。
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