実銃

2023/08/12

【実銃】進化を続ける「GLOCK GEN5」特別モデルと過去モデルとの比較【中編】

 

GLOCK Gen5
MOS FS
 

 

GLOCK G17 Gen5 MOS FS FERFRANS Fabrication Model(left)、GLOCK G19 Gen5 MOS FS(right)

 

 グロック社は2019年4月、USカスタム&ボーダープロテクション(CBP:アメリカ合衆国税関・国境警備局)が、サービスハンドガンとしてグロックの採用を決めたことを発表した。口径は9×19mmで、各部がモディファイされたG26、G19MOS、そしてニューモデルとなるG47の3機種だ。
 また、2019年8月にはUSシークレットサービスも、これまで20年以上使用してきたSIG P229 .357SIG口径から、CBPと同じG26、G19MOS、G47に変更することを発表した。現在、アメリカ法執行機関では新型グロックの採用が続いているのだ。

 

前編はこちら

 

 


 

G47スペシャルモデル

 

ホルスターはプロトタイプだが、低すぎずスイベルタイプで使い勝手はいい


 CBPがグロック採用を決めた際、G47という耳慣れないモデル名の存在について、いろんな憶測が飛び交った。その後、グロック社から詳細のリリースがあり、G47とはG19と100%パーツ互換性のある、4.49インチバレル(G17と同じ)を持つ、17+1装弾数のモデルというのがわかった。

 

 もう少し詳しく説明すると、G47のフレームは、G19と同じ長さ、つまりスライドのレイルが収まる部分の長さは同一だが、グリップ部分は17連マガジンをカバーできるよう長めになっている。よって、G47のフレームにG19のスライドを載せることも、またその反対も可能なのだ。

 

フロントセレーションは絶対に欲しい。やっとグロックが気付いてくれたという感がある。できればスライド上面にも入れて欲しいところだ

 

HOLOSUN HS507Cはバックアップのソーラーパネルが付属している。できればもう少し大きめのレンズと、チタンボディにして欲しいところだ

 

 ただし、バレル長は同じでも、G47のフレームにG17のスライドを載せることはできない。これはCBPやシークレットサービスといった大きな組織ではよくある話で、特殊部隊や制服のオフィサーには、より装弾数の多いマガジンを装填できるフルサイズを選び、スーツ姿のエージェントにはコンシールしやすいコンパクトを支給したいという要望によるものだ。

 

 内部の修理&サポート部門にガンが戻ってきた際には、そこに所属するアーマラーが素早く処理できるよう、パーツの互換性が最重要という、大組織ならではの理由もある。

 

いかにも特殊部隊用といった外観に変貌している。ドットサイトは新しいエイムポイントを試してみたいところだ

 

バレルには軽量化用のためにフルートが彫ってある。ナイスタッチだ

 

 G47はデューティハンドガンのみの生産で、一般にはリリースされないことが決まっているという。市販すれば結構売れると思うのだが…。


 あ、あともう一つ。今回採用されたG26(一部ではG26 mod1と呼ばれている)は、グリップ部分のデザインが変更されており、マグウェルが追加されたのに付随して、マガジンが11連(スタンダードは10連)となった。これまたニクイ改良で、もし一般にリリースされたら早速手に入れたいところだ。

 

MOSモデルで少々不安なのがオプティックのマウント方法だ。各オプティクスはこの薄いマウンティングプレートだけに固定されている。しかし、できればプレートだけでなくスライドにもホールを貫通させて、もっと長い​​​ボルトが使えるようにして欲しい

 

G19 Gen5 MOS FSモデルは、極め付けの“アウト オブボックス” 9mmセミオートとなりつつある

 

G17MOS FERFRANS

Fabrication Model

 

 今回CBPとシークレットサービスに採用されたG19とG47は、どちらもMOS(モジュラー オプティック システム)+フロントセレーション付きのモデルだ(G26はGen5で元々フロントセレーションが入っている)。

 

 各機関がマイクロオプティクスを実際に使うかどうかは疑問だが、G26も含め、フロントセレーション付きをチョイスした点には注目したい。プレスチェック(チェンバー確認)やフロントセレーションを使ってのスライドチャージなどがポピュラーになってきた証左であろう。

 

これがG19 Gen5 MOSのパッケージングだ。マガジンは3本付属する

 

確実なファンクション、精度も出ており、信頼性も高い。これが600ドル台で買えてしまうのが凄い


 ここでまた面白い案件が舞い込んできた。あの各種M4システムをLE機関や各国の特殊部隊に供給しているファーフランス(Ferfrans)社から、某国の某組織から依頼のあったグロックG17 Gen5のファブリケーションモデルを撮影してほしい、という依頼があったのだ。ここでいうファブリケーションモデルとは、ガンだけでなく、他社製のパーツを装着して完成品として納品する際などに使われる言葉だ。ファブリケーションには「装備する」という意味がある。

 

GNS(Glock Night Sight)、やっと安心できる金属サイトが搭載された

 

フロントサイトもトリチウム入りだ

 

グロックマークスマンバレル(GMB)になって、明らかに精度は向上している


 記事にさせてもらう条件で引き受けたのだが、これが今回のCBPとシークレットサービスによるニューグロック採用と絡んでなかなか面白い中身だったので、G19 Gen5 MOS FSと重ねて紹介したい。まず、ファーフランス社が受けた、先方からの要望は次の通り。


1.ガンはグロックのGen5。G17とG19に決定済み。
2.マイクロドットサイトを搭載していること。
3.サプレッサーハイトサイト 高さのある前後サイトを搭載して、“コウィットネス”(ドットと前後サイトが同時に確認できる)が可能であること。
4.サプレッサーが装着できること。
5.ウェポンライト(IR照射機能付き)を装備すること。

 

G17 Gen5 MOSのほぼ完全分解。部品点数は少なく、好感が持てる

 

G17とG19のスライド比較


 サプレッサーにIR付きウェポンライトが必要となると、ナイトビジョンを使う可能性があるということだ。これはやはり特殊部隊用だろうなあ、と楽しい想像をしながらの撮影となった。
 ファーフランス社が選んだパーツは以下の通りであった。

 

  • HOLOSUN社製HS507C マイクロドットサイト。これはもうすぐリリースされるチタンボディモデルに換装される可能性あり。
  • Trijicon社製サプレッサーサイト
  • サプレッサー用スレッドの切られたカスタムバレル
  • STREAMLIGHT社製TLR-VIR II
  • RUGGED SUPPRESSOR社製OBSIDIAN9サプレッサー。その長さは4.85インチ(約12.3cm)と7.8インチ(約19.8cm)に可変することができる。

 

リコイルスプリング。上から、G17 Gen5、G19 Gen5、G19 Gen3

 

左がGen5のファイアリングピンブロック。形状もスプリングレートも改良されている

 

 ファブリケーションモデルというのは微妙な側面を持っており、基本的に契約した会社、この場合はファーフランス社が、すべてのパーツを一定期間保証しなければならない。つまり専門の担当者を一定期間置かなけれはならないのだ。まあそれだけ大きな契約になるということだろう。

 

上がGen5、下がGen3。Gen3では、発射できる状態でこのS字コイルスプリングが伸びたままであり“グロックの弱点”と呼ばれていた

 

下がGen5、上がGen3のストライカー/ファイアリングピンアッセンブリ。ピンの形状、バネレートなど、ほぼ新設計だ


 ホロサン社製HS507Cモデルは、実は私もしばらくテストしているドットサイトで、サークルのセンターにドットという組み合わせのレティクルを選ぶことができる。私も最初はドットだけに固執していたが、慣れてくるとサークル+ドットのほうが構えてからのピックアップが速く、ヘッドショットなどの精密射撃でも、サークルのおかげで狙いやすいというのがわかってきた。

 あとは耐久性と信頼性だ。今のところは問題ないが、もう少しテストしてみたいところだ。

 

フレームの比較。左がG19で右はG17。G47はダストカバー部がG19でグリップがG17というものだ

 

スライドリリース。上がGen5。アンビのほうは鉄板の厚みが段違いだ

 

上がGen5、下がGen3のロッキングブロック。互換性はない


 あとは実射だ。どの様な撃ち心地を見せてくれるのか、ファーフランス社に付き合ってもらい、実射に出掛けることにする。

 

続きはこちら
 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年10月号に掲載されたものです

 

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