2023/07/12
MP5の好敵手であったイタリアの傑作SMG「ベレッタ M12 短機関銃」を解説!【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
ベレッタを飛躍させたSMG
イタリアを代表する銃器会社のベレッタは時代に合わせた銃器を製造することで厳しい経済状況を生き抜いてきたメーカーだ。第二次大戦後の近代化計画によって始まったSMG開発において、12番目の試作モデルとしてベレッタより設計された後に改良が施され、最終型がベレッタM12となった。
戦前のベレッタにて設計責任者であったトゥリオ・マレンゴーニから新たにドミニコ・サルツァに設計が引き継がれたことで、これまでにない新たなデザインとなったM12は、イタリア軍と法執行機関の両方で使用されただけでなく輸出もされた。同時期には多くの新型SMGの存在があったにもかかわらず、M12はその信頼性、使いやすさ、および低コストで高い人気を得た。
ヨーロッパにおいてはMP5の唯一のライバルと目されるほどでベレッタの飛躍に大きく貢献している。またイタリア以外にもインドネシアやブラジルなどいくつかの国でライセンス生産されており、世界中で見ることができる。
ベレッタ M12 短機関銃(#E07186)
- 全長:645mm/418mm(ストック折り畳み時)
- 口径:9mm×19
- 装弾数:20/32/40発
- 価格:¥176,000
MP5の好敵手に選ばれたイタリアの星
M12が登場するまでイタリアのSMGはベルグマンスタイルのM38Aが主力であった。このM38Aは非常に信頼性が高く優れたSMGであったが製造コストの問題から変更する必要に迫られていた。
そこでイタリア軍では近代的なSMGの開発に着手し、結果としてベレッタM12を採用した。M12の内部機構はチェコのVz.23やイスラエルのUZIなどで成功していたL型ボルトを用いたオープンボルトのシンプルブローバック方式を採用している。これにより作動面の信頼性を確保したのだが最初期モデルでは操作性の確保と製造コストの問題が浮き彫りになっていた。
これらの問題に対処すべく、機関部の切削加工を鉄板打ち抜きのプレス工程に変更し、木製ストックの装着を廃止したことによって製造コストの問題はクリアできた。操作性は試行錯誤の結果イタリア人らしさが全面にでたスタイリッシュさと合理性を両立した秀逸なデザインとなった。
特に前部フォアグリップの採用はフルオート時での効果が高く、射程距離200メートルまでの高い命中精度を確保している。これは当時のSMGでは充分な精度であった。
加えてトリガーを固定するマニュアルセーフティとグリップセーフティ、コッキングハンドルに装着されたボルト前進防止式セーフティの3重の安全対策が取られ、精度と安全性を求める警察関係や軍での使用に最適であった。
1970年代から80年代にかけて、安全装置がプッシュボタン型クロスバーからレバーセレクター型に変更されたM12Sへと進化しこれでM12の欠点はほぼ解消されている。米国での需要も高く、ベトナム戦争時にはテト攻勢のときのアメリカ大使館での戦闘の際に、私服のCIA職員らしきアメリカ人が使用するなどミステリアスな使われ方もしていた。
M12シリーズは21世紀になった2008年まで原型を留めたまま生産が続けられたベレッタのSMGの代表的なモデルだ。古い設計でも充分な機能が備わっていれば現在でも通用することを証明している稀有な存在であり、状況によってはまだまだ活躍できるSMGであろう。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2023年8月号に掲載されたものです。
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