ミリタリー

2023/06/20

【陸上自衛隊】第1空挺団×米英豪軍による降下訓練展示【後編】

 

第1空挺団×米英豪軍

 

 陸上自衛隊習志野演習場で一般公開された令和5年「降下訓練始め」では米英豪軍も加わり、島嶼防衛を想定した訓練展示が行なわれた。中でも地上訓練展示は立体的かつスピーディに動く空挺部隊の特性が感じられるもので、それぞれに特徴を持つ日米英豪の精鋭の姿を同時に見られたのは興味深かった。今回は米英豪軍の様子を中心に「降下訓練始め」の様子をレポートする。

 

前編はこちら

 

自由降下傘MC-4により米、英、豪軍の各空挺隊員が降下。今回の降下展示では史上初となる、準同盟国ともいえる英軍、豪軍の参加が実現した

 

MC-4を操り降下する米陸軍グリーンベレー。ほぼ無風だったこともあり、ピンポイントで降着していたようだ

 

米陸軍第82空挺師団および第11空挺師団の兵士は、銀色のT-11パラシュートで降下。素早く密集する降下には欠かせない安全性と着地までの操縦性とを両立させた高性能の空挺傘だ

 

こちらは先行する空挺団を支援するためヘリボーンにて前進してきた米英豪軍の兵士たち。島嶼防衛における空挺作戦は困難だが、今回はひとつのモデルケースが提示されたともいえるだろう。なお、彼らが手にするのは国産訓練教材のラバーガン(TRG)だが、今後は各国の小火器を携えての訓練展示が常態化していくはずだ

 

米陸軍第82空挺師団の兵士。最新装備を優先配備される彼ららしく、新型のIHPS(Integrated Head Protection System)ヘルメットを着用していた。他に、アラスカの第11空挺師団の兵士も参加

 

米陸軍第1特殊部隊群第1大隊(いわゆるグリーンベレー)の兵士。降下後の手際がよく、重い落下傘を背負って駆けるスピードも群を抜いていた

 

英陸軍第16空中強襲旅団の兵士。現行装備のVirtus Soldier Systemを着用しているようだ。降下後、自ら落下傘を回収して背負って行動していた

 

第5空母航空団から派遣された米海軍MH-60Sシーホークに第1空挺団の隊員が搭乗し、エキストラクションロープを使用した特殊卸下を行なう。日米の連携を象徴するようなワンシーンだ

 

新しい国際秩序の胎動

 

 第1空挺団は降下訓練始めに先立ち米、英、豪の空挺部隊指揮官を参集し「令和5年 国際空挺指揮官会議」を実施している。本会議では現在の情勢や今後の空挺部隊の運用について理解を深め、相互運用性や連携強化を図ることで、「インド太平洋地域の平和と安定のため空挺部隊が果たすべき役割」について討議。日米英豪空挺部隊指揮官の連携強化を示した。なお、本会議に参加した指揮官等も降下展示を実施した。

 約80年前の大東亜戦争において戦火を交えた各国が、「インド太平洋地域の平和と安定」という御旗の下に集結し、その連携と士気を内外に示したことは大きな歴史の転換点だといえるだろう。ウクライナ戦争が長引く一方で、日本周辺では台湾・尖閣有事が危惧される昨今。地域の安定化に我が国が担う責任は急速に増大しており、降下訓練始めからも垣間見えたといえるだろう。

 

本訓練の最後は、参加部隊の各国軍兵士と陸自空挺隊員とが、互いに徽章を交換しあう式典が行なわれ、日米英豪の結束が示された

 

Text & Photos : 笹川英夫

構成:神崎 大

取材協力:陸上自衛隊 第1空挺団、陸上総隊報道官

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年3月号に掲載されたものです。

 

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