2023/05/24
20世紀最高のイタリアンライフル「ベレッタ BM59 Mark Ital TA」。30年イタリアの前線を支えた米国の血を引くライフルとは【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
20世紀最高のイタリアンライフル
イタリア陸軍の軽量自動小銃としても知られるベレッタBM59ライフルは、第二次世界大戦後にイタリアで設計され、採用された最初の小銃である。戦後のイタリアはG3やFN FALなどの自動小銃の採用を目指したが、財政上の問題があり米国から大量に供与されたM1ガーランドを改修する道を選んだ。この計画を担ったのがイタリアのベレッタである。
当時M1ガーランドの整備業務やライセンス生産をおこなっていたベレッタには改修用の機械が揃っており、製造コストを大幅に削減することができた。ベレッタBM59ライフルは配備後にイタリアが大きな戦闘を経験することがなかったため、実戦で問題を露呈するようなこともなく、1962年の最初の納入から1990年代初頭まで、長い間イタリア軍の第一線で活躍していた。
2000年以降もBM59ライフルは、イタリア軍がアサルトライフルでは対処できない場合にはバトルライフルとして使用されており、イタリア軍に信頼されたライフルなのだ。
ベレッタ BM59 Mark Ital TA(#197098)
- 全長:1,120mm(ストック伸縮時630mm/730mm)
- 口径:7.62mm×51
- 装弾数:20発
- 価格:¥297,000
M1ガーランドの正当な後継機種
BM59ライフルの第一印象は米国のM14にそっくりであるということであろう。これは両者ともにM1ガーランドをベースに必要な装備を追加していった結果、似通った外観となったからだ。
発射機構を変更したM14に対しBM59ライフルはM1ガーランドのままとした。製造したベレッタには長い歴史があったが、拳銃とサブマシンガン以外では軍用銃のノウハウに乏しく、ガスオペレーションライフルに関してはM1ガーランドやM1カービンから設計を学ぶような状況だった。
ベレッタの設計指針はM1ガーランドを改修しフルオート化する際のアプローチが、M14とBM59では大きく異なっている点にも表れている。M14がロングストローク・ガスピストンからショートストローク・ガスピストンに変更したのに対し、BM59はM1ガーランドの基本構造を受け継いだままフルオート化したのだった。
とはいえ現在まで両者から致命的な欠点が出ていないところを見ると、ベレッタの保守的な改修も悪い選択肢ではなかったようだ。
王道のモダンスタイルであるBM59はいくつかのバリエーションも造られた。その一つがイタリア北部のアルプス山脈を担当する山岳部隊用だ。アルピーニと呼ばれる山岳戦を専門とするエリート部隊で、ヨーロッパ側から侵攻された場合には登山をしながら戦闘を行うために、Ital TAモデルという特殊なモデルを使用していた。
山岳山岳部隊のライフルは可能な限りコンパクトにする必要があるため、ストックはフォールディングタイプを採用するなど、取り回しに優れた派生型となっている。M1ガーランドの進化型がM14とするならばBM59ライフルは最終形態であろう。同
じライフルをベースとしながらM14が近代化の波に飲まれてわずか5年でM16にその座を譲ったのに対し、BM59ライフルは30年近く主力ライフルの地位に就いていた。
アメリカ発祥であるがイタリアの誇りとなったBM59ライフルは、ゼロからのプロジェクトではなく新機構も採用しなかったが、結果的にはM14よりも長く運用が続けられた。特に評価したいのはバトルプルーフされた確かな構造を受け継いだ純粋なライフルは、時代が変わっても通用すると証明した点である。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2023年6月号に掲載したものです
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