実銃

2023/03/24

【実銃】クロアチアによる21世紀のブルパップ「HS Produkt VHS-2」

 

21世紀のブルパップライフル

 

 いわゆる「ヨーロピアンスタンダード」な方式として、20世紀後半に人気を集めたブルパップライフル。現在は下火になってはいるが、まだまだ健在である。今回はクロアチア製のVHS-2を徹底解剖した実銃レポートを公開しよう。

 

 

ブルパップの興亡

 

 ヨーロッパのアサルトライフルの歴史にはフランスのFA-MASやオーストリアのステアーAUG、英国のL85とブルパップライフルが数多く存在する。特に1970~80年代にかけては、ブルパップライフルこそがヨーロッパにおけるアサルトライフルの代表であったと言っても過言ではない。しかしご存知の通り、21世紀になりタクティカルシューティングのテクニックが普及し始めるとブルパップライフルの人気は影を潜め始める。長年FA-MASを制式採用していたフランス軍もとうとうHK416Fへと装備を更新してしまった。

 このフランス軍次期制式小銃のトライアルには、HK416のほかFN SCARなど錚々たるメンツが顔を揃えていたのだが、実はその中に唯一ブルパップライフルで参戦した銃があった。それが今回レポートする、クロアチアのHSプロダクトが製造したVHS-2である。

 

 

HS Produkt VHS-K2

  • 使用弾:5.56mm×45
  • 全長:710mm/760mm(ストック伸長時)
  • バレル長:410mm
  • 重量:3,700g
  • 装弾数:30発

 

 HSプロダクトはクロアチアの銃器メーカーで、スプリングフィールドアーモリーのポリマーフレームピストル、XDシリーズの設計元として知られている。XDシリーズは優秀な性能とバリエーションの多さから、アメリカ市場を中心に人気を集めているモデルだ。そんな銃を作れるだけの手腕を持つHSプロダクトが、自国の軍用ライフルとして開発したのがVHSシリーズだ。2008年に発表された初期モデルはFA-MASによく似たスタイルをしていたが、動作方式はガスピストン式とするなどより信頼性の高い設計となっている(FA-MASはディレイドブローバック方式)。さらに2013年には改良型のVHS-2が発表された。

 

4プロングタイプのフラッシュハイダーは非常に効果が高い。その上にはガスレギュレーターが見える

 

フリップアップ式のフロント/リアサイトは高品質なものが使われている。アキュラシーの高さでも知られるHSプロダクトのこだわりが表れている

 

チャージングハンドルはG36のものに似た、左右どちらからもアクセスできるスタイル。通常時は前方を向いており、装填時は左右どちらかに倒れ、手を放すとまた正面を向く。この構造のおかげで引っ掛かりの少ないデザインとなっている

 

グリップもどことなくHK416に似ている。フルオートのモデルではグローブに対応してトリガーガード前方が大きく湾曲しているが、市販モデルはストレートに近い。セレクター以外に外観でフルオートバージョンと見分けるポイントはこのトリガーガードだ

 

使用しない側のエジェクションポートはダストカバーが開かないようにチークパッドで固定されている。そのチークパッドはケースディフレクターの役割も持つ

 

セレクターはわずかな角度で切り替えられる。カチッと程よいクリック感があり確実に操作できる

 

マガジンリリースボタンとボルトリリースボタンが近い位置にあり、筆者は間違えて操作してしまった。慣れれば問題ないかもしれないが、改善してほしいところだ

 

マガジンハウジング前方のピンを抜くことでカップリング・アタッチメントを交換できる。G36マガジン用やFA-MASマガジン用がある

 

 このVHS-2はセレクターがアンビとなり、キャリングハンドル上部にはピカティニーレールが搭載されるなど近代化がなされている。特に興味深いのが、ブルパップとしては珍しいテレスコピック式のストックを採用している点だ。こうした改良によって、まさに「21世紀のブルパップ」としてふさわしい銃へと進化している。

 月刊アームズマガジン2023年3月号ではこの詳しいレポートと共に実射レポートも掲載している。この銃が気になった方はぜひ併せてご覧いただきたい。

 

Special Thanks to Le cercle de tir de Wissous
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年3月号に掲載されたものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×