実銃

2023/03/16

【実銃】ワルサー社の作りだした最新モデル「PPQ 45 SD 」 実射から隠れた実力に迫る!【後編】

 

Walther PPQ 45 SD

 

 

 PPQ 45はワルサーが2015年に発表した同社初の自社製45ACPモデルだ。高い評価を得ている9mmのPPQ M2をベースにスケールアップを施し、アメリカンラフルマン誌が選ぶ2017年のゴールデンブルズアイアワードのハンドガン オブ ザ イヤーを受賞している。今回レポートするPPQ 45 SDは、サプレッサーを装着できるタクティカル仕様だ。

 

PPQ

 

▲PPQ 45 SD(右)とPPQ M2 NAVY SD(左)(9mm口径バージョン)

 

PPQ 45 SD

 

  • 口径:.45ACP
  • 全長:203mm
  • 銃身長:123mm
  • 全高:147mm
  • 全幅:33mm
  • 重量:828g


PPQ M2 NAVY SD

 

  • 口径:9mm×19
  • 全長:198mm
  • 銃身長:117mm
  • 全高:135mm
  • 全幅:33mm
  • 重量:624g

 

9mmと.45のバレルの比較。.45ACP用バレルではチェンバー入り口は広げられフィードランプも緩やかになっている

 

フレームの比較。トリガーメカは違えどP99とかなり細部が共通している

 

ストライカー方式でDA(3.0kg)/SA(1.7kg)トリガーを内蔵するP99。初弾をDAで撃つ場合にはスライド上部にあるデコッカーを押し込んでストライカーをリリースする

 

P99のメカを単純化したPPQのSAトリガーはP99から大幅に改善されて引きやすくなった。リセット音も大きく、ハッキリと聞こえる上にリセットがP99と同様で約4mmとグロック並に短い

 

P99 Gen2では少し改良されたが、P99のSAトリガーは引きにくい上に引き切った状態では短すぎて指先が挟まれそうになる。ただ切れは悪くなく、リセットも約4mmと短くてそのポテンシャルは高かった

 

大型で真っ直ぐに伸び縮みするトリガーリターンスプリングのテンションは強く。それだけでも1kg弱のプルがある。スプリンコ(SPRINCO)製などのカスタムスプリングもある

 

シアの作動はストライカーを後退させつつリリースさせるのが一般的だが、P99やPPQではストライカースプリングに逆らうのではなく前方に沈み込むので、その切れには抵抗感が小さい

 

実射

 

 今回の取材はラスベガスのE.Morohoshiさんのご協力で実現した。PPQ 45 SDはカリフォルニア州で販売許可が下りていない上にスレデッドバレルを装着しているのでAW(アサルトウェポン)扱いになってしまう。しかし、同じアメリカ国内ながら、ネバダ州ではごく普通のハンドガンでしかない(カリフォルニアが異常なのだが…)。

 

 PPQの人気に勢いが出てきたのはM2モデルが登場してからだろう。パドルレバーを好む人もいるが、筆者自身もボタン式の方がやはり操作しやすく馴染む。

 

PPQ 45SDの実射。.45ACPらしい強いリコイルではあるが、握りやすいグリップと優れたトリガープルにより安定した射撃ができる

 

参考として9mmのPPQ M2 NAVY SDも撃ってみた。約2.0kgのトリガーも平均より軽く充分優秀だが、PPQ 45SDのトリガーが良すぎて、その印象が薄らいでしまった

 

 PPQの.45口径版といっても、G17からG21に持ちかえた時ほど大きくなったと感じさせない。それに.45ACPで12連マガジンだとは思えないほど握りやすいグリップだ。13連マガジンのG21は、グリップをスリム化したSFでも結構大きい。

 

 まずPPQ 45の印象を大変良くしているのがトリガープルだ。9mmモデルも平均を上回る軽さではあったが、カスタムパーツを組み込んだ訳でもないストックトリガー(箱出し状態のトリガー)でこれは驚きだ。

 

 現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で銃や弾の買い込み騒動が続き、品薄と価格高騰でテスト弾は限られ、レミントン230gr FMJを中心に実射した。参考に撃った9mmモデルではレミントン115gr FMJを使用した。

 

ウィンチェスター230gr FMJ弾頭による距離15m、5発×3回のグルーピング結果。これは最小の30mmで、その他に42mmと44mmと出た。左寄りだが平均で39mmと安定した高い精度が得られた

 

サプレッサー未装着時にはあまり意味がないような背の高いサイトだが、個人的にはフロントサイトのブレードが大きいと連射時のフォローアップが容易で狙いやすい。Uノッチとの組み合わせも良好だ

 

 まず9mmのPPQ M2 NAVY SDから撃ってみた。バレルの位置がグロックよりも高いのでマズルライズはやや大きいが、グリップのアングル、デザインが良く自然にポイントできる。リセットも音と手応えが大きく距離も短いの連射がしやすい。

 

 続いて.45ACPモデルを撃った。ハンドリングに関しては9mmのフィーリングとそう遠くない。特にこのグリップの握りやすさで12連マガジンを内蔵すると考えると感心
する。同じ12発のUSP45やG21/G21SFよりも断然良い。

 

 .45ACP らしく大きく跳ね上がり、スライドが大型で高重量化したのでスライド前後運動も大きく感じるものの、キック自体にさほどの鋭さはない。

 

PPQ 45 SDのマズルライズ。グロックのようにボアが低くないのと軽量.45ACPオートなのでそれなりに強く跳ね上がるが、リコイル自体は比較的マイルドだ

 

PPQ M2 NAVY SDではレミントン115gr FMJ弾頭を使用。初速1,181fps(356ft-lbs)で、マズルライズは当然.45ACPよりやや小さい。全体的なバランスは良好だ

 

 サイレンサーコ(SilencerCo)のハイブリッド46サウンドサプレッサーとの併用ではフロントヘビーになるが、その一方で内蔵されているブースターのプッシュバックの勢いで後方に押され、面白いリコイルが生じる。両者とも作動不良は全くなかった。

 

サイレンサーコのハイブリッド46サウンドサプレッサーを装着したPPQ 45 SD。いよいよSDモデルの本領発揮といったところだ

 

ドーソンプレシジョンの背の高いサプレッサーサイトによりエイムが可能になる

 

サウンドサプレッサーにより“パンッ”という小さく軽い銃声に抑えられる。その消音効果のほどは動画で確認して頂きたい。使用した230gr弾の初速は773fps(305ft-lbs)と亜音速なのでソニックブームは発生せず減音効果が高い。ちなみに種類にもよるが一般的にサプレッサーを装着する事でブレットは僅かに加速され、初速の値は若干上る。計測したところ809fpsと出た

 

 

500g近いこのサプレッサーを装着するとフロントヘビーになるので跳ね上がりも抑えられるが、それと同時に確実に作動させるためのブースターを内蔵しており、バレルを後方に押す勢いも加わるので不思議な手応えのリコイルになり、これが中々楽しい

 

 PPQ 45はホームディフェンスや携帯用にも実用的な性能を持っている。軽量さとファイアパワーを活かし、オープンキャリーが可能でサイズに制約の少ないハイキングやキャンプの護身用トレイルガンにも向いている。狩猟のサイドアームでも野ブタ、山猫など野生動物から身を守るためにストッピングパワーを求められるので.45ACPオートは人気がある。
 

PPQ M2 9mmの実射

 

総合的にみて優れた命中精度、PPQのサイズ感をあまり変えず、さらに改良されたトリガープルを持ち、12発の装弾数ながら握りやすいグリップなど、PPQ 45は魅力的なポリマーフレーム.45オートだと感じた。そしてサプレッサーが許可されている州ではSDシリーズはホスト銃となって、例えば野ブタハンティングなどに活躍の場が広がるだろう

 

 

Photo&Text:Gun Professionals  LA支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年7月号 P.6~19をもとに再編集したものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×