2023/02/13
【後編】ハイレベルなプロフェッショナルツール「グロック19 Gen5」の軌跡を辿る【実銃】
実射
Glock Gen5の入手にてこずったことは既に述べた通りだが、問題はそれだけではない。9mm×19のファクトリーアモがこれまた周辺ガンショップに在庫がないのだ。リローディングはもちろん可能で115gr FMJを500発ばかり持っているが普通、オートピストルの場合、テストにはファクトリーアモを極力使いたい。購入者のほとんどはファクトリーアモを撃つからだ。9mm×19は注文してあるのだが入荷がいつになるか判らないという。そんなわけで手持ちのW-W 115gr FMJ 100発でテストした。
実射日はちょうど、7月4日の米独立記念日、レンジに星条旗、テキサス州旗を飾った。どこもコロナの影響で恒例の家族集合のホットドックパーティはほとんどが中止だ。マイク、サム筆者の3人組はレンジで独立を祝った。
今回のテストシューターはサムだ。サムはM4、そしてM9でのミリタリートレーニング経験者で当然の事ながら銃の保持は確実、マルファンクションは起こしにくい。もちろん今回の実射でマルファンクションはなかった。サムが撃ったからマルファンクションなかったという話ではない。Glockのなかでも特に17、19はスムーズな回転で定評がある。一種類のカートリッジでしかも射撃慣れした者が撃っただけじゃそのモデルの本当の性能は見えてこない。ショートリコイルなどはシューターによってはグリップの握り具合、腕のテンションによってホールド不足となりマルファンクションを起こすことがある。もっとも銃のデザイン時の設定がどの辺にあるかによっても異なる。
ワークショップに帰った後、昔、テストで使った弾の残り物を集めた。115gr、124gr、147grの混ざりだ。ほとんどはFMJだがハローポイントもいくつか混じった。合計したら70発前後になった。これをそのままランダムに装填撃ってみようというわけだ。
後日、レンジに行って右手による片手撃ち、ウイークハンド(筆者の場合、左手)でも撃った。これも全く問題なく回転した。
結論を述べれば、今回のGen5は古いGen2と比較して明らかな進歩を見た。あくまでも筆者の個人の意見とお断りしておくが、Gen2より撃ちやすい。グリップのテクスチャーパターンもあるのだろうが、リコイルが緩和されている。トリガープルが改善されたとアメリカの某リポーターは述べているが、筆者が鈍感なのか、その差は解るがこれが改善と言えるのか・・ちょっと疑問を感じた。ただ言えることはファクトリートリガーのままで筆者にはまったくOKということだ。
たぶん読者が知りたいのは、Glock19 Gen2またはGen3 を所持している者がアップグレードする価値はあるのか?ということだろう。これについては、間違いなく“ある”と思う。しかしGen4所有者となると…新しもの好きなら別だが、Gen4でじゅうぶんだろう。もっともGen4はここにないので断言はできないのだが…。
進化
進化Gen5登場から間もなく3年となり、市場ではいろいろな意見が交差している。1985年の米国デビュー時からGlockは常に好き嫌いが激しく分かれる銃だった。まあ個性が強いということなのだろう。ただその比率は好き、大好きが過半数を占める。それがGlockの現在の成功に結びついているのだが…。
プラスチック(ポリマー)フレームゆえのイメージなのだが、どうしてもこれをオモチャと感ずる派が存在する。機能本位に考えるなら軽量で手ごろな価格がメリットなのだが…プラスチック多用であるがため、経年劣化を心配する向きも少なくない。筆者自身、経年劣化は経験済みだ。マガジンを被うポリマー(当時はマガジンのみポリマー製ではないと言われていた)が20数年後、裂けた。マガジンは1980年代中頃に製造されたものだった。同時期製造マガジンは他に半ダース以上あるが亀裂が入ったのはこの2本だけだ。肝心のフレームグリップはいまだに問題なし。特にGlockは金属製のスライドガイドをグリップフレーム射出成型時、埋め込んでいる。しかし、剥離、または緩んだという形跡はなく、そのような話も全く聞いていない。後発メーカーは金属フレームにパーツを組込みポリマー製グリップフレームにインサートする方法を採用している。
Glockでよく話題になるのは銃腔軸線とグリップのアングルだ。常にベンチマークとなるのは1911の 110°であり、これに対しGlockは112°だ。S&W M&P 105°、SIG P220 105°、FN- HP 105°というわけでグリップアングルを比較すればGlockの角度は大きい。目標をポイントした時、自然に狙えるか否か? 要するにpointability(ポインタビリティ)のことだ。これについては“Glockの丸みをもったバックスラップがあるため、どうしてもインパクトが上に行くからストレートにしたほうがいい”とか… “あの丸みが手にフィットする”とか…いろいろな意見がある。しかし現実にはGlockのアングルを好むシューターも少なくない。
Glockピストルでよく聞く苦情は、ファクトリーオリジナルのサイトはプラスチックで安っぽいというものだ。しかし35年近く筆者も使っているが別に不満はない。多くのユーザーに不満があればGlockも何らかのデザイン変更をしているはずだ。しかし、どんなものをデザインしても100%のユーザーが満足するものはまず作れない。
Glock一番の魅力はreliability(リライアビリティ:信頼性)だという意見が圧倒的に多い。あのグリップアングルもポリマーフレームも嫌いだが、信頼性となるとこれしかないということで選択するシューターも少なからず存在すると聞く。車の世界も同じことでお客の好みは様々だが、信頼性は好みとはまったく違う次元にあるものだ。
登場から約38年が経過しているGlockは、この間、常に最先端を走ってきた。多くの国が軍用として採用、LE機関の採用も多い。彼らは遊びや飾りでハンドガンを選んではいない。その意味でGlockはプロフェッショナルのツールだといえる。そんなGlockとて、パーフェクトといえる存在ではなかった。しかし、徐々に進化し、それに近づいている。
TEXT:Gun Professionals テキサス支局/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年9月号 P.30~P.33をもとに再編集したものです。