ミリタリー

2022/12/24

【航空自衛隊】F-35Aによる圧巻の機動飛行!三沢基地航空祭【米軍】


 今年の9月11日、青森県にある航空自衛隊三沢基地で、3年ぶりとなる航空祭が開催された。今年の目玉は、なんと言っても国内初となる本格的なF-35Aによる機動飛行だろう。今回は日米両国の航空機に加え、地上要員にもスポットを当ててみたので、ご覧いただきたい。

 

日本の空を守る新たな戦力「F-35」

 

 航空自衛隊のF-35Aは2018年に初号機が導入されて以降、2022年3月末までに27機が三沢基地に配備されている。当初は全数が三沢基地のみへの配備となるが、これ以降は石川県の小松基地や垂直離着陸型のF-35Bが宮崎県の新田原基地などへと配備され、最終的にはA/B型合わせて147機ものF-35が調達される予定だ。
 最新の第5世代機となるF-35Aは様々な部位に秘密を持っているため、取材で撮影しようにも許可が降りないことがほとんどであった。事実、地上展示を除いて、エンジンスタートからタキシングまでの一連の撮影は公式写真に頼るほかなかったのである。しかし、今回の航空祭では多くの来場者が見学する中で、パイロットの乗り込みからタキシーアウトまでの流れを目の前で展示したため、ファンのみならずプロのカメラマンたちからも歓喜の声が上がった。

 

F-35Aなどのステルス機は、エアインテーク形状がステルス性能に関わる秘密の部分のひとつで、こうしたタキシング風景を撮影することが難しかった

 

趣向を凝らしたエアインテークカバーを装着して展示されている。こうしたカバーは部隊ごとに異なっているため、将来的に違いを探すのも面白いだろう

 

F-35A戦闘機12機による編隊飛行。これだけの数のF-35Aが揃うのは日本では初で、海外でも珍しいのではないだろうか

 

 会場を広く使いダイナミックな飛行展示を見せる米空軍のF-16と比べ、空自のF-35Aは非常にコンパクトながらキレのある飛行展示を見せた。米軍とは異なり、アクロバット飛行に関する資格がない航空自衛隊のパイロットによる演技であったが、本場の演技に負けないくらいの迫力で、新たなファンの獲得に成功したであろう。

 

コンパクトな機動飛行ならではの近さで急旋回する空自F-35A。翼上面の湯気は、気圧低下に伴う断熱膨張で気温が低下し、空気中の水蒸気が飽和して水滴となって見える「ヴェイパー」と呼ばれる現象だ

 

急旋回中もアフターバーナー全開のため、パイロットには7Gから8Gという強烈な移動加速度が襲い掛かっているはず

 

飛行前の点検で各所をチェックする整備員。彼らの完璧な整備があるおかげで、パイロットたちは安心して飛行することができるのだ

 

F-35Aでは3名の整備員が面倒を見ているが、その整備員を取りまとめるのがこのクルーチーフだ。工具をチェストリグにまとめている所に注目

 

米空軍三沢基地所属のF-16戦闘機。ブロック50のCJ型機で、機体重量の増加に伴うエンジン出力向上が図られている

 

米空軍のアクロバットチーム(通称:PACAFF-16 Demo Team)のF-16による展示飛行。PACAF(太平洋空軍)を代表するチームで、演技のレベルは高い

 

 この三沢基地は空自と米空軍に加え、民間機も滑走路を共用する施設である。会場には空自や海自の航空機に加え、米空軍や海軍などの航空機も多数展示されていた。その中でもっとも来場者の注目を浴びたのが米航空宇宙局(NASA)が保有するWB-57だ。実際に飛行できる機体は世界で3機しか存在しない激レア機で、実任務のため韓国周辺で飛行していたが、本土に帰る直前に立ち寄ったのだという。

 

航空救難の要となる空自UH-60J。米軍で特殊作戦に使用されるMH-60に匹敵する高性能ヘリで、警察や消防、海上保安庁のヘリコプターでも近寄れないような環境下での救難活動も可能。“救難最後の砦”を支える機体だ

 

『トップガン マーヴェリック』で人気のスーパーホーネットの派生型、E/A-18Gグラウラー。三沢基地に一時的に展開している米海軍第209電子攻撃飛行隊所属機で、部隊名「スターウォーリアズ」にちなみ尾翼にダース・ベイダーが描かれている

 

最注目機となったNASAのWB-57F気象観測機。原型は1949年に初飛行したイギリスのジェット爆撃機キャンベラである

 

米空軍兵士による“追い出し”にも注目

 

 三沢基地航空祭では、航空機以外でも楽しめるポイントがある。それが米空軍兵士による「追い出し作業」だ。これは航空祭終了時間になると訪れる。航空祭終了を告げながら米空軍兵士が横一列になって来場者を出口方向へと誘導するのだが、これが米空軍兵士の装備品を撮影する絶好のチャンスとなる。
 ただし、この追い出しが行なわれるということは、本来のオープン時間を過ぎているため、いつまでも居座るのではなく誘導に従って素直に退場しよう。必要以上に居座っても決して良いことはない。また、終了間際だからといって、展示機の周りにある柵を倒すのもやめよう。こうした行為は航空祭の開催そのものを危うくさせる行為で、誰の得にもならないのだ。一般公開イベントは「見せてもらっている」という謙虚な気持ちを忘れなければ、見せる側もよりサービスしてくれるかもしれないのである。

 

三沢名物となった追い出しをする米空軍兵士たち。追い出しとはいえ強い口調ではなく、笑顔を交えながら帰宅を促している

 

M4A1にはAimpoint CompM5やAN/PEQ15を装備し、腰のホルスターにはSIG SAUER M17を収めている

 

追い出し要員の中には銃器を持たない兵士もいて、陸軍や海兵隊よりは控え目に思えた。武器を携行してのイベント警備は、軍事施設という側面から考えれば妥当だと考えるが、現状の自衛隊では難しいだろう

 

Text&Photos:武若雅哉

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年12月号 P.206~209をもとに再編集したものです。

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