2022/04/26
【実銃】法執行機関向けスナイパーライフルの魅力を知る「BADGER ORDNANCE M134 CPR」
法執行機関が使用する狙撃銃の魅力
ミリタリーにおけるスナイパーの役割は多彩かつ過酷で、近距離から超遠距離まで、悪条件下でも正確な一撃を送り込む能力が不可欠だ。そのためミリタリースナイパーライフルは精度、威力はもちろん、堅牢さ、メンテナンス性も重視した構造になっている。ではそれに対してLE向けのスナイパーライフルはどのようになっているのだろうか。今回はLEスナイパーライフルである「BADGER ORDNANCE M134 CPR」
をピックアップした実銃レポートを公開しよう。
LEスナイパーライフル
LE機関にもSWATなどのスペシャルユニットがあり、必ずといっていいほどスナイパーチームが設置されている。スペシャルユニットそのものの設置は1960年代まで遡ることができるが、実際の出動回数が増えていくのは1980年代から90年代に入ってドラッグ関連の凶悪犯罪が激増したころである。スナイパーユニットが使用するライフルも、当初はハンティング用ボルトアクションに低倍率のスコープを載せただけのものだったが、犯罪の多様化、重武装化につられるようによりミリタリー色の強い、高性能ライフルが求められるようになっていった。ただし、ミリタリーシチュエーションとの大きな違いは、その射程がはるかに短いのと、ターゲットを貫通した弾頭が及ぼす2次被害の存在である。
LEスナイパーには弾道学から弾頭の形状など、ミリタリーが持つ膨大な情報を基にその装備や弾薬が選ばれてきたという歴史がある。しかし、現実を考えてみるとSWATスナイパーが経験するターゲットまでの距離は、最高でも数百ヤード、実際の統計を見てみると、そのほとんどは100ヤード以内に収まっているのだ。つまり.338ラプアマグナムなどの威力の高い口径ではターゲットを貫通した弾頭が後ろの壁まで貫通し、一般人にまで被害を与えてしまうという可能性も考慮しなければならない。そこで昨今では、使用弾薬は必要充分の威力と、これまで積み重ねた膨大なデータがある.308ウィンチェスター(7.62mm×51)を優先し、LE独特の有効射程と精度、そして取り回しの容易さを考えて、ショートバレルドボルトアクションライフルに注目が集まっている。
BADGER ORDNANCE
M134 CPR
- 使用弾:.308ウィンチェスター
- アクション:BO M2013ショートアクション
- バレル:Bartleinミディアムパルムプロファイル 14.25インチ
- ストック:BOマナーズ・ショートカーボンファイバー
- トリガーガード:BO M5
今回撮影させてもらったバジャーオードナンスM134 CPRは、ショートバレルドボルトアクションライフルの中でも最先端を行くもので、その銃身長はなんと14.25インチしかない。ストックにはマナーズと共同開発した、バットストックをこれでもかと切り詰めて軽量化と全長の短縮化を図ったオールカーボンファイバーストックを装備。その重量はオプティクスなしで9.3ポンドと軽く、精度を犠牲にしない範囲での軽量化を達成している。
ただしここで個人的に衝撃的な出来事があった。今年(2022年)のショットショーにおいて、バレットのブースに17インチカーボンファイバーラップド(ステンレスの極細バレルにカーボンファイバーを蒸着させたもの。軽い)バレルを発見してしまったのだ。その重量はストックモデルより2kgも軽いときた。つまりMRADのオーナーなら、バレルさえ手に入れば10ポンドほどの.308ウィンチェスターから.338ラプアマグナムまで撃てる高性能ボルトアクションライフルを手に入れることができるのだ。ただし、そのお値段は軽く1万ドルを超え、それなりのオプティクスと組み合わせれば2万ドルもすぐそこということになってしまう。夢のまた夢というのは、こういうことなんだろうなあ。
Text & Photos:Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2022年4月号 P.98~105をもとに再編集したものです。