実銃

2022/01/24

【実銃】MP5を再現したクローンを撃ってみた

 

無数のパーツで再現したMP5クローン

 

 1966年に登場した9mm×19口径のSMG(サブマシンガン)、H&K MP5はその性能の高さで人気を博し、世界40カ国以上の軍および法執行機関で採用されている。ファイアパワーの面で勝るアサルトライフルが台頭してきているとはいえ、MP5の信頼性と精度の高さが揺らぐことはない。今回はその実力を検証すべく、民間人も入手できるMP5A2とMP5K PDWのクローンを用意した。

 


 

 

SMGのスタンダード

 

 今さら言うまでもないが、H&K MP5は第一線の特殊部隊が、軒並み採用してきたことで知られている。アメリカでは海軍のSEALsや陸軍のデルタフォースといった軍の特殊部隊や法執行機関のSWAT、イギリスではSAS、ドイツではGSG-9、そして日本でも警察SATや銃器対策部隊、海上自衛隊のSBUなど、登場から50年以上を経たベテランながら世界で圧倒的な支持を得てきたSMG(サブマシンガン)のスタンダードだ。

 MP5のメカニズムで注目されるのが、1950年代に.308口径バトルライフル(G3)用にデザインされたローラーディレイドブローバック方式を採用したことだろう。この方式ではクローズドボルトの状態から撃発を始め、射撃精度が高く反動もマイルド、という優れた特徴を備えていた。1966年に生産が開始され、西ドイツ(当時)の法執行機関、さらには軍の特殊部隊等に採用されたものの、そのオーバークオリティともいえるスペックゆえに高価で、より安価でバトルプルーフ(実戦を経て実証)されたライバルのUZI SMGなどにマーケットを奪われ、国外への普及はしばらく進まなかった。だが、数多くの事件でMP5が活躍した影響により、MP5は西側諸国の軍や法執行機関の特殊部隊へ急速に浸透していくことになる。

 

MGの凋落とアサルトライフルの台頭

 

 筆者が在住する米国でも1980年代に入って、SWATを擁するPD(ポリスデパートメント=警察)がMP5を採用する例を数多く見るようになった。しかし、このピストル口径のSMGの存在を根底から覆す事件が起きてしまう。それが2,000発以上の実弾が飛び交った凶悪事件として知られる、1997年の「ノースハリウッド・シュートアウト」だ。犯人はフルオートのAK47(7.62mm×39)やHK91(7.62mm×51)、さらにはM4スタイルカービン(5.56mm×45)など、拳銃弾に比べ貫通力の高いライフル弾を発射できる銃器を使用。さらに、そのうち2名はボディアーマーを着用していた。これに対抗するポリスオフィサーたちが持っていた.38スペシャルや9mm×19のハンドガン、それにショットガンといった標準装備では、ファイアパワーの面でも劣っており、まともに制圧することはできなかった。

 それ以降、拳銃弾を用いるSMGの威力不足も取り沙汰されるようになってしまった。そして、米ポリスオフィサーの装備は劇的な変化を見せ、ほとんどのパトロールカーにはAR15ライフル(M4のセミオートバージョン)が装備され、SWATチームには短銃身のM4フルオート仕様の導入が進んでいった。

 とはいえ、MP5が犯罪などの抑止力として機能してきたことは、揺るぎようのない事実であり、米国の民間銃器市場においても人気は高い。現在米国には世界中で製造されたMP5パーツが氾濫しており、パーツを買い集めることで比較的簡単に1挺のMP5を組み上げることができてしまう(もちろん、シリアルナンバーを持つフレームは登録が必要だ)。というわけで今回は純正品ではなく、いわゆる「MP5クローン」を準備してもらった。

 

 

Heckler & Koch MP5A2

  • 口径:9mm×19
  • 全長:680mm
  • バレル長:225mm
  • 重量:約2,540g
  • 装弾数:10/15/20/30発

※スぺックはH&K製MP5A2のもので、参考値です。

 

 アッパーレシーバーにはマウントレールがなく、時代を感じさせる部分だ。RDS(レッドドットサイト)など光学照準器を搭載するにはCRAW MOUNT(クローマウント=爪をレシーバーの突起に引っ掛けて着脱できる)が用いられていたが、後に固定するタイプのロープロファイルマウントも登場している。ロアレシーバー(グリップやトリガー周りも含む)はポリマー製で、トリガーユニットも含めてトリガーグループとも呼ばれる。このSEFロアレシーバーはグリップがストレートタイプのサードパーティ製品で、エルゴノミック形状のグリップを持つ純正ロアレシーバーとは異なる。

 SilencerCo製Octane 9 HDサウンドサプレッサーを装着すると発射音は効果的に抑制され、屋外での射撃ではイヤプロテクションなしで撃つことができる。

 

サウンドサプレッサーを装着して撃っているので、マズル周りにかなりのカーボンがこびり付いている

 

ドラムタイプの回転式リアサイトは上下左右、距離のアジャストが可能。ドラム部分を引き上げるとロックが外れ、回すことができ、4種類の距離に対応可能

 


 

 

Heckler & Koch MP5K PDW

  • 口径:9mm×19
  • 全長: 368mm/603mm(ストック展開時)
  • バレル長:148mm
  • 重量:約2,530g
  • 装弾数:10/15/20/30発

※スぺックはヘッケラー&コック製MP5K PDWのもので、参考値です。

 

 こちらのMP5K PDWクローンは完成したてで、まだアッパーレシーバーやコッキングチューブ周りが塗装されていない。未塗装のアッパーレシーバーやコッキングチューブ周り、フロントサイト周りはスチールの地金表面が剥き出しで、溶接跡もはっきりと分かる。また、アッパーレシーバー上にピカティニーレールを直接溶接し、各種光学サイトに対応させている。米国ではMP5の各種パーツや組立キットが販売されており、ガンスミスの技術をある程度持っていれば1挺組み上げることができる。

 

ストックを折り畳んだ状態。ストックはCHOATE TOOL CORP製だ

 

マガジンハウジング付近にあるアッパーとロアレシーバーを結合するピンを抜くと分離できる。ここまでが通常分解だ

 


 

 MP5クローンのより詳しい解説は月刊アームズマガジン2021年12月号に掲載されている。そちらも確認していただければ幸いだ。次回はこれらを実射したレポートを公開するので、そちらもご覧いただきたい。

 

Text & Photos:Hiro Soga

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年12月号 P.84~91より抜粋・再編集したものです。

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