2022/04/25
【実銃】軍隊向けスナイパーライフルの魅力を知る「Spartan Precision Rifle “California Drought”」
軍隊が使用する狙撃銃の魅力
スナイパーライフルといえばアメリカ海兵隊が1966年に採用したM40と、アメリカ陸軍が1988年に制式採用したM24がまず頭に浮かぶ。アメリカにおける現代のスナイパーライフルは、これらレミントンモデル700をベースとしたボルトアクションライフルから発展を遂げたといっても過言ではない。今回はこのミリタリースナイパーライフルである「Spartan Precision Rifle “California Drought”」をピックアップした実銃レポートを公開しよう。
USミリタリースナイパーライフル
2014年にリリースされたクリント・イーストウッド監督による映画『アメリカン・スナイパー』は衝撃的な作品だった(注:日本公開は15年)。主人公である実在の人物クリス・カイルの足跡もさることながら、次から次へと登場する実際にSEALsチームが使用していた装備に圧倒されてしまったからだ。筆者にはUSMCに所属し、実際にイラクやアフガニスタンに派遣されスカウトスナイパーを務めた友人がおり、彼からはスカウトチームが使用していたライフルの一部の詳細は聞いていたが、さすがにSEALsともなると多彩な高精度ライフルを使いこなす様が絶妙に描かれていた。
『アメリカン・スナイパー』に触発され、その後SEALsスナイパーの使用ライフルを調べてみたものをリストにしてみよう。
- MK12 SPR
スペシャルパーパスライフル、5.56mm×45、18インチバレルの高精度M16ベースモデル - M40A3もしくはM24A3
海兵隊のM40はショートアクションの7.62mm×51用だが、同系モデルで陸軍に採用されたM24はロングアクションを採用していたため、.300WinMagや.338ラプアといったより強力な弾薬へのコンバートが可能だった - MK11
7.62mm×51、20インチバレルのナイツアーマメント製AR-10ベースセミオート - MK13
.300ウィンチェスターマグナム、26.5インチバレル、レミントン700のアクションにカスタムバレルを組み合わせたAI(アキュラシーインターナショナル)の“AICS”シャーシシステムを搭載したスペシャルモデル - McMillan TAC-338
.338ラプアマグナム、26.5インチバレル、マクミランが作り上げた遠距離用ボルトアクションライフル - MK15 Mod.0
.50 BMGのマクミラン製ボルトアクションライフル。29インチバレルの重量は約12kgある。3,540mの最長スナイパーキルを成し遂げたライフルとして知られている - M82
.50 BMGのバレット製セミオートライフル。海兵隊では現在も改良版のM107が使用されている
ミリタリーにおけるスナイパーの役割は多彩かつ過酷で、近距離から超遠距離まで、悪条件下でも正確な一撃を送り込む能力が不可欠とされる。よってスナイパーライフルに求められるのは狙撃の精度と威力だけでなく、戦場で携行することを前提とした堅牢さとメンテナンス性の高さも重要となってくる。また、上記のリストからもわかるように、ミリタリースナイパーライフルはそれぞれ違う口径を持ち、用途に合わせて適宜使い分けられている。
最新の情報として、アメリカ陸軍および海兵隊はバレットの“MRAD(マルチロールアダプティブデザイン)”を次期スナイパーライフル“Mk22”として制式採用を決め、2021年度から納入が始まっている。このMK22モジュラーシステムは、1挺のキットに7.62mm×51、.300 ノルママグナム、.338 ノルママグナム口径のバレル、ボルトヘッドが同梱されており、1ピースアッパーレシーバーの2本のボルトを緩めるだけでバレルが交換できる。あとはボルトヘッドをスワップするだけで口径の変更が可能だ。このMK22システムのポテンシャルは高く、現行スナイパーライフルのことごとくに置き換わる可能性を秘めている。
さて今回紹介するのは、典型的なミリタリー仕様ともいえるスパルタンプレシジョンライフル(Spartan Precision Rifle)の25インチバレルカスタムモデルだ。
Spartan Precision Rifle
“California Drought”
- 使用弾:.260レミントン
- アクション:Defence Machine
- バレル:Bartlein 25インチ 1:8 Twist
- ストック:Manners Composite Stock MCS-T2A
- トリガーフレーム:BO(Badger Ordnance)M5
ミリタリースナイパーライフルとしての魅力をたっぷりと詰め込んだライフル。これに対してLE向けのスナイパーライフルは果たしてどんな魅力を秘めているのだろうか。次回はそのレポートも公開しよう。
また月刊アームズマガジン2022年4月号ではより詳しくレポートを掲載しているのでそちらもご覧いただければ幸いだ。
Text & Photos:Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2022年4月号 P.98~105をもとに再編集したものです。