2022/04/26
【実銃】近距離狙撃銃「B&T SPR 300 PRO」の実力と用途
近距離狙撃の意味とは?
近距離狙撃銃「B&T SPR 300 PRO」はSPR300を改良し、質実剛健な銃として完成させたスナイパーライフルだ。そのデザインは前回紹介したが、実力が伴っていなければ狙撃銃としての魅力はない。今回はその実射レポートを公開しよう。
SPR 300 PROの実射
B&TはSPR 300 PROを150メートル(165ヤード)までの狙撃任務に最適であると推奨している。 そこで、SPR 300 PROが亜音速弾薬をどれほどの命中精度があるかを確認した。筆者にとっては何度も行なった作業なので、再確認ということになる。今回、再度命中精度を意識して撃ってみたところ、100mで3cm強のグルーピングだった。これは前回(約5cm弱)より明らかに小さいグルーピングだ。SPR 300 PROになって微調整可能なストックと、Timney製マッチトリガーのアップグレードが、命中精度向上に大きく貢献しているのは疑いの余地がなかった。しかも慣れ親しんだレミントンM700用のトリガーなので、同じトリガーを搭載したM700狙撃銃から持ち替えた時に、混乱を最小限に抑えられるという利点もある。
そしてバレルをへーネルに外注し、より精密な銃身を搭載したことも大きい。やはり餅は餅屋というか、精密銃身を専門に製造している会社に一日の長があるのだろう。B&Tのいいところはエゴがまったくなく「製品は基本的に自社製だが、製品のパフォーマンスが上がるのなら喜んで外注して教えを乞おう」という姿勢にある。正直、筆者は初期型SPR 300のグルーピングに満足していなかった。100mで5cmもグルーピングがあった場合、実際に狙撃銃として使用するにはクエスチョンマークがついてしまう。だが今回の改良によって、その名のとおりプロが使うツールに成長を遂げたと言っていい。
SPR 300 PROの用途
ではSPR 300 PROの用途とは一体何だろう。150m以下の至近距離で狙撃する状況などあるのだろうか。まず警察関係だが、多くの場合というかほとんどの場合、狙撃手が配置されるのは標的までの距離が150m以下である。現場と周辺を封鎖し、報道規制を敷くわけだから当然である。友人の警察狙撃手の話では、容疑者が立て籠る部屋の窓まで25m程度の距離だったこともあったという。これは国土面積が広い米国の話だ。日本や欧州などではなおさらだろう。
2022年1月27日の夜9時に発生した埼玉県ふじみ野市の住宅で猟銃を持った男が医師を人質にとって立て籠った事件は記憶に新しい。このような状況下では警察は付近を封鎖し、狙撃チームは容疑者に対して可能な限り近い距離に陣取ることができる。必然的に距離は100m以下となり、時には50m程度かそれ以下となる場合もあるだろう。このような状況下こそまさにSPR 300 PROがそのポテンシャルを120%発揮できる。
まとめ
「狙撃銃と言えば長距離を狙撃する武器」という固定観念があるが、実際には「至近距離からの狙撃」という観念・状況も多々あるということをここで再確認しておきたかった。誤解を避けるために再度言うが「SPR 300 PROは、現在部隊の武器庫にある狙撃銃に取って替わるものではない」ということだ。あくまで至近距離での狙撃をカバーする、サプリメンタルな狙撃銃である。もちろんSPR 300 PROが武器庫になくても部隊は任務を遂行できるかもしれないが、あれば手が多くなり選択肢が増え、事件を解決する可能性が高くなるのは疑いの余地がない。すべての軍・警察の部隊にお薦めしたいのが、このSPR 300 PROである。
より詳しいレポートは月刊アームズマガジン2022年4月号に掲載しているので、気になった方はそちらも参考にしていただければ幸いだ。
TEXT:飯柴智亮
PHOTO:飯柴智亮、B&T
この記事は月刊アームズマガジン2022年4月号 P.82~89をもとに再編集したものです。