実銃

2022/04/25

【実銃】近距離限定のスナイパーライフル「B&T SPR 300 PRO」

 

150m以下の狙撃を行なう銃

 

 狙撃銃と言えば、可能な限り遠距離を狙うのが一般常識だ。だが常識が存在すれば、非常識も存在する。長距離は狙えず、150m以下の至近距離のみを狙う狙撃銃も世の中には存在する。今回は近距離限定の狙撃銃、B&T製SPR(Special Purpose Rifle)300 PROの紹介レポートを公開しよう。

 


 

 

.300ブラックアウト弾薬

 

 SPR 300 PROは、.300ブラックアウト弾を使用する。あまり聞きなれない弾薬だが、まずは基本知識を確認してみよう。.300ブラックアウトは7.62mm×35とも呼ばれ、米国のAdvanced Armament Corporation(AAC)によって開発された弾薬である。細かい説明は長くなるので省略するが、一言で言うと「AK47の弾頭(7.62mm×39)と、5.56mm弾薬のケースを結合させた弾薬」と表現することができる。ではなぜそのようなことをしたのかと言うと、亜音速で最大のエネルギーを標的にプロジェクトするためだ。この「亜音速で」というのがもっとも重要だ。重い弾丸を使用し、ケースが小さくパウダーの量が少ないため、.300ブラックアウト弾頭はサプレッサーとの併用で最大の消音効果を発揮する。亜音速でサプレッサーを通って発射された重い弾頭は、空気を切り裂く音を発せずに標的まで飛翔することができる。結果、150m以内の近距離における狙撃に最適な弾薬である。

 

 

SPR 300 PRO

 

 それではまず、SPR 300 PROの基本データから見てみよう。

 

  • 9.92インチ(250mm)バレル
  • 1:8 ツイスト Cold hammer-forged ヘーネル製バレル
  • 重量:8.53lbs(without optic)
  • 全長:39.37in Stock Open, 30.86in Stock Folded
  • 色:黒もしくはタンカラー
  • 定価:$5,170

 

 SPR 300 PROのキットには、以下のシステムでユーザーに提供される。

 

  • SPR 300 PRO ライフル本体
  • サプレッサー(121db)
  • 30mmプレシジョン・スコープリング
  • スコープはシュミット&ベンダー製、Kahles製、シュタイナー製の3種から選択可能。他社のスコープも搭載可能
  • NVD フロント・レール・エクステンション
  • Lancer製10発マガジン(2本)
  • QDポリマー製バイポッド
  • クリーニングキット
  • ロープロファイルナイロン製専用ケース
  • Bottom NAR rail-on housing
  • 2点スリング push button QDスイベル付き

 

 SPR 300 PROを手にしてまず感じるのがその重量だ。スコープなしで約4kg強なので「軽い!」というのが第一印象だった。そして特筆すべきはそのコンパクトさだ。ストックを折り畳めば、さらにコンパクトになる。銃器に限らず武器というのは、性能が同じならば軽くて短いほうがいいに決まっている。通常、狙撃銃とは重いので、こういった点でもいかにSPR 300 PROが特異な狙撃銃であるかがわかる。

 

SPR 300 PROはボルトアクション方式で、給弾は脱着式マガジンで行なわれる。装弾数は10発。スコープはドイツ・シュタイナー製の専用ショートスコープが搭載されている。両サイドにはピカティニーレールが搭載され、各種光学照準器やウェポンライトなどが搭載可能

 

SPR 300からSPR PROへの改良点はいくつかあるが、大きなところはストックだ。旧式のストックはチークピースの上下や前後の調整ができなかったが、使用者の指摘を受けて即座に改良。グリップもAR15プラットフォームのグリップが着用可能になった。そしてTimney製とのコラボにより、同社製のレミントンM700用マッチトリガーが搭載された。同社製のマッチトリガーは射手の好みや状況によって1.5−3パウンドで調整可能。ストックもAR-15タイプのストックを装着が可能

 

SPR 300 PROを手にした筆者。見てのとおり狙撃銃としてはかなりコンパクトな部類に入る。ストックを折り畳めばさらにコンパクトになる。とにかく軽く取り回しが容易な点がユーザーにとって何よりありがたい。そして言うまでもなくJumpable(空挺降下可能)である

 

SPR 300 PRO専用キャリーケース。SPR 300 PROは、ゼロイングを失わずに分解してこのケース内に収納することが可能だ。これはメディアなどの目を避けて狙撃手を配置したい状況などにおいて非常に有効だ。ケースのデザインはロープロファイルでサイズも小さく目立たないため、知らなければ中に分解された狙撃銃が収納されているとは誰も思わない

 

 近距離狙撃に特化したスナイパーライフル「B&T SPR 300 PRO」。この銃については月刊アームズマガジン2022年4月号で詳しく掲載されているので、そちらも併せてご確認いただきたい。次回はこの実銃の実射レポートを公開しよう。

 

続きはこちら

 

TEXT:飯柴智亮

PHOTO:飯柴智亮、B&T

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年4月号 P.82~89をもとに再編集したものです。

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