2018/12/12
REALGUN REPORT SIG551A1/SHIN【2019年1月号掲載】
スイス生まれ、米国育ちのSG550のカービンモデル
シグザウエルと聞くと読者の多くはスイスの会社と思われると思うが、現在本社は米国のニューハンプシャーにある。SIGのスタートは1853年にさかのぼり、スイスの防衛省に30,000挺のマスケットライフルを納品したことから彼らの銃器ビジネスがスタートしている歴史ある会社だ。1970年代に入り、ドイツのSauer&Sohn(ザウエル&ゾーン)とのベンチャーにより9mmパラベラム口径、ダブル&シングルアクションのオートマチックピストルP220を開発、成功を収めている。現在の「シグザウエル」の名称はここに由来している。
スイス軍用ライフルとしてそれまで採用されていたSG510と置き換えるため、SG540をベースとし、改良を加えたものがSG550であり、1986年に生産がスタートし、1990年にスイス軍にStgw90として制式採用されている。現在までに600,000挺が生産され、スイス軍への納入は完了している。SG550はガスオペレーテッド、ロングストロークピストン作動、ロテイティングボルト閉鎖を持つ、セミオート、バースト、フルオート切り替えのアサルトライフルであり、400mまでの射程を誇る。SIG550の14.3インチ短銃身モデルがSG551であり、さらに短くした8.9インチ銃身モデルがSG552コマンドモデルである。ここで取り上げるSIG551A1は、SG556をベースにシグザウエルが民間及び法執行機関向けにニューハンプシャーのファクトリーでアップデートし、製造した米国製モデルである。
20連、30連のマガジンがそれぞれ2本ずつ。マニュアル等最小限のアクセサリーが付属している
SG551A1はシグザウエルが米国市場向けに開発したSG556をベースに、よりオリジナルのSG551を再現するために新たに製造したモデルである。ロアレシーバーはアルミ削り出しとなっており、オリジナルのSG551と比べ大幅な軽量化が行われている
SIG551A1は米国の規制により、民間人が許可なく所持できるライフル銃の最短銃身である16インチとなっている。そのため、16インチ銃身にバートケージ型のフラッシュハイダーの組み合わせとなっている
シグザウエルによるSIG551A1の誕生には背景がある。SG551は2000年頃、米陸軍特殊部隊デルタフォース、海軍特殊部隊シールチームの一部によって限定的に特殊作戦において使用されていた。5.56mmNATO弾を使用する、信頼性が高く、精度の高い、折りたたみストックを持つアサルトライフルを求めていた彼らは、当時存在していた様々なアサルトライフルをテストしていた。その中にSG551も含まれており、彼らは米国シグザウエルに対して、米国製のSG551の製造を求めるとともに、様々な改良点を伝えていた。これがSG551をベースとしたSIG556である。
トリガー後部に見えるスクリューはオーバートラベルストップに見えるが、実はセカンドステージの重さを調整するためのテンショナーである。国民皆兵のスイスでは男性の大多数は予備役軍人である。そのため、技術を保つために軍用ライフルを使った射撃競技が盛んに行なわれており、射撃場ではトリガーを軽くすることで撃ちやすくし、実戦では重くして安全性を高めることができる構造となっている
シグザウエルは要請に応じてアルミ削り出しロアレシーバーによる軽量化、伸縮式ストック、M4と共有できるNATOスペックマガジン、アクセサリーレールの追加が行なわれたSIG556が完成、デルタフォースの評価を得るためにサンプルが提出されたが、サプレッサー使用時にガスポートプレシャーの上昇によって起こるボルトキャリアの後退スピードの増加によるチャージングハンドルの脱落という問題が発生。同時にH&KがHK416を完成させ、すでに配備されていたM4のアッパーレシーバーと交換するというリーズナブルな解決策を提示したために、シグザウエルのSG551及びSIG556の米軍特殊部隊への配備は立ち消えてしまった。しかしこの時の経験が後の米国シグザウエルの独自開発した軽量、小型、消音カービンであるMCXの開発、成功へと繋がっていくのである。
SG550シリーズはアジャスタブルガスレギュレーターを備えている。銃が汚れて作動に抵抗が生まれた場合に、レギュレーターを調整してガスをより多く流入させることで作動させる。カートリッジを使い、ガスレギュレーターを少し回転させると取り入れるガスの量が2段階で調整できる
SIGはSG540において、SG530の問題点であったガス作動、ローラーロック閉鎖という複雑な機構から離れ、旧ソ連のAK47を参考としたシンプルなロングストロークガスピストン作動、ロテイティングボルトによる閉鎖を採用した。SIG551A1のアッパーレシーバーは閉鎖機構の要となるロッキングラグとバレルの取り付け基部からなるスチール製のトリニオンをスチールプレスパーツで包み、溶接で繋ぐことで構成されている。AKのロアレシーバーの構造はトリニオンとスチールプレス(モデルによってはスチール削り出し)のレシーバー本体とピンとリベットで繋ぐことで構成されている。レイアウトは上下が逆となっているが、大まかには構造的に近いものがあり、SIG550シリーズがAKを参考にしてデザインされていることがわかる。
AK47を参考としたSG540からの流れを汲むSG550、SIG550A1。AK47(AKS47 /ルーマニア製)との比較。外観からはわからないが内部のデザインは非常に似通っている
本誌では詳細な類似点についても述べた。たとえば写真は上がSIG551A1のボルトキャリア、ガスピストン、ボルト、チャージングハンドルを組み合わせた状態。下がAK47のボルトキャリア、ボルトだ
SG550の登場と同時期に開発が進められていた89式小銃は、独特のガスチューブを併用した軽量化された改良型ロングスロトークガスピストンシステムを採用し、SG550に近い構造のガスチューブ、ガスレギュレーターのレイアウトを持っている。SG540やSG550が89式の開発に影響を与えたのかもしれないとも思える。
今回もシューティングインプレッションを行った。アサルトライフルとして充分な重さを持ちながらキレの良いトリガーと、スムーズで確実な作動を見せる。セレクターやマガジンキャッチ等の操作性も良い。その詳細はぜひ本誌記事をご参照いただきたい
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は2019年1月号 P.78~85より抜粋・再編集したものです。