2018/12/06
CZジャーナリスト・リユニオン・レポート!ハンドガン&SMG編【2019年1月号掲載】
公開解禁!! ハンドガンの最新作をインプレッション含めて一挙紹介!!
先月号に引き続き、チェコのCZが世界中の銃器ジャーナリストを集めて行なった3日にわたる大イベントをレポート! 第二弾ではCZ ShadowのニューモデルやスコーピオンEVO3の2019モデルを一気に紹介。CZの現在そして未来がここにある!
ジャーナリスト・リユニオン 第2弾
チェコ共和国のウヘルスキー・ブロドとその周辺の陸軍の射撃場ブゼネツで9月11日から3日間行なわれたCZワールド・ジャーナリスト・リユニオン。前号ではアサルトライフルとスナイパーライフルを中心にお伝えしたが、今回はその第2弾としてピストルを中心にお伝えする。今回のイベントはCZ UBの製品を実際に射撃をして紹介するもので、その中には2019年モデルも含まれていた。特にピストルがそれに当たり、11月15日まで公にしないで欲しいというCZ側の意向を尊重し、今月号まで紹介を遅らせた次第である。
ベストセラー CZ Shadow2
CZ Shadow ORANGE
CZ Shadow2は商業的な成功を収め、現在どこの銃砲店にも在庫はなく、再入荷時期も未定という状態が続いている。このShadow2もバリエーションを増やし、CZ Shadow ORANGEがラインアップに加わった。このORANGEはバレルブッシングを使用し、バレルのブレを減らしてアキュラシーを向上させたモデルとなる。CZのORANGEシリーズは、ベーシックモデルをさらにブラッシュアップした、より強力なスポーツモデルに与えられる名称だ。
CZShadow2 OR
このほか、従来モデルに、シングルアクションオンリーのタクティカルスポーツと、ドットサイト&コンペセイターを備えたオープンディビジョン用のチェックメイトがあるが、この2種もぜひShadow2ベースでラインアップに加えて欲しいものだ。特にタクティカルスポーツはシングルアクションオンリーにしたことで、トリガーフィーリングが抜群になる。マイクロドットサイトが装着可能なCZShadow2 OR(オプティカルレディ)も展示されていたが、すでに何度か本誌に登場しているので、詳細はバックナンバーにて確かめていただきたい。
マイナーチェンジの善と悪
今回の一番のニュースはCZ P-10 F(フルサイズ)だろう。CZ P-10 CはCZとして初のポリマーフレームを採用したストライカーファイアピストル。市場調査を行ない、もっとも需要のあるコンパクトサイズを選考して登場させたモデルだ。100人以上のチェコ陸軍兵士の手をスキャンし、その平均に合わせたサイズのグリップは、標準的な大きさの手であれば、これほどフィットするものはない、というほどに完成度が高く、フランスの精鋭対テロ部隊GIGNが採用したことでも話題となった。今回はその成功に合わせてフルサイズを投入してきた格好である。
左が従来のCZ P-10 C。右がフルサイズのCZ P-10F(「F」はフルサイズの意)。サイズの違いに注目いただきたい
射撃場には現行モデルのCZ P-10 Cも置かれ、撃ち比べを堪能できたのだが、実はこのモデルにもマイナーチェンジが施されていた。並べてみても分かりにくいが、マガジンキャッチに変更が加えられているのだ。現行のCZ P-10 Cはアンビで、左右どちらからでもマガジンキャッチを押してマガジンを外すことができた。ところがその機構のためやや重くなった。そこで、CZでは、一般的な左右選択式に戻したのだ。同様のフィードバックから、位置もやや高くした。つまりフレームから設計を見直したのだ。
CZ P-10 F(上)はスライド、バレル、グリップがコンパクトモデルに比べて延長され、初速も向上している。CZ P-10 C(下)はマガジンキャッチが左右選択式となるマイナーチェンジを受けた。従来のアンビタイプはやや重く評判が良くなかったようでフレームもあわせて変更され、マガジンキャッチの位置も異なる
マガジンキャッチの位置の変更に伴い、マガジンのスリットもやや高い位置に設けられた。ところがこのマガジンキャッチの変更は、LE向けのモデルのみで、市販品は今まで通り左右からアクセスできるモデルがそのまま続投されるという。そのため現行マガジンには上下2カ所にスリットが設けられている。スリット増加の見た目の問題はさておき、どちらか一方が余分な穴となる事で、埃や泥等がマガジンに混入する確率を上げ、銃の性能に対して負に作用する結果となった。そこまでしてもマグリリースボタンの位置を交換する価値はあったのか? 位置の変更をしないでシステムだけ交換できなかったのか? 疑問の残るところだ。これらの変更は、あくまでもマイナーチェンジの範疇で、モデル名に変更はない。いっそのことBREN2のように、改良型として新型をリリースしてしまっても良かったと思える。
EVO3実射インプレッション
市販モデルとして記録的な売上を伸ばしているSMGスコーピオンEVO3も、バリエーションを増やしてきた。バレルを104mmに短縮したコンパクトモデルCZ スコーピオンEVO3 S2 MICROだ。ショットショーで、CZ スコーピオンEVO3 S2Pistol Microとして発表された物と酷似するが、ストックをスタンダードなEVO3と同じものに換装している。
スコーピオンEVO3の従来モデル。発売当初のマガジンはフルロード状態で落下させるとリップが欠けるトラブルがあり、写真は改良版マガジンとなっている
バレルとハンドガードが短縮化され、サプレッサーも内蔵した EVO3 S2 MICRO。ストックは従来のものが付くが、折り畳めば本体に隠れるサイズなので、大きさは気にならないだろう
当日展示されたのはセミオートオンリーで、連射機能は搭載されていなかった。ストックを折り畳めば非常にコンパクトになる。そしてバランスは良くないが、スタンダードモデルのストックと同じにした甲斐があって、かなり撃ちやすい。何よりもショート化されたバレルにはサイレンサーが内蔵されている。マズル側から見ると分かるが、ほぼハンドガードいっぱいにバレルを囲む構造物が確認できる。これがサイレンサーである。このコンパクトさとサイレンサーが、CZ スコーピオン EVO3 S2MICROのキャラクターを明確にしている。スタイルも良く信頼性の高いEVO3。今後の展開に興味津々だ。
マズルから覗くとサプレッサーが付いていることが分かる。それだけでなく迫力のある面構えを魅せているのだ。また、発射音を小さくするだけでなくマズルフラッシュも抑える効果がある
CZの歴史は未来へ続く―
冷戦時代にCZ75で成功し、共産圏に属しながらも西側で評価されたCZは、21世紀になってもその歴史に恥じない製品作りを続けている。今回のイベント参加者は75名を超えたという。イベント名に「ジャーナリスト・リユニオン」とあるが、その参加者の中には元軍人や射撃のエキスパートから、銃の歴史や技術に詳しくとも射撃の腕はそれほどでもない一般のジャーナリストも多数含まれていた。それにも関わらず、射撃時のトラブル等は一切なかった。今までに積み重ねてきた自信が、このようなイベントを大々的に開くことができるCZの強みなのだ。限られた時間内で全員にすべてを見てもらおうとした結果、撮影時間が不足だったのは心残りだったが、2年前に比べて参加者数が倍増したことを考慮すれば仕方があるまい。
最終日の夜は、ボヘミアの伝統の香り漂うCZパーティでもてなされ、更けていった。次回はいつ開催されるかまだ不明だが、近い将来必ずあるであろうその機会に、CZらしい新製品をわんさか用意してもらい、再び我々を楽しませてくれることを今から願ってやまない。
TEXT & PHOTO:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は2019年1月号 P.90~97より抜粋・再編集したものです。