2021/06/24
【実銃】イラストでわかるグロック ~進化の歴史~
グロックとは
多くの成功を収めているグロックシリーズ。オーストリアのエンジニア、ガストン・グロック氏によってデザインされ、1982年にオーストリア軍および警察制式ピストル(採用名P80)に選ばれたのがスタートである。
グロックの特徴といえば、ポリマー製フレームと箱型のスライドの組み合わせにより、シンプル(発売当時は“醜い”と評された)なスタイルを持っている点だが、単純で信頼性の高いブローニングタイプのロックドブリーチ閉鎖とショートリコイル作動方式を組み合わせる事で、もっとも重要である高い作動の信頼性を確立していることを見逃してはならない。
さらに、射手が意識的に操作する必要のある手動式のマニュアルセーフティを持たず、独特な“セーフアクション”と呼ばれる、射撃するための一連の動きによってすべての安全装置が自動的に解除されるオートマチックセーフティを複数内蔵することで「引き金を引いた時以外には絶対に撃発しない」非常に高い安全性を確保していることも、グロックの先進的な特徴の1つだろう。
まだ40年の歴史も満たないグロックだが、この短い間に5世代にわたる進化を遂げている。こちらでは人気機種であるグロック19を例として、5世代の進化の歴史をイラストとあわせて解説していこう。
GLOCK Gen1/第1世代
1982年に完成したオリジナルグロック。シンプルなグリップテクスチャが特徴である。素材とデザインの特異さばかりが注目されるが、グロックの真価はシンプルな操作と高い安全性を両立した点にある。わずか34個の部品から構成され、生産性も高い。17連発のポリマー製マガジンも開発当時は特筆して多い装弾数であった。現在でも多くのメーカーがグロックに勝る製品を開発しようと努力しているが、配備の広さ、総生産数の多さから見ても、グロックに近い物は今の所生まれていない。
GLOCK Gen2/第2世代
1988年に完成。グリップの前後にアグレッシブな四角型のチェッカリングが追加され、滑りにくくされている。米国での販売に合わせ、フレーム内部にシリアルナンバーを打刻したスチール製のプレートが鋳込まれるようになった。リコイルスプリングアッセンブリーが、オリジナルの2ピースデザインから、1ピースデザインとなり、分解時に紛失する危険性を低減させた。また、マガジン内部に強化スチールプレートがインジェクションモールドされ、マガジンのふくらみを抑えるデザインとなった。
GLOCK Gen3/第3世代
1998年に完成。フレームダストカバー部分にウェポンマウントライト及びレーザーサイトを取り付けるためのアクセサリーレール「ユニバーサル・グロックレール」を追加。さらに、グリップ両側にサムレストが、グリップ前部にフィンガーグルーブが追加された点が外見上の大きな変化となっている。さらに、第3世代後期には、エキストラクターのデザインが変更され、チャンバー内の装填状態を確認するためのローデット・インジゲーターとしての役割も追加された。また、より高い砲圧を持つ.40S&W口径のバリエーションであるグロック22/23が増えたことで、ロッキングブロックが大型化され、それを固定するためのピンが追加された。
GLOCK Gen4/第4世代
2010年に完成。第3世代との混同を避けるため、スライドに「Gen4」の刻印が追加される。グリップは第3世代に比べると小型化され、バックストラップにサイズの異なるインサートを選択できるようになった。これにより射手はバックストラップからトリガーまでの距離を2mmずつ調整できる。マガジンキャッチは左右に入れ替えることができるようになり、あわせてマガジンのデザインも変更された(これにより第3世代までのマガジンは、マガジンキャッチを右側に入れ替えた時には使用できなくなった)。デュアルリコイルスプリングがすべてのモデルに採用され、発射時におけるフレームへの衝撃を軽減、耐久性が向上している。
GLOCK Gen5/第5世代
2017年に完成。FBIの次期制式ハンドガンプログラムの要綱にあわせて第4世代に改良を加えた「Mシリーズ」がベースとなっている(2017年よりFBIは、G17M及びG19Mを全面採用している)。第5世代では主に操作性向上と作動の安定化を図る大幅な改良が行なわれており、多くのパーツが前世代との互換性を失った。
また、マガジンウェル前面には半月形の切り欠きが復活、あわせてマガジンベースパッドの前部が延長された。これにより異物や作動不良でマガジンが詰まってしまったとき、指を押し込んで強制的にマガジンを排出することができる。これはFBIの要綱にあわせたものだ。スライドには「Gen5」の刻印が彫られている。
解説:SHIN
イラスト:ヒライユキオ
この記事は月刊アームズマガジン2018年10月号 P.62~63より加筆・再編集したものです。