エアガン

2021/05/23

稀代のガンスミス、クラレンスの名銃コレクション【ハンドガン編】

 

 エアガンの世界で、いまやもっとも名前の知られたガンスミスと言えるのが、香港を拠点に活動してきたClarenceクラレンス Laiライだ。これまでもアームズマガジンにて、何度かご紹介してきたが、一つ一つ手作りされる彼のカスタムはまさに芸術品。今回、彼は新たなブランド「CL PRODUCT DESIGN」を立ち上げることになった。そこで、今月はクラレンスの成功を祈って、改めて彼のカスタムを紹介していこう。

 


 

新天地での活動を決意

 

 

 コロナパンデミックが猛威を振るう直前の昨年2月、イギリスのバーミンガムでエアガンIPSC競技「AIRSOFT SURGEON CHAMPIONSHIP 2020」が開催され、その模様は本誌2020年5月号でもお伝えした。大会の主催者で筆者の友人でもあるクラレンス・ライは、名ガンスミスにして名シューターであり、アジアを中心に世界で活躍するエアガン業界のカリスマである。その彼が、活動拠点を香港から台湾に移すのだという。
 かつてイギリスの植民地であった香港は、中華人民共和国の一都市となった
後も一国二制度が適用される特別行政区となり、エアガン・ホビーも盛んだった。カスタムメーカー「AIRSOFT SERGEON(「エアガンの外科医」の意味)」のオーナーであるクラレンスはその牽引者であり、本誌でもたびたび彼の作品を紹介しているのでご存知の方もいるだろう。
 しかし、中国政府が反政府活動を取り締まるべく昨年6月頃に施行した悪名高き「香港国家安全維持法」は、香港の人々の自由を制限し同地のエアガン業界にも深刻な影響を与えた。このことは、ガンスミスとしての活動が制限されるばかりか命の危険をも感じさせることとなり、結局クラレンスは生まれ故郷を離れる決意をしたのである。
 この原稿の執筆時点では、彼は引っ越し準備に追われているところだが、香港から海外へのトイガンの持ち出しは禁止されているため、彼が作り上げてきたカスタムはもちろん、長年のコレクション(モデルガンやツヅミ弾時代からのエアガンも含め)も手放さなければならないという。そこで、その軌跡をたどりつつ応援する意味も込めて、クラレンスの作品をご紹介したいと考えたのだが、筆者の住むフランスの首都パリは、コロナの新規感染者増大に伴い3度目のロックダウンに突入。残念ながら直接撮影する
ことはかなわないため、彼の写真アーカイブから掲載させていただきたい。

 

INFINITY M1911 CUSTOM

 

 

 実銃の射撃トレーニングを自宅でできるように、というオーダーで製作されたシングルスタックのインフィニティM1911カスタム。東京マルイのM1911A1をベースにスライド、フレーム、アウターバレルをステンレス製として、実銃同様の重量と質感を味わえる究極のガスブローバックガンだ。作動を確実にするため、パワーソースはCO2となっている。ここまでくると、実銃以上の出来映えである。

 

エジェクションポートからは.40S&Wの刻印が覗く。一見してトイガンとはわからない完成度だ

 

GLOCK17 CUTAWAY MODEL/SIG SAUER P226 CUTAWAY MODEL

 

グロック17

 

P226

 

 香港では実銃は入手困難だが、モデルガンは入手できる。こちらのグロック17とP226のカッタウェイモデルは、リアルさで定評のあるタナカのモデルガンがベース。重要な部分を見せつつ、スライドやトリガーなど可動部の動きはそのまま維持。これにより、作動させながらメカの動きを目で楽しむことができる。

 

Vitaly Glock

 

 

 クラレンスがグロック愛好家としても知られるIPSC会長Vitaly Kryuchin氏のために製作したカスタム。VFCのガスブローバックがベースで、彼の好みからあくまでエレガントな仕上がりとなっている。ちなみに彼が蝶ネクタイ姿で2挺のグロックを操り、伴奏に合わせて射撃し音楽を奏でる動画は印象的だ。なお、IPSC競技のエアガンカテゴリーは、クラレンスがKryuchin氏に働きかけたことで実現したもので、大きな功績となった。

 


 

 さて、今回はクラレンスの作品のうち、ハンドガンをピックアップして紹介した。この他にも月刊アームズマガジン2021年6月号には彼のコレクションを掲載しているので、そちらもぜひチェックしていただければ幸いだ。
 また後編では彼のコレクションのうち、ライフルをピックアップしてご紹介していく。そちらもぜひご覧いただきたい。

 

後編は5/23 17:00公開

 

Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai) 

Photos:Clarence Lai

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年6月号 P.214~221より抜粋・再編集したものです。

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