2018/11/02
CZ World Journalist Reunion ~Vol.01~ BREN2 & TSR【2018年12月号掲載】
世界の銃器ジャーナリストが集結。CZの新作をインプレッション!
チェコが誇る銃器製造会社、CZが世界中の銃器ジャーナリストを集めて行なう3日にわたる大イベント、それが“CZ WorldJournalist Reunion” だ。その内容とは、軍の射撃場を貸し切り、夜間射撃からスナイパーライフル射撃まで、CZのすべてを満喫するいう贅沢なもの。そのレポート第一弾は .308Winを加えたBREN2とTSRだ!!
ヨーロッパはサマータイムのため、午後8時になってもまだ薄明るい。射撃の時間が来るまで用意されたバーベキューを頬張りつつ、世界中のジャーナリストやユーチューバーと親交を深めることができた
ジャーナリスト・リユニオン
ここのところCZは2年ごとに銃器関係のジャーナリストを招待し、自社製品を紹介するイベントを行なっている。その名も「ジャーナリスト・リユニオン」。筆者が参加した6年前と2年前の2回はヨーロッパ在住のジャーナリストを招待する規模だったが、今回は「ワールド・ジャーナリスト・リユニオン」としてアメリカからも多数のジャーナリストが招待された。
CZの所在地であるウヘルスキー・ブロドは、首都プラハから3時間半ほど東に行ったところにある。スロバキアとの国境にも近く、最寄りの空港は隣国オーストリアのウィーンだ。
初日はウヘルスキー・ブロドの射撃場に集合し、夜にはナイト・シューティングも企画された。周辺には民家もあるので日没にかかる午後8時から10時までという制限付きだが、ナイトビジョンやライトを使って野外で夜間射撃をする機会は貴重だ。
射撃場に野営して一泊し、翌朝からは改めてCZの製品を手にしての、実射体験などが行なわれた。
ステージは6ステージ。スナイパーライフル、スポーツピストル、ローエンフォースメント用ピストル、アサルトライフル、リムファイヤーライフル、そしてボディーアーマーなどの装備品に分かれている。
このイベントで初めて撃つことができたライフルがいくつかある。まず、BREN2としては初お目見えの.308Winモデル。そして、昨年プロトタイプが確認され今年のIWAで正式発表となったCZ初のスナイパーライフルTSRである。これらはBREN2のバリエーションと共に400mレンジで射撃した。
なお、今回はライフルを中心に、次号ではピストルをメインに据えて紹介していく。
BREN2 .308Win.とTSR
BREN2 .308Win.(写真奥)とTSR(写真手前)。アサルトライフルのカテゴリーとなるBREN2 .308Win.は、各部がアジャスタブルではないのでスナイパーライフルのTSRと比べてしまうと正確な射撃は難しいが、ライバルと言えそうなHK417と比べ軽く感じ、より扱いやすいように感じた
.308に対応したBREN2は、セミオートスナイパーライフルという位置づけだ。どちらかというと長距離ではなく、後方からの支援射撃などの用途に向けたもののようだ。HK417あたりがライバルになるのではと推察される。
試射で使ったカートリッジは、同じチェコの弾薬メーカーSellier & Bellot(セリエ&ベロ)のHPBT。光学照準器はEOTechのホロサイトに4倍率ブースターを組み合わせている。ターゲットはメタルのマンターゲット。この距離で狙うには少々大きくしかもプローン(伏撃ち)&バイポッド付きなので、まず外しようがない。
実際に撃ってみた印象としては、比較対象となるHK417よりも軽量で扱いやすいように感じられた。ここは後発の強みということだろうが、他社製品を研究し、より良いものを作り出そうというCZの努力が伺える。
続いてはTSRの射撃だ。同じ距離での射撃でも、TSR用のターゲットは直径20cmほどの円形メタルターゲット。スナイパーライフルらしく、24倍率(対物側56mm径)のスコープを装備している。ちなみにこのスコープも同じチェコのメオプタ製。射撃した感想としては、想像以上にトリガーが重いのが気になった。印象としては、ちょうどサービスライフルとマッチトリガーの中間あたりの重さだろうか。スナイパーライフルという触れ込みながらスポーツシューター向けも想定されているのか、どっちつかずの味付けになってしまっているように思えた。
CZ807
CZ 806 BREN2は.223Rem.のアサルトライフルとして2年前に登場したモデルである。登場してスグにCZ本社に乗り込んで試射をしたのを覚えている。コントロールしやすく、取り回しも良い、とても好印象なアサルトライフルだった。
BREN2はフランス最強の対テロ部隊であるGIGN(Groupe d'intervention de la gendarmerienationale:国家憲兵隊治安介入部隊)が採用したことで話題になったが、.223では不足と考えられたのかAKの弾薬7.62mm×39仕様のCZ 807が採用された。バリエーション展開に際し話題の.300Blackoutではなく、AKカートリッジをチョイスするあたりが何ともCZらしい。
この口径のモデルもバレルはスタンダードと同様に8インチ、11インチ、14インチをラインアップしている。当然ながら5.56mmよりも強力な弾を使用するため、ショートバレルモデルとしてはかなりリコイルが強めだが、これが14インチバレルになるとバランスが合うのか、まるで別物のように撃ちやすくなるから不思議だ。
AK弾(7.62mm×39)仕様のBREN2は、CZ 807と呼称される。撃ってみると5.56mm×45を使うBREN2と比べ、AK弾仕様のCZ 807はやや暴れん坊だ(写真は8インチモデル)。チェコがVz58でAKカートリッジを採用していたためか、.308Win.よりも先に開発された。このCZ 807はフランスの対テロ特殊部隊GIGNも採用し、一躍その優秀さを知らしめることとなった。西側諸国では.300 Blackoutを採用する向きもあるようだが、難しいことを考えずにAKカートリッジを採用するあたり、フランス人の臨機応変さが感じられた
9月とはいえ30度を超える炎天下、イベントでは100名近い人数がほぼ休みなく射撃を行なった。大人数でひっきりなしに射撃が行なわれながらほぼトラブルもなく、ハードな状況に耐えていた。ただ、フォアグリップなどが装着されておらずアッパーレシーバーと一体のアルミ製ハンドガードはかなり熱く、素手では火傷しそうになるほどだった。ガスオペレーションにアルミレシーバー、そしてひっきりなしの射撃とくれば、ここまで熱くなるのも当然といえば当然ではあるが。
軽量化を考えてレシーバーにアルミニウムを採用しているのは素晴らしいが、熱伝導率の高さを考えると何らかの熱対策は必要となりそうだ。使用する際にはレールカバーやフォアグリップの装着、グローブの着用などユーザー側で対処するのがよさそうだ。
防弾システムに特化した「4Ms」
CZでは、ピストルやアサルトライフルのほかに今回新たに加わったスナイパーライフルなど、軍が要求する小火器にすべて答えられるような体制に舵を切っている。さらに小火器だけでなく、「4Ms」という装備品ブランドがCZの傘下に入り、中でもボディアーマーには特に力を入れていた。
とりわけ注目されたのは、シャツタイプのアーマーである。比較的通気性が高いため、気温の高い地域ではこのシャツのみでミッションに挑むといったことも可能になるのだ。製品はマグナムを含むピストル弾を防げる「レベルⅢAd」の防弾性能およびナイフの刺突に対応する防刃機能も併せ持っている。薄手とはいえ、これならば胴体への重大な損傷を防いでくれることだろう。
プレートキャリア同様、防弾シートは胴体前面のポケットに収められている。薄手ながらプレートを装備するとそれなりの重量となるため、シャツをズレにくくするため裾を長くし、防弾シートの重みでズリ落ちてこないように肩の部分にズレ防止のベルトを内蔵するなど、さまざまな工夫が凝らされている。
デモンストレーションでは.308を受け止めるレベルⅣのプレートを収めたボディアーマーも登場。もちろん貫通することなく見事に弾をストップした。高価なアーマーに実際弾を撃ち込む機会などそうそうないので、これを見られただけでも貴重な経験となった。
.308を撃ち込まれたプレート。セラミックと重ねたケブラーシートで構成され、弾は前面のセラミック部分でストップされている
前回までのリユニオンは参加人数も少なくアットホームな雰囲気で自由時間もたっぷり用意され、あれこれ試したり撮影できたが、今回はタイトスケジュールでかなり厳しい撮影となった。天候に恵まれたのは救いだったが。
さて、次回はピストルを中心にバリエーションを増やしたスコーピオンEVO3なども紹介していく。お楽しみに!
TEXT & PHOTO:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は2018年12月号 P.126~133より抜粋・再編集したものです。