2021/04/19
【実銃】理想のマルチキャリバーライフル「BUSHMASTER ACR」
マグプルが開発したアサルトライフルMASADAは、多様な弾薬に対応したマルチキャリバーデザインで、しかも工具不要で簡単にバレルチェンジできるのが特徴だ。その量産モデルはACR(Adaptive Combat Rifle)と名を変え、民間向けセミオートモデルをブッシュマスターが、軍・法執行機関向けフルオートモデルをレミントンが生産している。今回は、その中でもブッシュマスター製のACR(11.5インチバレル)を分解・試射することができたので、その模様をレポートしよう。
BUSHMASTER ACR 11.5in
- 口径:5.56mm×45(ほかに7.62mm×39、6.8mm Remington SPC、.450 Bushmaster、.300 AAC Blackout)
- 全長:782mm(ストック伸長時)
- バレル長:292mm(11.5インチ)
- 重量:約3,600g
- 装弾数:30発
MASADAを原型とするACR
アメリカの銃器メーカー、ブッシュマスターといえばAR15クローンで知られるが、今回テーマとするのはブッシュマスターのアサルトライフル、ACRだ。この銃の原型は、MAGPULが開発したMASADA(Masada Adaptive Combat Weapon System)で、2007年のプロトタイプ発表当時の注目度は非常に高かった。しかし、パーツ製造やタクティカルトレーニングで知名度が高かったマグプルも銃器本体の製造経験は浅く、軍や法執行機関がMASADAの採用に前向きではなかった。そこで、マグプルはMASADAの各種ライセンスを実績のある銃器メーカー、ブッシュマスターとレミントンに与え3社共同参画とし、ブッシュマスターは民間向けのセミオートモデル、レミントンが軍・法執行機関向けのフルオートモデルの製造・販売を担当する形となった。
MASADAは分解・結合やパーツ交換に特殊な工具を必要とせず、5.56mm×45や7.62mm×39、6.8mm×43など、マルチキャリバーの各種弾薬に応じたものに簡単に交換できるクイックチェンジバレルを採用。また、バレル、レシーバー、ストックのレイアウトはリコイルを抑え込みやすいFN SCARのデザインを踏襲しており、H&K G36のようなポリマーフレーム、AR15のようなトリガーグループ、AR18のようなガスピストンを採用するなど、既存アサルトライフルの長所とされる部分を積極的に採り入れ、理想的なアサルトライフルとして完成させている。
なお、MASADAという名称はイスラエルにある世界遺産マサダ要塞に因んでいるが、この国と敵対する国家は多いため、世界各国に売り込むことを考慮してこの銃には新たにACR(Adaptive Combat Rifle)という名称が与えられた。
工具不要のテイクダウン
この銃の最大の特徴は、工具不要ながら数分で使用弾薬を変更できる、いわゆるマルチキャリバー対応のクイックチェンジバレルだ(当然フィールドストリッピングも工具不要で簡単)。ハンドガードを外すと、バレルには交換ハンドルが付いており(汎用機関銃のクイックチェンジバレルに似ている)、容易に着脱できるというシステムだ。
さて、実際にACRをテイクダウンしていこう。基本的にはAR15のように、まずレシーバーの前後にあるテイクダウンピン2本を抜くことから始まる。そしてロアレシーバーを真下に抜き取り、ストックピンを外してストックを外し、ボルトも抜き取る。
続いてハンドガードのピンを抜いて取り外すと、バレルのハンドルにアクセスできるようになる。
ハンドルを引き起こし、ロック解除用のプレートを押しながらバレルが中心になるように回転させることでバレルが外れる…はずだが、びくともしない。まっさらな新品のためだろう。その場にいた男3人が挑戦し、額に汗をにじませ始めた頃ようやくそれは回った。
ボルトはAR15/M4とほぼ同様の形状。ボルトキャリアはピストンロッドを受けリコイルスプリングが収まるアッパーと、ボルトの収まるロアの2階建て構成。リコイルスプリングガイド後端にはボルトキャリアーの後退時に衝撃を和らげるバッファーが付いている。構造的に目新しくはないが作りはよく、新品ながらグリスだらけということもない。グリス切れで作動不良を起こす類いのチープな銃とは違うようだ。
さて、今回はACRの解説ならびに分解を行なった。次回はいよいよ実射の模様をレポートする。果たして、あらゆるアサルトライフルの「いいとこ取り」の性能とはどんなものだろうか。ぜひご覧いただきたい。
Text & Photos:櫻井朋成( Tomonari SAKURAI)
Special Thanks :Armurerie FMR Unique
この記事は月刊アームズマガジン2021年5月号 P.140~147より抜粋・再編集したものです。