2018/10/23
GEISSELE USASOC URG-I 14.5”& 10.3”【2018年11月号掲載】
特殊部隊向けM4用アッパーレシーバーグループ改のクローン、実射!
信頼度の高いAR-15用トリガーグループのメーカーとして知られるガイズリー・オートマティック(GEISSELE AUTOMATICS)社が、今年のショットショーでリリースしたのが、USASOC(USアーミー・スペシャル・オペレーションズ・コマンド)に制式採用されたM4用「 URG-I( アッパーレシーバーグループ・インプルーブド)」のクローンだった。この夏から一般向けデリバリーが始まった、全米で注目を浴びているクローンモデルのプロトタイプを取材する機会に恵まれたので、紹介してみよう。
ガイズリー社によるURG-Iクローン
USASOCによるURG-Iプログラムは、老朽化が進み、最新の装備からは程遠くなりつつある特殊部隊のM4を、使い慣れたロアレシーバーはそのままにして、アッパーレシーバーグループのみ交換して、新しいカービンに生まれ変わらせよう、という意図のもと進められたプログラムだった。サプレッサーの装着はもとより、オプティクス(スコープなどの光学機器)、ナイトビジョンといった最新装備にも適合させようという試みであり、特殊部隊向けに数千単位のオーダーがメーカーに入ったとされている。
ごく最近のニュースでは、SOCOMが、あのSIG SAUER社とM4用の「SURG(サプレスド・アッパーレシーバーグループ)」の契約を交わしたとして話題を呼んでいる。こちらはサプレッサーの装着と耐久性に重きを置いたプログラムだが、SIGは自社製のサプレッサーを使用してSOCOMの厳しい要求に応え、契約を勝ち取ったとされている。
今回のURG-Iプログラムは、SURGより前のもので、契約の規模もそれほど大きくないが、ミリタリーの特殊部隊が制式採用した、M4にワンタッチで装着できるレシーバーのプログラムということで大きな話題となっている。
現時点でクローン版は、ガイズリー社にオーダーを入れても4週間以上「待ち」のようだが、ジェイソン・デイヴィスのもとに、プロトタイプがテスト用として送られてきた。筆者はミリタリー装備には目のないほうなので、早速取材をさせてもらうことにした。持つべきモノは、顔の広い友人である。
このURG-Iは、プロトタイプだけにその仕様は、一般にデリバリーが始まっているコマーシャルモデルとは少々違っている。元々URG-Iはガイズリー社が独自に開発したモデルではなく、細かく指定された各社のパーツを組み上げたものとなっている。その基本的な仕様を紹介しておこう。
14.5“URG-I + M16A2 フレーム
スコープマウントは、逸品との評価も高いスーパープレシジョンマウントだ。ハンドガードの固定も工夫を凝らしてある。回転しないよう対策がなされているのがわかるだろうか。ちなみにスコープはVORTEX RAZOR Gen 2 HD。1-6x24はGen 2になってさらに良くなった
サプレッサーは全長を抑えるために、SOCOM556Mini2を装着してある
ミッドレングスのポートには、ダニエルディフェンス社製ロープロファイルガスブロックが見える
プロテクターはガイズリー社のロゴが入っているが、実際にはタンゴダウン社製。収まりもいいし、必要充分な滑り止め効果がある
ガイズリー社製スーパーチャージングハンドル。使いやすくレシーバー内部から噴き戻ってくるガスを防いでくれる
10.3インチ銃身のモデルもある。取り回しは楽だ(詳細は本誌にて)
「撃ちやすさ」を体感できた実射
今回の実射は、プロトタイプという性格上、撮影は遠慮することになった。ただし撃つこと自体はお構いなし、逆にインプレッションを教えて欲しいとのことだったので、遠慮なく撃たせてもらった。
ジェイソンはPD(ポリスデパートメント)のオフィサー。SWATチームメンバーで、PDではメインのファイアアームズ・インストラクターでもある。よってテストファイアはPD内の室内レンジで撃たせてもらった。写真を見てもらえばわかるとおり、14.5インチ、10.3インチともにシュアファイア社のサプレッサーが装着してある。
撮影に協力してくれたジェイソン・デイヴィス。SWATスナイパーにしてコルト社の公認アーマラー、経験豊富なインストラクターと、いくつかの顔を持つ。彼のもとには全米からガンやパーツが集まってきてしまう
14.5インチあれば600ヤード先も射程だ。この1-6倍スコープは気に入った。レンズが明るく赤いドットも真昼間でもはっきりくっきり見える
まずは14.5インチからだ。ジェイソンの装備しているパトロールカービンは、コルト社製のコマンド(11.5インチ銃身)にシュアファイア社製サプレッサーを装着している。つまりこの銃身長のサプレッサー付きM4も撃った経験がある。ややキツめのデューティアモを撃つと、サプレッサーによる内圧の上昇により、ライフルの各部から発射ガスが顔に向かって噴き戻ってくるのだ。これはかなり煩わしい。噴き戻しといっても空気だけでなく、火薬の燃え残りやケースや弾頭の削れカスが顔に向かって飛んでくるのだ。
今回の2挺のうち、14.5インチ銃身のほうは、コマンドに比べると明らかに撃ちやすいというのがわかった。まずリコイルが明らかにマイルドなのだ。さらにはコンカッション(衝撃波)が格段に優しい。チャージングハンドルのおかげか、顔に吹き付けてくる発射ガスの量も少なく感じる。ただし10.3インチ銃身のほうは、やや印象が違ってくる。発射音も明らかに大きいし、イオテックを覗き込むと赤い点が、あちこちに動き回るのだ。
10.3インチ銃身の取り回しのよさは格別だ
一応最大距離である50ヤードからの精度テストのようなものもしてみたが、2種類のアモどちらもほぼ1ホールにまとまってしまう。距離が近すぎるのはわかっていたが、特に14.5インチ銃身のほうはスコープのおかげもあって、この距離なら外す気はしなかった。トータルで200発ほどを撃ったが、イヤープロテクション(耳栓などの音対策)はまったく必要がなかった。
結論は、価格との相談はしたいものの「ぜひ手に入れたいパーツ」というものだ。ハンドガードやチャージングハンドルの操作性もかなりのものだし、特に14.5インチバレルはかなり気に入ってしまった。1,499ドルというリテイルプライス(小売価格)がこなれることを願いたい。
大柄なジェイソンには、14.5インチバレルのほうがフィットする。ただしどちらを撃たせても上手い
Text & Photos: Hiro Soga
この記事は2018年11月号 P.88~95より抜粋・再編集したものです。