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2020/10/24

リエナクトメントのススメ vol.8【WEB版:オストフロント1944イベントレポート その4】

 

 月刊アームズマガジンで連載している「リエナクトメントのススメ」。そこでは「リエナクトメント」を歴史的な事象の再現と定義し、テーマを第2次世界大戦としている。現在、世界中で第2次世界大戦をテーマとしたさまざまな「リエナクトメント」が行なわれているが、比較的参加しやすい国内のイベントを中心に紹介するとともに「リエナクトメント」の楽しさを伝えたいと考えている。

 WEB版第8回では、2018年12月に行なわれたリエナクトメント・イベント「オストフロント1944 ~グナイゼナウラインの攻防」の2日目に実施された戦闘再現の様子を紹介する。

 

前回の記事はこちら

 


 

「オストフロント1944」イベントレポート~その4~

 

 

 このイベントの設定は、1944年4月13日~14日にクリミア半島のセヴァストポリ近郊、後退を続けるドイツ軍が防御陣地を構築し、追撃してくる赤軍を迎え撃つというストーリーであった。戦闘は赤軍の前進によって開始された。

 

 

 イベント初日に陣地構築を行なったドイツ軍は、陣地内で配置につくと同時に戦闘外哨を出した。戦闘外哨は敵の接近経路と予想される地点に配置し、敵を発見したら射撃により敵の足止めをすることを目的としている。細かなシナリオが無く、敵味方が何時何処で接触するか分からないため、双方の参加者は緊張感を味わうことができた。

 

 

 ドイツ軍陣地に向け前進してきた赤軍前衛がドイツ軍外哨と接触。双方ほぼ同時に射撃をはじめ、ドイツ軍が守備する陣地をめぐる戦いの火蓋が切って落とされた(広義では敵の攻勢に備える陣地構築も戦闘行動ではあるが)。赤軍は速やかにドイツ軍側の兵力が少数であることを看破し、それぞれの外哨に対して1個分隊の兵力で攻撃した。

 

写真はドイツ軍陣地のある丘に向かい、警戒しながら進む赤軍の前衛部隊で、偵察隊がさらに前進を開始したシーンの再現である

 

 ドイツ軍外哨を突破した赤軍は、ドイツ軍陣地に向けて威力偵察を行なった。敵に小規模な攻撃を行なう威力偵察では、敵陣の配置や敵兵力の規模などが解明できる場合があり、敵に関する詳細な情報を得ることができる。

 

 

 ドイツ軍部隊には、分隊以下の敵兵力に対する発砲禁止命令が出されていた。これは敵の威力偵察などに対する措置であったが、外哨が殲滅された直後に敵兵を見つけた防衛陣地右翼の機関銃陣地が発砲。反撃に出た赤軍偵察部隊に対し、隣の機関銃陣地も射撃を行なった。これにより、防御陣地前面の障害の様子だけではなく、防御陣地のどこに機関銃が設置されているかの情報が赤軍にもたらされた。

 

イベントでは圧搾空気で発射する模擬弾と煙幕弾が使用され、攻撃準備射撃が再現された

 

 威力偵察の結果、ドイツ軍の障害と陣地を概ね看破したと判断した赤軍は、連隊砲兵による攻撃準備射撃を行なった。歩兵の携行火器のみでの陣地攻略は困難で、目標陣地を徹底的に砲撃し、敵に物理的損害と精神的な打撃を与えてから歩兵が突撃を敢行するのが常道である。特に戦争後半の赤軍は、この砲兵による準備射撃が圧倒的であったことが知られている。

 

赤軍の砲撃で負傷したドイツ兵

 

 ドイツ軍の負傷者は、後送して治療するのが基本であったため、各歩兵中隊には、患者を搬送する担架兵はいたが衛生兵はいなかった。衛生兵は衛生科に所属しており、作戦上の必要に応じて前線部隊に配置されることはあったが、常に前線部隊に配属されていた訳ではなかった。今回のイベントでは、負傷したか否かは各自の判断に任されており、後方への搬送に関しては省略された。

 

取材協力:関西ヒストリカルイベント運営事務局

TEXT&PHOTO:STEINER

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