2025/03/02
真夜中のガンロッカー464 キャッチ&リリース
マガジンを銃にロックしておくためのパーツの呼称は、マガジンキャッチが正解なのか、それともマガジンリリースが正解なのか。別にどちらでも構わないし、意味さえ伝われば何も困らないのだけど、ちょっと気になってしまった…
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釣り
ボクは釣りをしない。いや、今はしないといった方が正確かもしれない。なにより近くに手頃な川や池もないし、海も遠く、釣り堀もない。当然、釣り道具も持っていない。
小学生の頃は釣りをしていた。週末になると友達と一緒に自転車で川へ出かけ、秘密の釣れるスポットで糸を垂れ、釣り上げた魚の数を競ったりしていた。といっても、釣れるのはせいぜい1~2匹。0ということも多かった。これをボウズというのは父から教えてもらった。
10cm以上の大物が釣れたら川原で火を焚き、塩焼きにして食べることもあったが、ほとんどはアブラハヤという種類で、5~7cm程度。釣れた魚は家に持って帰って、死んでいなければ金魚の水槽に入れて飼ったりした。まれに婚姻色の付いた美しいオイカワが釣れることもあって、そんな時には一躍ヒーローに祭り上げられた。
道具の竿は駄菓子屋さんで売っていた。よくしなる竹製の1本竿で、釣り糸、釣り針、オモリ、ウキと一式が揃っていた。
エサはミミズ。釣りに行く前に、林の中の落ち葉などが積み重なったじめっとしたところでミミズ掘りをする。空き缶に少量の土と一緒に入れて持っていった。確か赤っぽくて細いヤツがよく釣れた。
釣りはコミュニケーションツールでもあって、友達と遊ぶには必要なものだった。父もたまに釣りをしていたので、父が持っていた高級そうなつなぎ竿に憧れたりもしたものの、次第に興味が銃に向いていき、フェードアウトするように釣りに行かなくなってしまった。チチワ結びとか、針と糸を結ぶやり方も、すっかり忘れてしまった。
その後、東京へ出てきてから、職場の上司に誘われて海釣りへ1~2回行った。初心者のボクでもウマヅラなどが釣れて楽しかったが、釣り場へ行くだけでも大変でお金が掛かり、リールなどの道具から釣り用のジャケットなどとお金が掛かり、貧乏人のボクにはとてもついて行けなかった。
さらにしばらくして、アラスカでウッディ小林さんに誘っていただいて、サーモンフィッシングにも何度かチャレンジした。サーモンのシーズンは熊のシーズンということで、腰には.44マグナムのスーパーブラックホークを下げて。こんなことはまったくの初体験で、ハラハラ、ドキドキのしっぱなし。それでも奇跡的に、ビギナーズラックというヤツなのか大物を釣り上げることができた。またやりましょうと誘っていただいたが、そうそう簡単にアラスカに行けない。
そのころ知ったのがキャッチ&リリースという言葉。魚が釣れたらビクやクーラーボックスに入れずに、そのまま放してやるのだという。
無駄な殺生をしないとか、放しても死んでしまうので苦しみを先延ばしにするだけだとか、賛否両論いろいろあるらしい。ただ、そういう考え方があることが新鮮で、驚きがあった。
そしてその言葉、キャッチ&リリースがどうにも心に残った。なんとなく銃につながるような気がする。折に触れ、不意に浮かび上がってくることがある。あたかも魚が水面をうかがうように浮かび上がってくることがあるように。
パーツ
銃のパーツでキャッチまたはリリースが付くものはいくつかある。
スライドストップも、スライドキャッチと呼ばれたり、スライドリリースと呼ばれたりすることもある。もちろんメーカーによって違う。ただ、少なくともタクティカルの世界ではスライドリリースとは呼ばないとされる。
以前このページで書いたが、タクティカルでこのパーツを使うのは、マルファンクション(作動不良)が起きて対処する必要があるときか、チャンバーが空であることを他者などに示す必要があるときだけで、その時は自分からスライドをオープンにして掛けるからだ。
ホールドオープンした状態のスライドを戻す(リリースする)時には、緊急時など特殊なケースを除き、装填済みのニューマガジンを入れるか空マガジンを抜いて、そこからさらにスライドを引いてストップを解除する。こうすることによってスライドストップとスライドのノッチの摩耗を抑えることができるというわけだ。普段からこれを何度も繰り返してクセにしてしまえば、無意識にスライドストップを使ってしまうようなことはなくなる。いざという時、摩耗していてホールドオープンしないというトラブルを少なくすることができるのだと。
もちろん、命が掛かっているとか、競技でコンマ何秒を争っているというような時は別。積極的に使うべし。
セイフティもキャッチという名称が付くことのあるパーツ。セイフティキャッチ、サムセイフティ、セイフティバー、セイフティボタン、セイフティロックなどの名称があり、メーカーによる揺らぎが大きい。これもちょっと掘り下げてみたいところだが、こちらはリリースとは言わない。キャッチ&リリースからは外れる。

左:スライドストップ。スライドキャッチやスライドリリースとも。
中央:セイフティロック。カスタムでアンビ化、ロング化されている。セイフティレバー、セイフティキャッチとも。
右:マガジンキャッチ。マガジンリリースとも。
写真はA!CTIONのモデルガン。Photo by Hisayoshi Tamai
今回掘ってみたいのはマガジンキャッチ/マガジンリリースの方。タクティカルのトレーニングでは、名称について触れていなかった気がする。ということはどちらでも良いということか。どんなタイプがあって、どう使うかの講義はあった。ただ、それも受講者が持っている銃や、有名銃だけで、それ以上の掘り下げはなかった。
名称
マガジンキャッチなのかマガジンリリースなのか。まずは元祖をたどってみよう。
スプリング入りの着脱式箱形弾倉(デタッチャブルボックスマガジン)は、ジェームズ・パリス・リーというイギリス系カナダ人の銃器デザイナーが1875年に考案したとされる。そしてアメリカ軍での採用を目指したいくつかのライフルで採用されたものの、大きく注目されることはなかったという。しかし、その後イギリスで好評を博し、リー・メトフォードライフルやリー・エンフィールドライフルで採用され、ついには主力小銃としてイギリス軍で広く使用されたSMLE(ショート、マガジン、リー、エンフィールド)に採用されることになるわけだ。
リーがそのマガジンを銃本体に保持するパーツに何という名称を付けたのかはわからなかったが、1879年の日付があるパテント図面の写真を見ると、その形状は後のSMLEとほぼ同じ。そこで、SMLEのパーツ表を見てみると、マガジンキャッチだった。小さなパーツで、それほど重要なものとも思えないので、あえて名称を変える必要もないとすれば、最初からマガジンキャッチだった可能性は高い。
考えてみれば、ピンやスプリングは別として、このパーツ1つで背後からクサビを打つようにしてマガジンを保持していて、当時マガジンは頻繁に交換するものではなかったという。いざという時はマガジンごと交換したが、普段は付けたまま、ストリッパークリップまたは1発ずつ手で装填していたらしい。またマガジン自体が高価で、せいぜいスペアが1個というような感じだったらしい。また本体に付いているものも、紛失しないよう、初期のモデルはチェーンで銃本体とつながれていたという。
ということは、保持が大事で、外すのはめったにない。訓練時や特殊なケースで単発銃として使うためにマガジンを外すくらい。だからリリースではなくキャッチだったのではないだろうか。

写真はS&Tのエアーコッキングライフル。Photo by Hisayoshi Tamai
では、現代銃ではどうか。「EXPLODED GUN DRAWINGS」(Caribou Media Group, LLC)に掲載されている分解図を参考に、メジャーな銃を調べてみると……。
ハンドガンのほとんどが、その形状、タイプに関わらず、キャッチという名称を使っていた。P38もP08も、1911オートも、HScも、グロックもCZもSIGも、みんなキャッチ。わずかに、イタリアのベレッタがリリースと呼んでいるくらい。
ただブラウニングのモデル1910などはラッチという用語を使っていた。ラッチはlatchで、掛け金とか閂(かんぬき)という意味。なるほど、そういう呼び方もあるか。
P38は戦後版英語マニュアルではマガシンホルダー/リリースになっていた。ホルダーというのはなかなか新しい。保持するものという意味か。HScも戦後版はリリースだった。概して、ヨーロッパのメーカーにリリースが多いようだが、戦前と戦後で変わったのだろうか。
長物も同様の傾向で、ほとんどがキャッチだ。ただアメリカのM14はラッチで、ベレッタの軍用アサルトライフルARX160はキャッチだったが、その民間向けARX100ではリリースになっていた。軍用は世界中で使用される可能性もあることから、あえてより一般的と思われるキャッチを採用したのだろうか。
アメリカの書籍なので、編集の段階で英語に翻訳する際、リリースより一般的なキャッチに変えたということはあるかもしれない。

写真はタナカのモデルガン。Photo by Hisayoshi Tamai

写真はマルシンのモデルガン。Photo by Yuu Kurogane