2025/02/25
FN SCAR 17S 7.62mmNATOバトルライフル
7.62mmNATOバトル・ライフルの最新作
FN SCAR 17S
Turk Takano
Gun Professionals 2012年11月号に掲載
今回、やっとFN SCAR口径7.62mmNATOを入手することが出来た。
やっと? FNのカタログに掲載されFNのHPを見る限り・・・全米何処のガンショップでも即座に購入できるのではないか?
さにあらず軍用としての需要が大きいためかコマーシャル市場に入っているSCARは極小数だ。現在のところもっとも入手が困難なモデルの一つとなっている。
数年前、旧Gun誌2010年5月号で姉妹モデルのFN SCAR16S 5.56mmNATOをリポートしたことがあった。当時からSCARシリーズは入手しにくいモデルだった。あの時、偶然にも入手しテストできたのは幸運だった。SCAR16Sのリポートで姉妹モデル7.62mmNATOのSCAR17Sの存在についても触れたことをご記憶の読者もおられることだろう。SCAR16S 5.56mmNATOは優れたモデルだが、既に筆者はAR系5.56mmなどを複数所持しており、これを加える気にはならなかった。価格がずば抜けて高かったことも尻込み要因の一つだった。AR系と似たような価格なら購入しただろうが、AR系の2-3倍となると話は別だ。AR/M4系で別に不満もなかったという背景もあった。

筆者が興味を持ったのは姉妹モデル口径7.62mmNATOのSCAR17Sだった。ミリタリー情報誌では、やれ米軍特殊部隊(レンジャー)が装備したとか・・・・・ミリタリー用需要の話には事欠かなかった。しかし、待てど暮せど、コマーシャル市場に入ってくる様子はなかった。
昨年、市場に小数が入ってきたのだが既に購入者は以前に予約済みとかで店頭に飾られる時間もなく消えた。入荷が大手ディーラーで数挺じゃ需要から考えて焼け石に水でしかない。SCARシリーズには外見のフィニッシュからブラック、タン(砂漠カラー)の2種がある。特にタンカラーは極端な品不足となっている。
今回、幸運にもSCAR17S(タン)を入手することが出来、何とか11月号リポートに間に合った。久々に所持したいモデルの登場だったため即決で購入した。もちろんディスカウントなし、買えるだけあがたく思え・・・こんな感じだった。常連と言うこともあり、心もちまけてくれたが・・・なんと50ドル、雀の涙以下だ。消費税を入れれば3,000ドルを軽く超えた。しばらく寿司は食えそうもない(笑)。
先月号のAR-10Tのリポートでも述べたがARもガスピストン以来値上がりした。特別なものを付けたから・・・メーカーが語る理由はさまざまだろうが便乗値上げだ。商売だから採算が取れなきゃどうしようもない。AR5.56mm系は半世紀以上の歴史があり膨大な製造数からパーツも安い。もっともリュングマンガスシステムに限っての話だが・・・AR5.56mmリュングマン系なら何処のメーカーで作られたパーツでも機関部ならすべて互換性がある。ところがガスピストンモデルではスタートから各メーカーバラバラになってしまった。各メーカーが独自のガスピストンシステムを構築してしまったからだ。それだけではなく、7.62mmNATOの場合、違いはマガジンにも及んだ。AR社はM14系マガジン、他の数社はFALマガジン、または新たなマガジンをつくりそれぞれベースとした。というわけで少なくともガスシステム、マガジンに関する限り各メーカー製に互換性はほとんどない。7.62mmNATOにはAR-10系リュングマン、ガスピストンのほかFNが参入するなど市場も賑やかになってきた。既に述べたようにAR5.56mm系のセールは飽和状態となってきた。メーカー乱立の過当競争もあるがAR5.56mmはユーザーに行き渡ったとも言える。

5.56mmから7.62mmNATOに移行する、これも大きな便乗値上げとなりFN SCARの3,000ドルは決して高価ではなくなった。AR-10系もトップ・ザ・モデルなら4,000ドルを越える。急にFN SCARシリーズがバーゲン価格に見えてきた。
FN SCAR16 5.56mmNATOが市場注目されたのは、米特殊部隊員とFN社がジョイントでクリエイトした新しい時代のコンバットウェポンという他のモデルにない開発経緯だった。ACRのようなバレル交換で5.56mm系と似たような口径との互換性を持たせた中途半端なものではなく、5.56mmのSCAR16、7.62mmのSCAR17と性格の異なるカートリッジモデルによる2本立てとしたことも新しい試みだった。内部パーツの大半に互換性を持たせたデザインは製造コストダウンとなった。ミリタリー風に言えばミッションのタイプによって2つのモデルを使い分けるというわけだ。
今回、SCAR16を八方探し求めたのだが見つからなかった。先のテストリポートで世話になったSCAR16Sの持ち主を探したのだが、連絡がつかずこれも叶わなかった。SCAR16S、SCAR17Sを2挺並べた写真を撮りたかったのだが。

前置きが長くなってしまった。SCARの本筋に入ろう。SCARとは・・・何の頭文字? SCAR(Special Operation Force Combat Assault Rifle/特殊作戦軍用突撃銃) 米国ではスカーと発音する。高度にモジュール化された次世代のアサルト・ライフル・システムである。1990年代、これまでバラバラに運用されていた各種特殊部隊を一元化し、指揮する新たな部門を創設した。これがUSSOCOM(USオペレーション・コマンド) である。特殊部隊の効果的な運用を目指したものだ。この種の専用小火器にはHKが開発したXM8などもあった。しかしXM8は単一口径(5.56mmNATO)をモジュール化したものでFN SCARシリーズとは根本的に異なる。
特殊部隊の運用、目的に関しての資料は市場に氾濫し、他誌でも頻繁に取り上げられたのでここではSCAR17Sに焦点を絞りたい。
特殊部隊員による特殊部隊のためのアサルト・ライフルとなれば誰もが興味をそそられる。既に触れたように2種類の口径モデルを基本としモジュール化したもので、スペックもかなり厳しいものとなった。ガス・ピストン、容易なるバレル交換(クイック・チェンジと言う意味ではない)、アキュラシーを考慮したバレル・フリー・フローティング・コンセプト、新しいマテリアル採用による軽量化、サウンド・サプレッサー対応のマズル・ブレーキなどだった。これまで何回も述べたように作動方式、ファイアリング・メカニズムは既に出尽くした。ケースレスも一次出現し、もしかしたらこれまでのウェポン・システムを駆逐するのではないかと思った読者もいたはずだ。HKの鳴り物入りの宣伝には説得力があったからだ。しかしながらいろいろな問題があり、実現には至らなかった。金属ケース160年の歴史に終止符を打つ可能性を探った努力には敬意を払いたい。少なくとも銃器/ミリタリー・マニアを興奮させたことは事実だ。