2025/02/26
スミス & ウェッソン モデル 60 アンフルーテッド 357マグナム
Smith&Wesson
Model 60 Unfluted
―ステンレス・チーフ・スペシャルの特別仕様―
Text and Photos by Terry Yano
Special thanks to: Tsuki-san, Nelson & Ronda Vaughter,and Robert Coyle of TALO Distributers Inc.
Gun Professionals 2012年10月号に掲載
リボルバーは時代遅れか?
オートマティック・ハンドガンの信頼性が高まり、LE機関がリボルバーからオートマティックに移行して久しい。軍/ LE機関はもちろん、民間の護身用ハンドガンでもオートマティックが全盛となった今、リボルバーは完全に時代遅れとなったのであろうか?
装弾数が少ないリボルバーは、ファイアー・パワーでオートマティックに劣り、再装填も面倒だ。シリンダーを持つリボルバーはどうしても全幅が大きくなるので、スリムなオートマティックの方が携行しやすい。

多くの面でハンディを抱えるリボルバーだが、それでも一部のユーザーに支持されているのは、オートマティックにはない利点があるからだ。
オートマティックでは、使用カートリッジのパワーに限界がある。強力な.500 S&Wマグナムや.460 S&Wマグナムといったカートリッジを使用するオートマティックをデザインしようとしても、ハンドガンとして実用的なサイズには収まらないであろう。ビッグ・ゲーム・ハンティング用のハンドガンなら、オートマティックよりもマグナム・リボルバーの方が選択肢は多い。
また、カートリッジのパワーや弾頭形状が作動に影響しないことは、オートマティックよりリボルバーが優れている点だ。オートマティックの信頼性は高まったとはいえ、リボルバーにはかなわない。LE関係者のバックアップ・ガンにはリボルバーが多いのは、トリガーを引けば確実に発射されるという安心感が大きな理由だろう。
使用目的や状況次第で、オートマティックよりも好まれるということを考慮すれば、公用ハンドガンの主流ではなくなったという理由だけでリボルバーが時代遅れであると断定するのは早計だ。適材適所という言葉は、木材や人だけでなく、銃器に対しても当てはまる。オートマティックがリボルバーに完全に切り替わることなど、考えられない。

この銃は、TALOというディストリビューターが500挺限定で独占供給した特別仕様だ。
S&Wリボルバーの変り種
S&Wの銃器には、カタログに掲載されるようなスタンダード・アイテム以外に、イレギュラーなバレル長さやフィニッシュをもつ個体が存在する。日本の銃器ファンにもよく知られた.44マグナムのM29を例にすると、製造数の少ない5インチ銃身モデルの存在を知る人は多くない。こうしたレアなモデルはコレクターの間で人気が高く、プレミア付きの価格で取引されている。
S&Wに限らず、近年は大手ディストリビューター向けに数量限定の特別仕様が製造されることがあり、そういったモデルはカタログに掲載されないことが多い。今回リポートするアンフルーティッド・シリンダーをもつModel 60 Unfluted(以後はM60アンフルーティッドと記す)も、そんな特別モデルのひとつだ。

Jフレームは.38スペシャル用として開発されたが、その後.32口径や.22口径などのモデルも追加された。.357マグナム用とするにはサイズが小さ過ぎたのだが、シリンダーを延長するなどして誕生したのがJマグナム・フレームだ。
チーフ・スペシャル
1949年、S&Wでは当時の社長C.R.ヘルストーム氏の指示によって、口径.38スペシャルの小型リボルバーの開発を始められた。軽量・小型を念頭に開発された新型リボルバーには、当時製造されていた小型リボルバー用のIフレームをやや大型化させた新型のJフレームが採用され、装弾数は5発となる。メイン・スプリングが従来型のフラット・タイプではなく、コイル・スプリングとなったのは、製造コスト削減のためだ。
最初のJフレーム・リボルバーは1950年10月24日に完成し、シリアル・ナンバーは新たに1からスタートした。私服警官/オフデューティ用としてデザインされた新型リボルバーは、1950年の秋にコロラド州コロラドスプリングで開催された国際警察署長協議会(Conference of the InternationalChiefs of Police)で発表される。S&Wは、新型リボルバーに相応しい名称を出席者たちから募集し、もっとも票の多かった“.38 Chiefs Special”(チーフ・スペシャル)を製品名として採用した。その後、トリガー・ガードの拡大や一部のスクリュー廃止などの設計変更が行われ、1957年には“Model 36”というモデル・ナンバーが与えられている。
小型リボルバーの代名詞的存在となったチーフ・スペシャルには、数々のバリエーションが生まれた。アジャスタブル・サイトを備えたチーフ・スペシャル・ターゲット(後のM50)やアルミ合金製フレームをもつチーフ・スペシャル・エアウェイト(後のM37)、シュラウディッド・ハンマーのボディガード・エアウェイト(後のM38)やエンクローズド(インターナル)・ハンマーのセンティニアル(後のM40)などなど。
M36は、1999年11月に一度スタンダード・モデルから退いたが、限定生産の特別モデルとしては散発的に製造された。2012年8月の時点では、M36はスタンダード・アイテムとしてS&Wのウェブサイトに掲載されている。
現行M36 / M60のバリエーション(Images from www.smith-wesson.com)





M36にアジャスタブル・サイトを組み合わせたターゲット・チーフ・スペシャルにはM50のモデル・ナンバーが与えられたが、ステンレス版はM60のバリエーション扱いだ。
