2025/02/28
ちょっとヘンな銃器たち14 Pistolet Le Gauloisピストレ ル ゴロア
グリップ部分を強く握ることで次々と連発するスクィージングピストルの代表的な製品が、ピストレ ル ゴロアだ。19世紀末から20世紀の初頭の期間にフランスで製造され、セミオートマチックピストルが広く普及するまでヨーロッパで販売された。

通常のリボルバーやセミオートマチックピストルは通常、トリガーを装備していて、これを引くことで、装填されている弾薬を撃発する。すなわちトリガーを引くことが発砲に直接繋がっているわけだ。
それらとは異なり、グリップ部分に装備されたレバーを手で強く握ることでファイアリングピンやハンマーをコックし、さらに握り続けると撃発する形式は、スクイーザー(squeezer:搾り器)ピストル、またはスクィージング(Squeezing:搾出)ピストルと呼ぶ。いずれも“しぼる”ことを意味した名称だ。
その中で特に“手のひらの中にすっぽりと収まり、握り締めることのできるほど小型な製品は、パーム(Palm:手のひら)ピストルと呼ばれている。
本連載2025年1月号、および2月号で紹介したプロテクターや、今回紹介するゴロアは、このパームピストルに分類されるものだ。
付け加えるなら、これらスクィーザーやパームピストルは、リボルバーからセミオートマチックへの移行期に出現し、短期間製作されたものの、その後に姿を消した外力利用式のマニュアルオペレーティングピストル、あるいはハンドオペレーティングピストルに属している。
解説を進める前に今回取り上げるゴロアの呼称について、一言説明しておきたい。
このピストルはフランスで製作され、ドイツやイギリス、アメリカ、スペイン、そして南アメリカなどにも輸出された。かつてフランス地域に居住していた民族の名前がGAULOIS(ゴロア:日本ではガリア人と呼称する場合が多い)であり、それがこの銃の名称となった。
GAULOISはフランス語発音では”ゴロア”となるが、非フランス語圏では、そのスペルから“ガウロイス”あるいは、“ゴロワース”などとも呼ばれた。英語やドイツ語では同じアルファベットで表記するため、そのまま記載すれば済む話だ。
しかし、日本語で記事を書く場合には、その発音をカタカナで表記することが原則的に必要になってくる、その場合、原音を表記するか、より一般的な英語圏で呼ばれる呼称をとるか常に悩むところだ。
一例を挙げると、Borchardt Pistoleを、ドイツ語のボルヒャルト ピストーレとするか、英語のボーチャードピストルとするかの問題だ。
最近では国際的に地名などを原音で呼ぶことが一般的になりつつあるところから、このリポートもフランスに敬意を表して、“ゴロア”と表記することにした。
さて本題に入ろう。“ピストレ ル ゴロア”(ゴロア ピストル)は、フランスのパリにあったブラション&ミマール(Blachon & Mimard)社が1892年に完成させ、1892年から1893年にかけてフランスをはじめとしてイギリスやドイツ、アメリカなどのパテントを申請、これを取得した。
しかし、その製造はこのブラション&ミマール社はおこなってはおらず、フランスのサンティ・エティエンヌ(St. Etienne)にあった大手の銃砲製造会社のマニュファクチュール・フランセース・ダ’ルメー・デュ・サンティ・エティエンヌ(Manufacture Francaise d'Armes de St. Etienne:サンティ・エティエンヌ・フランス武器製造会社:のちのManufrance:マニュフランス)が1893年からOEM生産をおこなった。
製造されたゴロアは、ブラション&ミマール社に納入された後に1893年から複数の販売代理店に出荷され、多くの販売代理店は、” ピストレ ル ゴロア”、あるいは“ピストレ ル ゴロアNo.1”の名前で一般市販した。
しかし、中には機械的な操作で連発するところから、ミトライジュズ(Mitrailleuse:フランス語でマシンガンを意味する)の名前で販売したところもあった。当時、他の外力利用式のポケットピストルが同じミトライジュズの製品名で販売されていたことに対抗して、威力をアピールさせることを狙ったための命名だったと考えられる。
しかし、このミトライジュズという製品名は短期間使用されたに過ぎず、ほとんどの販売店は、“ピストレ ル ゴロア”、あるいは“ピストレ ルゴロアNo.1”の名前で販売をおこなった。

ピストレ ル ゴロア スペック
口径:8mm
全長:132mm
銃身長:63mm
装弾数:5発
ゴロアは、通常のピストルに見られるようなハンマーやトリガーを装備していない。その代わりにグリップ部分が前後2つに分かれている。その前部はマガジンとなっていて、4発が収納できる。そして1発はボルトフェイス部に装填する。これで5連発だ。
このピストルは上面にエジェクションポートが設けられているが、そこにはスライド式のカバーがある。このカバーはポケットなどにピストルを入れて持ち運んでいる際に、エジェクションポートから異物がピストル内に侵入して装弾不良や撃発不良を発生させることを防止する目的と、ボルトフェイス部に装填した1発が落ちないように押さえる目的で付けられたものだ。
射撃するには、ピストル左側面グリップ中央部に装備されているセイフティレバーを回転させて水平にして(Fの刻印に合わせて射撃モードにして)、後部グリップを動かせるようにする。
これで射撃準備が整った。そしてグリップを握り、前後に強く握り締めると、スプリング圧で後退している後部グリップがスライドして前進する。
その際、上面のスライド式カバーを動かして開くとともに、ボルト内のストライカースプリングが圧縮される。またボルトフェイス部にセットされていた1発目の弾薬がチェンバーに押し込まれる。
そのままグリップ後部を前進させ続けると、スプリングを圧縮していたストライカーがリリースされて前進、弾薬を撃発、銃弾が発射される。
発射後、手で握り締めた後部グリップを緩めると、後部グリップ内部にセットされているスプリングの働きで、後部グリップはボルトと共に後退する。その際、ボルト先端上部に装備されたエキストラクターが発射済みの空薬莢をチェンバーから引き出す。
ピストルに独立したエジェクターは装備されていないが、マガジン内を上昇してくる次の弾薬の圧力によって空薬莢はピストルの外に排除される。
外力利用式であるゴロアの利点は、不発が発生した時に発揮される。現代の弾薬と異なり19世紀末から20世紀初頭の弾薬は品質が一定ではなく、雷管の不良で不発も多かった。
その場合、ゴロアは、単にグリップに加えた圧力を緩める一動作で、バレルのチェンバーから撃発不良の弾薬を排除して、次の弾薬を射撃することができた。当時すでに作られ始めていたセミオートマチックピストルで不発が生じた場合は、スライドを手で引いて不発弾を排除しなければならない。それに比べると、ゴロアの方が簡単だ。

一方、最大の欠点はスクィージング方式にあった。不発処理には効果を発揮できたスクィージング方式だったが、手の中で圧縮できる距離にはおのずと限界がある。そのため全長の長い弾薬を使用することができない。ゴロアの弾薬はこのピストルの構造に適合した独自のものだった。
そのため、ゴロアの弾薬は口径こそ8mmとそれなりに大口径であるものの、弾薬の全長は約15mm、薬莢の長さはわずか約9mmに過ぎない。当然威力も限定的だった。

自衛目的で近距離から射撃することを前提にしたピストルだったことから、威力が限定的でも構わないと、ある意味妥協した弾薬なのだ。
低威力ゆえ、ゴロアのボルトには撃発のガス圧を支えるメカニカルなロック機構が一切ない。発射の際の撃発ガス圧を支えるのはピストルを握った手の握力だけだ。

ゴロアで使用された全長の短い弾薬は、その後に他社のスクィージングピストルやパームピストルでも利用、あるいはコピーされて利用されることになった。
そのことから8mmゴロア弾薬は、現代に基準では威力不足と指摘されるものの、当時の自衛用ピストルの弾薬として認知されていたともいえる。
またスクィージング方式のゴロアは、手の中でグリップを前後にかなり強い力で握り締める必要があり、正確な照準をすることが難しかった。それでなくともゴロアにはバレル上面の先端部に小さなフロントサイトが装備されているだけで、リアサイトと呼べるものはない。フロントサイトは、大まかなバレルの方向を定めるだけのもので、正確な照準は考慮されていない。

それでも当時、夜間の街中で起こる突然の襲撃から身を守る自衛用や、家に侵入してくる強盗に対するホームディフェンス用として盛んに宣伝がおこなわれた。
その単純な使用法から、フランスではかなり長期間人気が持続されたようで、多くの外力利用式のマニュアルオペレーティングピストルが姿を消す中で、有名なFN社のモデル1910が発表された1910年になっても製造が継続されていたことが知られている。
製造期間が比較的長く、特に有産階級向けに市販されたこともあり、ゴロアには多くのバリエーションが製造された。ピストルの表面を磨き、ブルー仕上げをしたものがスタンダードモデルで、この他に全面をニッケルメッキした製品や銀メッキした製品、ピストル全面にエングレーブ(彫刻)を施した高級機も製造された。
このエングレーブモデルには、いくつかの異なるパターンの彫刻が知られている。さらに高級機として、金や銀の象嵌を施したデラックスモデルも製作された。1910年前後におけるこれらの製品の価格は、スタンダードモデルが60フラン、全面彫刻モデルが80フラン、そしてデラックスモデルが110フランだった。
加えて、ポケットに密かにピストルを潜ませるための葉巻ケースに似せた専用の皮革製ケースも製作されて供給された。いかにも有産階級を販売対象としていたことを窺わせる付属品だ。この葉巻ケースに似せた専用ケースにはピストレ ル ゴロアと予備弾薬が収められる。

マニュアルオペレーティングピストルの中で、比較的長く人気があったとされるゴロアだったが、セミオートマチックピストルの供給が増え、性能も安定してくる中で、それらのより高い威力や、素早い連射性能、そしてより正確に照準できる性能などに押されて、やがて姿を消すことになる。
ゴロアがいつ製造停止になり、いつ供給が停止されたか正確にわかっていないが、おそらく1911年頃には製造終了した可能性が高い。
ゴロアの正確な生産数もやはり不明だが、ヨーロッパの研究者は約1,000挺程度が生産されたと推定している。
Text by Masami Tokoi 床井雅美
Photos by Terushi Jimbo 神保照史
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