2025/02/17
MAUSER HSc SUPER ガルドーネから来た中型マウザー
ガルドーネから来た中型マウザー
MAUSER HSc SUPER
Toshi
Gun Professionals 2012年8月号に掲載
マウザーの回答
ヘッケラー&コックの中型オートに、HK4というモデルがある。既に生産中止となって久しいが(84年終了)、バレル等のパーツを組み替えることにより4種の口径(22、25、32そして380)を撃ち分け可能なアイデア物で、同社が得意とする独創の塊のような銃だった。
そのHK4は、マウザーの銘銃HScがベースとなっていた。HScのフレームをアルミ化し、グリップをプラに換えて握りやすくし、全体のエッジを取って携帯性を高め、さらに上記の撃ち分け機能をこれでもかと追加した、まさにHScの改良発展版と呼べるものだった。元々ヘッケラー&コックは、マウザー出身の技術者が起こした会社であるから、その絡みが裏にあったのは明らかだろう。

HK4は1965年に製作が発表、実際の発売は67年後半にずれ込んだが、ちょうど同じ頃というか、少し遅れて本家本元のマウザーがHScを復活させた。68年の事だ。こちらは一切の改良を拒んだ完全復刻版に近いものだった。名前とノスタルジーで売る作戦だったのだろう。もちろんファンは喜んだに違いないが。
マウザーは会社自体、大戦後の占領統治によってズタズタとなり、長い活動停止期間を経ての復興だったから(52年辺りから細々始めたらしい)、或いは改良/新規モデルを起こすだけの充分な技術力を欠いていたのかもしれない。また、先月号のパラベラムピストル復活に見られるように、悪名高きバージニアの武器商人INTERARMSの強い意向が働いた可能性もあろう(コレは明白と思う)。
復刻版のHScは、1977年のOne of five thousandモデルをラストに生産は終了した。総生産数は63118挺。

この数、多いか少ないか。「よく頑張ったが、そろそろ限界を感じた数字」とでも表現すべきか。間違っても、実用的護身銃として爆発的に売れたノリとは言い難いだろう。
ちなみに77年には、SIGのP230が発表されてもいる。あちらはワルサー寄りの発展型で、アルミ・フレームのスッキリ軽量ボディと分解の簡易さ及びサム・セフティを廃した潔さ等々が受けてクリーンヒット。HScの勇退は良い潮時だったとする見方も、或いは出来るかもだ。
HScをカタログ落ちさせたマウザーは、そのライセンスをイタリアの銃器会社へ売り払ってしまった。
そして80年代の初頭(81年。資料によっては82年)に、オーベンドルフからではなくイタリアの“銃の都”ガルドーネから、ヒョッコリというかウッカリ出てきたのがたった今ご覧頂いているHScスーパーなのだ。
ヘッケラー&コックのHK4に遅れること15年以上。HScに対するマウザーの最終回答がコレだった。


HSc
自分がこのHScスーパー(以下、スーパーと表記)の姿を見たのは、Gun誌82年7月号の新製品紹介のページが最初である。
一見して、苦笑いだった。なんてこったコレは…という残念な気分。HScの品格はどこへやら、センスの無さが爆発したような三流どころのデザインに大ビックリした記憶がある。
元ネタのHScは、C96と並び称されると言っては多少語弊があるかもしれないが、同社オリジナルの誉れ高き銘銃である。1938年に完成し、40年から生産開始。終戦までに約25万挺、ナチスドイツが滅びた後も戦勝国のフランスが自国軍用に1万9千挺を組み上げ、計27万超近くが作られた。最終弾発射後、マグ・チェンジをするとスライドが自動的にリリースされて初弾がチャンバーへ送り込まれるという独特なコンバット・メカを擁し、ワルサーのPPシリーズとほぼ互角に渡り合った優秀な軍用オートだ。映画『ルパン三世 念力珍作戦』では目黒ルパンも使用。その流線型でほんのりふくよかなボディラインは、まさに貴婦人の表現がピッタリであった。

そんな美し過ぎるHScに、時代の移り変わりで多少トウは立っていたとはいえ、この有様はないだろうという想い。しかも先のGun誌のリポートでは、射撃中にスライドが引っ掛かって停止したり(ジャムとは別。機構上の不良)、マガジンセフティが効かなくなったり、サム・セフティが勝手に入って撃てなくなったり、果ては前述のスライドリリース・メカまで機能しなくなったりと、コテンパンのディサポイントメント状態のオマケが付いた。
だからして正直、自分とこのスーパーとの接点は、あのGun誌のリポートが最初で最後というかその存在すら忘却の彼方だったはずなのであるが、先日のガンショーで実物に初めて出会い、「こんな銃、そういやあったねー」と手に取ると、割りと綺麗なド新品の極上箱入り完品状態でお値段も375ドルと手頃だったので、ついつい…(この話題、先月号でも書きました)。
まあ、怖いもの見たさの好奇心と、こんな銃を今更リポートできるのは自分しかいないだろうという一種自虐的な使命感にも燃えて、購入に踏み切った次第である。
読者アンケートの“良かったと思う記事”の欄で最低レベルの評価を頂くことを百も承知でのご紹介。そこんとこ、何卒宜しくで御座います。
