2025/02/28
競演 懐かしのモデルガン&実銃 35 Mauser P.08 / MGC Luger P-08

59年前の1966年、MGCからルガーP-08が発売された。実銃の情報がまだ限られていたあの時代にも関わらず、それは驚くほどリアルなルガーだったと記憶している。当時の姿のまま米国で保存されているMGCルガーを1936年製の実銃と比較してみた。
MGCのP-08
昨年の10月号の実銃記事において、自分はとんでもない失態を演じてしまった。
ネタにしたLUGER P.08が、なんとフェイク品であることが判明したのだ。1936年のDWM製と紹介した銃が、実際にはトグル部分を載せ替え、さらにシリアル番号を掘り直した真っ赤な偽物だった。
読者の皆さん、本当にすみませんでした。自分の知識不足、チェック不足、怠慢の極みでありました。12月号には松尾副編の謝罪文も載り、ガンプロに対しても心から申し訳なく、一リポーターとしてきちんと謝罪をせねばとずっと気に病んでました。この場を借りて深く深くお詫びします。
二度とこのような事が無いよう細心の注意を払って記事制作を進めますので、今後とも何卒よろしくお願いします。
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そんなわけで、心を引き締めて本題に入る。今回はMGCの金属LUGER P-08と実銃との競演。今ご覧の実銃が、前述のフェイク品である。

対する右はMGCの金属P-08。輸出向けの黒塗りモデルだ。ちょっと触れただけで、手にはベッタリ黒染め亜鉛合金の匂いが染み付く。人によっては不快だろうが、自分にはひどく懐かしい香り。一気に過去へトリップできる。
本体はマウザーの1936年製ながら、トグル部分のみDWMのパーツが差し込まれている。まがい物で本当に心苦しいが、外観上は極々一般的なLUGERの姿ということでご理解いただきたい。
対するMGCルガーは、輸出向けのRMI(Replica Models, INC.)名義の製品だ。国内では第一次モデルガン規制でご法度となった黒塗り銃口開きの雄姿が、オールドファンにはたまらないはず。
最初に申し上げたいのは、“MGCルガーの出来は素晴らしい”ということだ。MGCがルガーをリリースしたのは1966年(ヴィジェール’82調べ)。新作モデルガンを連発したダイナミックシリーズ(ガバメント、コマンダー、ワルサーP38、マウザーC96)の中の一挺がコレだった。ざっと60年近く昔の設計。にもかかわらず、どこもかしこも徹底的にリアルなのだ。MGCといえば作動重視で、ディフォルメと省略満載をよく指摘されたのだが、一部の金属モデルの凝りようは半端じゃなかった。マウザーC96もなかなか凄かったけれど、個人的にはこっちのほうが勝る印象。

自分のP-08モデルガンの遍歴を少し書くと、最初はマルシンの古い金属製アーティラリー(中田商店流れの指アクション)で遊び、その後MGCのプラ製P-08に移り、MGCの金属P-08は比較的遅めの80年代の初め、大学時代にアーティラリーを友人から譲り受けて持っていた。
その友人が言うには、内部パーツの多くを別売りのスチール製(ロストワックス)に替えてあるとのことだった。エキストラクターとファイアリングブロックとカップリングリンクとリコイルスプリングジョイントを交換し、さらにブリーチブロックストッパーまで組み込んであった。改めて調べてみると、それらのパーツ代だけで計1,500円くらいになる。本体定価は当時6,000円だ。
友人は確か3,000円くらいで譲ってくれたと記憶する。自分はその後、木製グリップを買い(妙に角張っていて握り難かった)、木製ストックは板とラウンドの2枚を買い、スネイルマガジンも揃えた。出来ればスコープも付けてピストルカービンに仕立て上げようと企んだが、スコープマウントの取り付けにはフレームに加工が必要らしく断念。あと、現在では伝説となっている金属製の伸縮ストックを買い損ねたのがつくづく悔やまれる。思えば自分は貧乏学生だったくせに、結構P-08には凝っていた模様。ちなみに木製ストック二本とスネイルマガジンはアメリカへしっかり持ち込んでいるほど。

右:MGCの銃口。改造防止のインサートが見える。ばっさりフラットにカットしたクラウンがやや残念。もう少しラウンドだったら良かった。フロントサイトのダブテイルのモールドが恐ろしくリアル。写真では見えないが、背面のセレーションもバッチリだ。

右:MGCの機関部。サイドプレートがやや厚ぼったいが、亜鉛合金の強度を考えた結果かもしれない。実銃のフレーム長は130.1mm、MGCは129.8mmでほぼ同寸だ。
ただし、だ。割と凝りまくった反面、物凄く好きだったかというとそうでもなかったんだよね。コレはルガーの記事ではいつも書くが、サイドプレートの構造を見るにつけ、何となく古めかしくて不完全で未完成な印象が強く、もう少しスッキリまとまったシンプルな銃に若い頃の自分は惹かれていた。元々、メカ派ではなかったのもある。
それが、今では見方が完全に逆だ。実銃のルガーを握ったら、その妖艶な誘惑に誰もが囚われる。下手したら憑りつかれるくらいの濃くて深い魅力を、この銃は持っていると思う。