2025/01/25
Milipol Paris 2011
アームズマガジン2012年2月号特別付録 Gun Professionals Vol.0 (パイロット版)に掲載
パリの旧エキスポ会場で隔年に開催されるミリボル(Milipol)は、軍用機材やボリス用セキュリティ機材を集めた特殊な展示会です。このイベントには、毎回様々なスモールアームズが展示されるため、旧Gun誌時代から、毎回取材をおこなってきました。2011年も10月18日から21日まで開催され、この年も従来と同様、取材をおこなっていますので、その様子をお届けします。
この時点ですでにアサルトライフルはアーマライトクローンが主流となっており、展示品にもその影響が色濃く出ています。そのような中でも、床井さん、神保さんのチームは極力、普段見掛けることの少ない個性的な銃をご紹介すべく取材をおこなってきました。当然のことながら、その後に姿を見掛けなくなった製品も一部にあります。それらマイナーモデルを見ることができる事も、Milipolの魅力ではないでしょうか。
2025年1月 Gun Pro Web Editor 一部修正加筆
2011年のミリボルは、ちょうどヨーロッパのギリシャに端を発するユーロ危機の最中の開催だった。このユーロ危機の影響はかなり深刻で、単にヨーロッパ通貨のユーロだけでなく、USドルの不安定さも加わる世界的な不況に発展している。特殊な機材の展示会だけに、毎回一般の入場者はほとんどいないのだが、それでも今回は例年に比べて入場者が明らかに少ないように思えた。また、毎回参加していたはずの出展社のいくつかは、今回参加を見送ったらしい。例年ならブースを構えるはずの顔見知りの海外メーカーが今回参加しておらず、何か肩透かしを喰った気分だ。これも世界的な不況の影響だろう。それでも、元気のあるメーカーが新製品を持ち込んでおり、読者の皆さんに紹介するだけのじゅうぶんな取材ができている。
全体的に見ると、中国から衣料品関係のメーカーが多く参加していることが目立った。軍や警察のユニフォームや戦闘服、ボディアーマー、ヘルメット、コンバットブーツなどのサンプルを展示しており、各国のバイヤーと警察や軍関係の衣類に関する商談をおこなっているのが目に付いた。
中国のスモールアームズとしては、武器輸出公社であるNorincoは、ハードの展示を一切おこなわず、単に商談スペースを開設しただけだった。
他方、成長がいちじるしく、海外からの投資が盛んなブラジルに本社を置くTaurus社は、様々な分野のスモールアームズの開発に乗り出し、単なるピストルメーカーから総合的なスモールアームズの製造メーカーへと脱皮を計っている様子が見て取れた。タウルス社の新製品の多くは、今回のリポートに取り上げているのでご覧頂きたい。
また、ヨーロッパやアメリカのメーカーの多くは、イラクやアフガニスタンにアメリカ軍が駐留していることを一つのビジネスチャンスと捉え、アメリカ軍の装備に準じたスモールアームズの生産に乗り出している。その結果、多くのM4カービンのクローン製品やナイツアーマメントM110ミッドレンジスナイパーライフルのクローン製品が数多く展示されていた。その影響で、各メーカー独自の製品が減ってしまっている。ブースに並ぶのは、メーカーが異なっても同じような外見の製品ばかりになり、様々な個性を持った銃を紹介したいと思っているリポーターにとって、これは望ましくないことだ。愚痴っていても仕方がないことなのだが。
そんな中でも、各メーカーの特徴が現れている分野がスナイパーライフルだろう。すでに述べた通り、アメリカ軍のM110ミッドレンジスナイパーライフルのクローン製品が目立つものの、それでも多くのガンメーカーが独自の技術で命中精度アップを追求しており、結果的に多くの新製品が登場している。
それでは、ミリポル2011に展示された新型スモールアームズをご覧いただくことにしよう。
Sphinx SDP
スイスのスフィンクス社は、3000シリーズ発展型としてSDPを初公開した。先行した3000シリーズは、グリップフレームが上下二つに分割されており、スチール、ステンレス、アルミなどの組み合わせが可能だった。新型のスフィンクスSDPは、各社で製作されているポリマー樹脂製グリップフレームにピストルに対抗すべく、下部フレームがポリマー樹脂で製作されている。
Grand Power X-Calibur
スロバキアのグランドパワー社の製作しているマーク7セミオートマチックピストルシリーズの最終発展型として製作されたのがXカリバーで、先行したK100エクストリーム Mk7と同様に、スライドに多くのライトニングカットを入れてスライドの重量軽減を図っている。ポリマー樹脂製グリップフレームを装備し、現代の銃では珍しいターンバレル(ロテイティングバレル)ロッキングが組み込まれていることが特徴だ。
Taurus PT809E
タウルス社が軍や警察向けに製作しているポリマー樹脂製グリップフレームを装備した大型セミ・オートマチックピストルが、PT809Eだ。800シリーズで9mm×19弾薬を使用する製品がPT809で、このシリーズには、.45ACP弾を使用するPT845や.40S&W弾を使用するモデルPT840も供給されている。いずれもグリップのバックストラップの交換によって、グリップサイズの変更が可能となっている。
Caracal F
石油の輸出で多額の外貨を獲得している中東諸国は、兵器の自国生産、国産化を進めつつある国が多い。それらの国はヨーロッパから技術者を招き、自国の技術者と協力させて兵器の設計や生産を進めている。アラブ首長国連邦のカラカルFもそのような製品の一つだ。全体的に見ると、カラカルFは、オーストリアのグロックに近い製品だ。開発に協力したドイツのハーネル社が、ヨーロッパ市場に供給する製品をドイツ国内で製造することになっている。
Fab Defense

下:KPOS G-17-19 Carbine Conversion Kit
アメリカのファブディフェンス社は、強化樹脂製の小火器用周辺アクセサリーを多機種製造供給しているメーカーだ。上は、FNハースタルのファイブセブンを組み込んで、ピストルカービンに変身させるためのコンバージョンキットとなっている。
下はオーストリアのグロック17、19を組み込んでピストルカービンに変身させるキットで、フルオートマチック機能を持つグロック18を組み込めば、代用小型サブマシンガンにもなる。この製品は、防弾バイザーつきヘルメットを着用した状態でも使用できる、特殊な形状のショルダーストックを装備させたものだ。
IWI Megagun Jericho
イスラエルのIWIが製品化したメガガンは、ファブディフェンスなどが製作しているカービンキットと同様に、ピストルを組み込んでカービンに変身させた製品だ。これは汎用型ではなく、自社製品のIWIジェリコ専用に設計されており、かなり強度のある構造になっている。テレスコピックショルダーストック部分は、金属製で、ここに予備マガジンも装着可能だ。
Taurus RT85 Polly
タウルス社のロングセラーモデルである金属フレームのRT85リボルバーをベースに、フレーム部にポリマー樹脂を多用して製品化されたものが、このRT85ポリーだ。.38スペシャル口径の5連発となっている。S&Wからも2010年にポリマー樹脂製グリップフレームリボルバーであるニューボディガード38が製品化されており、リボルバーの分野も樹脂化が進みつつあるようだ。
Taurus Judge Public Defender
こちらもポリマー樹脂製グリップフレームを装備した5連発リボルバーで、原形となったのは金属製グリップフレームを持ち、.410ショットシェルを使用するユニークなリボルバー、ジャッジだ。S&Wも2011年に.410ショットシェルを射撃できる6連発のリボルバーをガバナーの製品名で市販している。RT410-2 RP400は、ジャッジのグリップフレームをポリマー樹脂として軽量化を図った製品だ。
Armalite M-15A4
アーマライトM-15A4カービンは、アメリカで数多く製作されているM4カービンのクローンだ。かつてイーグルアームズと呼ばれた同社は1995年にアーマライトの商標権を買って、アーマライトを名乗っているに過ぎず、同社はAR-15を開発したフェアチャイルドのアーマライト・ディビジョンの後身ではない。M-15A4は、M4A1カービンと基本的に同じだが、より多くの照準オプションを可能にするため、フロントサイトベースが削られて、ピカティニーレイルに置き換えられている。
Astra Arms STG4 Guernica Command 10.5 Carbine
スイスのアストラアームズ社は、倒産したスペインのアストラ社名を受け継ぎ、3年前にスイスで再建されたメーカーだ。しかし、同社の製品は、スペイン時代のラインナップとはまったく異なり、M4カービンに似たアサルトライフルを製造している。写真の最も短いSTG4ゲルニカコマンド10.5カービンをはじめとして、12.5インチ、14.5インチ、16インチの4機種のバレルでカービンのバリエーション展開を図っている。
Smith & Wesson M&P4
S&W M&P15の派生型のカービンで、その外見デザインをアメリカ軍のM4A1カービンに似せた製品だ。写真の製品は、一般市販型ではなく、軍用や警察用に向けたもので、フルオートマチック連射機能が組み込まれている。このところ、ほとんどの大手ガンメーカーがM4のクローンの生産に乗り出し、メーカー独自の特徴ある製品が少なくなっているのは残念だ。
Smith & Wesson M&P15 MOE
M&P15の派生型カービンバージョンで、M&P4アサルトカービンからフルオートマチック機能が取り除かれているだけだ。写真の製品は、アースブラウンのハンドガードやショルダーストックが装備され、S&W社としては、これを民間市場と国内外の警察向けと位置付けている。
Schmeisser M4 Solid 1
2009年にドイツで創業したシュマイザー社によるM4カービンクローンだ。しかし、その作動方式は、ダイレクトガスインピンジメントではなく、シュマイザー社独自設計のガスピストン方式が組み込まれている。また、4面にピカティニーレイルを装備させた金属製ハンドガードは、アッパーフレームとしっかりと固定された準一体型の構造になっており、ガタツキを防いでハンドバード上に載せた光学機器の正確な照準を可能にしている。
Taurus ART556
タウルス社は、このところ単なるピストルメーカーから総合兵器メーカーへの転身を図っている。その一つの現れが今回のMilipol 2011で初公開されたART556アサルトライフルだ。ガスピストン作動方式で、多くの部品がポリマー樹脂で製作されている。タウルス社は、次期アメリカ軍制式の戦闘用ライフルのトライアルに、このART556の発展型をエントリーさせる予定だということだ。
HS Produkt VHD-D1, VHD K1
写真上: VHD-D1
旧ユーゴスラビアから独立したクロアチアで設計・製造されたブルパップタイプのアサルトライフルだ。フランスのFAMASに少し似ている。しかし、VHD-D1は、ロッキング方式としてターンボルトロックが組み込まれ、作動方式もガスピストンであるなど、FAMASとはまったく異なる構造だ。VHDの改良型のVHD-D1は、大型キャリングハンドルにオプティカルサイトが組み込まれている。
写真下: VHD-K1
VHD-D1のバレルを切りつめた短縮カービンモデル。ブルバップデザインで設計されているため、全長がわずか675mmであるにもかかわらず、230 mmの長さをもつバレルが組み込まれている。先行したモデルVHS-Kの改良型として公開されたVHD-K1は、キャリングハンドルの上面がピカティニーレイルになった。
Heckler & Koch G36
ドイツ軍だけでなく、複数のNATO加盟国で軍用ライフルとして選定されて使用されているG36だが、スタンダードのサイドスイング式のショルダーストックが、フラグメンテーションベス卜着用時に使用しづらいことが指摘されていた。これに対し、H&Kは新型の伸縮式ショルダーストックを設計し、その生産を開始している。
CZ805 BREN A1+CZ805G1
CZ805ブレンA1は、次期チェコ軍用ライフルトライアルにフォーカスし、チェスカーゾブロヨフカが独自に開発を進めている製品だ。この写真の製品には、システムとして開発された40mm×46グレネードを発射するCZ805 G1アンダーバレルグレネードランチャーが装備されている。
IWI Tavor CTAR21 Commander
イスラエルの|IWIが独自に開発したブルパップのタボールTAR21の派生型カービンだ。従来のものと基本的な構造や性能は変わらないものの、フレーム上面に改良が加えられて、長いピカティニーレイルが装備されるようになっている。
Taurus SMP9
総合小火器生産メーカーに脱皮しつつあるタウルス社の新製品だ。同社は、数年前チリのFAMAE社の協力でサブマシンガンを製作した。しかし、今回のSMP9は、ART556アサルトライフルとのデザインを統一させた独自開発モデルとなっている。ブローバック作動方式で、9mm×19口径と.40S&W口径(SMP40)の2機種が供給される。
Taurus CT9
SMP9サブマシンガンをベースに、一般市販や警察向けに設計されたセミオートカービンで、長いバレルとハンドガードを装備している。また、ショルダーストックも固定式のスケルトンタイプに変更された。