2025/02/26
EDM Arms “WINDRUNNER” M96 .408 Chey Tac and.50BMG
EDM Arms
“WINDRUNNER”M96
.408 Chey Tac and.50BMG
Turk Takano
Gun Professionals 2012年8月号に掲載
今回リポートしたEDM ”WINDRUNNER” M96は最新モデルではない。既に10年以上前に登場したモデルである。この数ヶ月、本誌で.408Chey Tacを近いうちにリポートすると伝えてきた。多分に読者の中にはChey Tacの有名モデル“インターベンション”M200と思われた方もいたに違いない。M200の製造元がEDM Arms社であることは意外と知られていない。どこのメーカーもどこで作られたか公表したがらず、自社製を匂わせるケースが少なくないからだ。.50BMGベースのバレル交換機能を備えたM96が登場したのは.408CheyTacが生まれる前、1996年のことだった。
EDM Armsの知名度が低いのはCheyTac L.L.Cの.408CheyTacの注目度に隠されてしまったからだ。しかしそれは2000年以降の話である。市場は.50BMGに優る新しいカートリッジを待っていたといえる。
当時、市場にあったボルト・アクションのマクミランM87/87R,M88,M92/93,M95とは一線を画するモデルだった。M96もボルト・アクションではあったが簡単に口径コンバージョンできるモデルとして注目を浴びた。マクミランはこれまでのボルト・アクション・ライフルのスケールアップ・モデルで、機構的な冒険は一切していない。かつて第一次大戦中、ドイツは西部戦線に登場した戦車に対抗するために、マウザー98歩兵銃を大型化した口径13mmの対戦車ライフルM1918を開発した。マクミランのボルト・アクション・ライフルはまさにこれだった。
バレットM82も既に登場していたのだが速射に有利というセミ・オートのメリットはあったものの精度がいまいちだった。一方、マクミランM87/M87R(R:リピーター)ボルト・アクションは当時のいかなる.50BMGライフルに精度で優り、その結果、多数が米軍に採用された。対人/対マテリアル口径.50BMGボルト・アクション・ライフルの先鞭を付けたのはこれらマクミランだった。第一次湾岸戦争がマクミラン・ボルト・アクション・ライフル最初の活躍場所となった。


一方、後発のEDM Armsの“WINDRUNNER”は基本作動方式でこそ旧来のボルト・アクション/マガジン付だがマクミランとは違い、日本語で言う機能美を備えたモデルだった。M96は無骨な、しかも冷たい銃器のイメージで創り上げられ、これが一般市場でカリスマ性を生んだ。ハリウッドが万歳するような格好とも言える。
EDM Arms社の経営者William Ritchieデザインによるこのユニークなボルト・アクション・ライフル・システムは注目された。優れたものは絶えずコピーされる。海賊版も出ているというが詳細は不明だ。
ボルト・アクションでバレル交換システム採用の何がユニークなのかという疑問があるかもしれない。バレル交換システムが一般的に採用されているのは持続発射速度を重要視する軍用小火器だ。EDMのバレル交換システムの採用は経済性から来たものだったと推察する。ベースが同じなら後々考えられる口径交換はバレル、ボルトそしてマガジンのコンバージョン・キットで対処できるからだ。
但し、この方法の弊害はベースそのものが初めから.50BMGとしてできているために、小さな口径である.408CheyTac用キットを組み込んだとき口径に比して土台が大型サイズとなることだ。M96口径.50BMGモデルは登場以来、米軍に採用されイラク、アフガンに展開された一部ユニットにより使われている。肝心の精度はサブMOAという。ここでのサブという意味合いは.700−.900となる。口径.408CheyTacも米軍に加わっているというが詳細は不明だ。
現在まで3,000挺以上が製造されているといわれているが、米軍を含めた友好国への供給、一般市場での販売の割合などは不明だ。口径コンバージョン・キットは.308、.300ウィンマグ、.338Lapuaマグナム、.408CheyTac、.50BMGに及ぶ。今回のテストのモデルは口径.408CheyTacで工場出荷され、かつ.50BMGコンバージョン・キット付属となっている。口径.50BMG基本モデルの重量は31ポンド(約14kg)だがテスト・モデルのように各種アクセサリーを取り付け更に格好良く(個人の好みもあるが)しようとすれば36ポンド(約16kg)にもなる。バレル交換は有利性をもたらすが口径が小さくなれば購入希望者もそれに見合ったサイズを望む。M98は.338Lapua マグナム用としたダウンサイズ・モデルだ。

M12(2012年登場)は最初から7.62mmNATO/.223とし口径に見合ったサイズでM96から見ればかなり小ぶりとなっている。そしてCheyTacカートリッジ用のModel XMシリーズには.375CheyTacと.408CheyTacがある。何千と既に製造されたEDMモデルだが、広い米国のためか、または軍用納入が多く、シビリアン市場に流れている数が少ないのかレンジで見かけるモデルではない。お客からの特別オーダーで前金支払いを受けたガンショップが仕入れることはあっても、売れるだろうという期待でとなると場所によっては商売としてはかなりの冒険となる。すぐ売れるという保証はなく何千ドルが動かなければ商売としての効率は悪くなるからだ。ファクトリー・カートリッジが無く、またはあってもめちゃくちゃに高価となると販売にかなりのブレーキがかかる。今回テストしたモデルはコンバージョン・キットも合わせ11,000ドルというから、筆者が容易に買えるものではない。韓国製のKIAが買える値段だ。日本の銃砲所持者から見ればそのぐらいの価格で驚くことはないよ…という声が聞こえてきそうだ。
所有者のロンは筆者の射撃仲間だが会社経営者で多忙を極め今回もその影響がもろに出た。リポートを最後まで読んでいただければそれが判る。
今回、ロンが購入したM96を初めて拝ませてもらったのがクラブ・レンジだった。彼のSUVから降ろすのを手伝った。この重さ、昔の記憶を蘇らせた。鋼鉄の塊とでも言おうか軍用となれば担ぐのは兵隊さん…寒冷地でまたは炎天下、砂、草の匂いのする地べたに展開して使用するとなるとご苦労このうえない。それ以後の話は実射の項で述べたい。
