2025/02/25
ドイツ生まれの スイスルガー マウザー パラベラムピストーレ
ドイツ生まれの スイス・ルガー
MAUSER
Psrabellum Pistole
Toshi
Gun Professionals Vol.4 (2012年7月号)に掲載
ルガー
先日出掛けたガンショーで、マウザーを1挺、仕入れてしまった。
それは、たった今ご覧頂いているパラベラム・モデルではない。
正直、書くのも少々はばかられるのだが、HScだ。エッ? HScなら何も恥ずかしがる必要はないだろうって?イヤそれが、同じHScでもスーパーのほうなのよね。
そうだ。80年代になってひょっこり登場した、ダブル・カラアムのイタリア製新型HSc。程度極上の箱入り完品状態でお値段も手頃だったのでついつい…(この話題の続きは『ガンショー徒然日誌』をお読みください)。
嗚呼、こんな調子だから、未だにまともなルガーが買えてないのだ。ガンマニア暦30数年、アメリカ生活も既に25年、銃器リポーター暦だって14年目に突入というのに、ただの1挺もルガーを持ってない半端マニアの自分。以前Gun誌に紹介したP08も、そしてアーティラリーも、ことごとく借り物で済ませていた。コレはやっぱし由々しき事態だ。
ルガーは、拳銃史上において極めて重要なモデルである。
何しろ、世界最初の成功したコンパクト・セルフローディング・ピストルがコレだからだ。
前身のボーチャード自動拳銃の完成が1893年。それを、ゲオルグ・ルガーが商業ベースに乗るようコンパクトに再構成したのが1900年。この時点から、コンパクト自動拳銃の歴史が始まったといえる。
またルガーは、9mmパラベラムという世界でもっともポピュラーなセンターファイア・カートリッジをもたらした拳銃でもある。オリジナルは7. 65mm口径だったのが、1902年にゲオルグ・ルガーがストッピング・パワー向上を狙って開発、投入した。
以上の二大特典を背負い、1901年にスイス陸軍、1903年にドイツ海軍そして1908年にドイツ陸軍制式P08に堂々採用され、二つの世界大戦を股にかけて戦った総生産数3百万挺以上の類い稀なる超優秀軍用銃。
おまけにコイツは、ナチス・ドイツの制式という呪われた側面も持つ。
嗚呼それなのに、手持ちのルガーがたったの1挺もない自分。持っているのはマガイ物ばかり。エルマのKGP68Aとストーガーの22口径と、そして今回ご紹介のマウザー・パラベラムという体たらくなのだ。

早速のデータは,全長218mm、全高137mm、全幅35.7mm、バレル長100mm,装弾数8+1発,重量889gといったところ。
マウザー
もちろん、ご覧のマウザー・パラベラムまでマガイ物扱いというのは、幾分ひどいかもしれない。
ご存知の通りマウザーといえば、D.W.M(ドイツ火器弾薬製造所)に次ぐ世界第二位のルガー・ピストル生産会社として名高い。
1930年にD.W.Mからルガー製造関連の一切を傘下に入れて生産を開始。程なく、ヒットラーの台頭(1933年)によって工場はフル稼働状態となり、45年の終戦までに約100万挺(ちなみにD.W.Mは約130万挺)のルガーを同社は造り上げた。

そんな、殆どルガーの代名詞的メーカーと言っても差し支えないほどのマウザーが、1970年代になって復活させたのが今回のパラベラム・ピストルなのだから、いくらなんでもマガイ物扱いは酷過ぎかもしれない。
けれど、自分としては認めたくないのだ。ルガー音痴と言われても構わない。それでも、どうしても第二次大戦以前のルガー以外はルガーとは認めたくないのである。
さらに、認めたくない理由はもう一つある。
コイツの、このスタイリングだ。
P08のあの畏怖堂々たるカタチこそがルガーのイメージなのに、ちょっと違う。そのちょっとの違いが自分の中ではすごく大きい。取り分け、このストレートなフロント・ストラップは一体どうしたことなのだ。


スイス・ルガー
どう観ても違う。華奢だ。変だ。
昔のマルシンのタニオ・アクションのP08でも、ここまでラインは崩れていなかった。 美的感覚の著しい衰え、または欠如を感じざるを得ない。P08がひたすらゴージャスなだけに余計貧相に見えるってもんだ。
とまで書いちゃうと、本格的に自分のルガー音痴を暴露する結果となるのでそろそろ控えたほうがよいか。
歴史的に観れば、コイツは清く正しく美しい(?)ルガーのカタチなのである。なぜかといえば、スイス製ルガー1929モデルの復刻版、それがこのパラベラムだからだ。

1929スイス・ルガーとは、スイスのThe Federal Arms Factory(所在地Bern)で1933~46年の期間に作られたルガー・バリエーションの一つだ。
前身の1906スイス・ルガー(スイス製の1906ルガー、グリップ・セフティ付き)を元に、軍用としてコスト削減を兼ねた10以上の改良を追加したのがコレだ。生産数はミリタリーが27,931挺、コマーシャルが917挺。つい最近のガンショーで実物を見たが、なるほどグリップ前部が見事にストレート。全体として華奢な成りもそっくりそのままである。
しかし、それでもなお、なぜに普通のP08ではなく、わざわざマウザーがスイス・ルガーで復刻したのかという疑問が残る。
コレに関しては、米GUNFACTS誌69年9月号の記事が詳しい。さらっと紹介すると…。
1960年代の初期、ヴァージニアの悪名高き武器輸入会社INTER ARMSのSamuel Cummingsという人物が、ドイツのマウザーにルガー再生産の話を持ちかける。1955年のFred Datigの『The Luger Pistol』やらHarryE . Jonesの『Luger Variations』等の専門書の刊行により、マニアの間でルガー人気が盛り上がりを見せていたからだ。

