2025/01/25
~Trail Bossという選択~ 減装弾用パウダー、トレイルボスを375H&H Magnumでテストする
Trail Bossという選択
減装弾用パウダー、トレイルボスを375H&H Magnumでテストする
Satoshi Matsuo
Gun Professionals Vol.2 (2012年5月号)に掲載
2009年12月4日、銃刀法が改正され、銃所持者の事故防止を目的とした“技能講習”という名の技能試験の実施が盛り込まれた。これにより銃所持者は、3年毎に技能検定を受け、合格しなければ、所持許可の更新ができなくなった。
筆者は、この技能講習の問題点を調べ、さまざまな分野の方々にインタビューし、2011年10月に発行されたFun Shooting誌Vol.18で詳しく解説した。あまりにも多くの問題点がある技能講習は、法改正と同時に施行することができず、その本格的な実施は3年間先送りされ、いよいよ2012年12月4日から完全実施される。
この技能講習は、ライフルを所持する一部のハンターにとって、非現実的なことを要求している。自分自身の銃を使って20発射撃をおこない、200点満点で立射で25点以上、膝射で40点以上、伏射で60点以上のいずれかのスコアを撃つことを求めているのだ。この点数は、とても低いレベルで、普通なら誰でもクリアできる。しかし、自分の銃を使うというところに大きな問題点がある。

20世紀初頭、ヨーロッパでは、マンリッカー・ショーナワー、ウエストリー・リチャーズ、マウザー、エレーなどが独自のハイパワー・カートリッジを開発、その性能を競い合った。ホーランド& ホーランドはこの開発レースに.400/375Belted Nitro Expressを送り込んだ。これは最初
に量産されたベルテッド・カートリッジとして知られている。これを改良したものが、375 H&H
マグナムで、アフリカのデンジャラス・ゲームとの対決に挑むハンターがこれを愛用した。開発は1912年であるため、今年はちょうど100周年に当たる。適合するブレットは200gr.から380gr.ま
で幅広く、ゲームへの適応性に富む。デンジャラスゲームには285gr.以上を使用することをお勧
めする。上の写真のAmmo.はFederal PremiumSAFARI Soft Point 270gr. 銃口初速2,690fps, 銃口エナジー 4,338ft.lbsだ
ウィンチェスターM94や、ホーワカービンといった軽量ハンティングライフルを所持しているハンターには、この点数を撃つことは極めて困難だ。標的はISSFの公式標的と同じか、それよりわずかに大きなものを使用する。これらの銃は、ISSFの小さな標的に着弾させることがやっとという精度しかない。それでも近距離の猪猟にはじゅうぶんなのだ。そのハンターが、他にもっと精度の高い銃を所持しているなら、基本的には問題ない。しかし、持っているのはその銃1挺ということも、じゅうぶんにあり得る。
その一方で、北海道でのハンティングを楽しむハンターは、マグナムライフルしか持っていない可能性もある。マグナムライフルは通常、連射などしない。強烈なリコイルが肩を襲う為、20発連続して撃つなどということはあり得ない。
かくして、技能講習に不向きな銃しか持っていないシューターは、技能講習用に見合った銃を新たに調達せざるを得なくなった。しかし、本格実施まで残り1年を切った現在、ほとんどのシューターは新しい銃を追加所持する為にも、まずは既存の銃で技能講習に合格しなければならない状況になっている。
今回ご紹介するのは、パワフルなマグナムライフルしか所持していないハンターが、強烈なリコイル無しに数十発を連続射撃する為のひとつの手法だ。

Reduced road
強烈なリコイルを避けるには、パウダー(火薬)の量を減らせば良いと単純に考えるのは、危険な発想だ。昔から、自衛隊が64式に7.62mm×51の減装弾を使用していることは有名な話だ。しかし、これはわずかな減装であり、その差は初速で10%に満たない程度である。
そもそも弾薬のハンドロードデータには、マキシマムロードとミニマムロードが記載されており、この範囲を超えたハンドロードは危険であるとされている。注目すべきは、ミニマムロードも記載されている点だ。少なすぎるパウダー量も危険なのだ。燃焼速度が遅いライフルの場合、ケース(薬莢)内にエアスペースがあり過ぎて、プライマーブラストで一気にパウダーが燃焼、異常高圧を発生させるという説がある。常に起こる事ではないが、命に係わる事なので、とても実験する気にはならない。
自衛隊の減装弾はもちろん、ミニマムロードを超えていない。

一般にライフルの減装弾を作るには、極少量の燃焼速度の速いパウダーを使用すると言われている。燃焼速度の速いパウダーは、ショットガン用やピストル用のパウダーだが、これも極めて危険だ。間違ってダブルチャージ、トリプルチャージをやって
しまうの可能性が高い。
燃焼速度の速いパウダーを間違えてケースにフルチャージすれば、銃が吹っ飛ぶし、シューター自身、そして周囲のシューターまで危険が及ぶ。ハンドロードを日常的におこなっているライフルシューターなら、通常のハンドロードで、ダブルチャージをおこなってしまい、ケースからパウダーをあふれさせた経験など、数えきれないほどあるはずだ。通常のパウダーなら、ケースからパウダーが溢れかえり、ダブルチャージしたことがすぐに判る。これを思うと、恐ろしくて、燃焼速度の速いパウダーを少量使用した減装弾など、絶対に作りたくないし、絶対に撃ちたくもない。
しかし、燃焼速度は速いが、ダブルチャージしてしまう可能性が無いパウダーが数年前から存在している。