2026/01/10
アルコーン Type B 新型ロッキングシステム AFスピードロック採用

Gun Professionals 2021年12月号に掲載
獲物を狙うアリゲーターのようなデザインのプレミアムオート、それがアルコーンファイヤーアームズ タイプBだ。ギリシャ語で“統治者”を意味する言葉をそのブランド名に冠したこのマシンは、その名の通り、グロックなどの現代のポリマーオートを圧倒するパワーを持っているのだろうか。紆余曲折の末に誕生したタイプBでそれを確認する。
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アルコーンの知恵
昨今のオートピストルの中で、読者の貴方が一番気になっているのは果たしてどのモデルだろうか?
ニューヨーク在住の鉄砲友達のご意見では、チェコ製ラルゴアームズのAlien Pistol(エイリアンピストル)なのだそうだ。18年の12月号で櫻井さんが紹介したアレだ。固定バレルのガスピストン式ディレイドブローバックで、バレルの上にピストンを配置することでバレルの軸線を異常なほど低くし、しかもストライカーではなく振り子状のハンマーがスライド側のトップ部に付くという凄まじいオート。その特異な構造のおかげで、外観もまさにAlien(エイリアン:異星人)どころか、『遊星からの物体X』(The Thing:1982)、あるいは『人類SOS!』(The Day of the Triffids :1962)くらいに妖しいインパクトが強烈だ。もしもお値段が5,000ドル(!)ではなくて500ドルくらいなら、筆者もさっさと飛び付きたいくらいで。
そんな超高級エイリアンピストルはさすがに別格として、庶民ライターの筆者が辛うじて手が届く範囲で目を惹くモデルとなると、Archon(アルコーン)のタイプBとなる。コレがまた、バレルをティルトさせない新式のロッキングシステム、AF-Speedlockの採用でバレルの軸線を極力低くしたワザありのオートだ。外観も、まるで獲物を狙うアリゲーターのようにしなやか、かつ挑戦的な姿がひどくカッコイイ。またエイリアンピストルとは異なり、フレームが昨今のスタンダードであるポリマー(エイリアンはアルミ合金)であり、かつストライカー発火だ。なのでグロックやらP320等と同じの目線で比較でき、その分、ロッキングシステムの目新しさが目立つ存在となっている。
実際の話、これだけポリマー銃がひしめいてくると、コスト削減で価格を下げるか、装備を充実させるか、モデュラー方向へ持っていくか、あるいは新手のロッキングシステムを構築するかの差別化が急務であり、各メーカーとも四苦八苦の状況だろう。
ともあれだ。筆者の見立てでは、アルコーン タイプBはかなりいい線行っているように思われるのだ。“違いを求めるシリアスユーザー向けのプレミアムなオート”とでも言うべき強烈な個性を感じるのである。
Type B
タイプBは2018年に市場へお目見えしたが、そのバックグラウンドは少々ややこしい。コレに関しては19年の5月号で矢野さんも触れているが、一応一通りは書こう。
タイプBの原点は、2012年にさかのぼる。この年、ロシア軍が新型のサイドアーム採用に関するテストを開始。対象はArsenal Firearms(アーセナルファイヤーアームズ)のStrizh、欧州向け製品名がStrike One(ストライクワン)というモデルだった。製造元のアーセナルファイヤーアームズは2005年に創業したロシアとイタリアの合弁会社で、1911を二挺張り合わせたAF2011A1ピストルで有名になったメーカーだ。軍のテストの過程では、米国からLarry Vickers(ラリー・ヴィッカーズ)らのエキスパートがデモンストレーションに呼ばれたり、ロシアの前大統領で当時首相のドミートリー・メドヴェージェフまでもが試射に訪れるほど国家レベルで話が進んでいたらしい。
が、それら一連の動きは、2013年を境にパッタリ途絶えてしまう。事の詳細は明らかではないが、銃自体に問題があったわけではなく、多分に政治的な背景が原因だったと伝え聞く。
ロシアでの公的採用が消えたアーセナルファイヤーアームズは、販路を米国へ求めた。幸い、ネバダ州のカスタムメーカーSalient Arms(セイリエントアームズ)のAdrian Chavez(エイドリアン・チャベス)が早くからストライクワンのポテンシャルに気付いており、彼とのパートナーシップでArsenal Firearms USAを設立。2016年のSHOT SHOWにおいて、ストライクワンを大々的に発表するに至った。
独自のロッキングシステムを備え、上質でていねいな作りのストライクワンは大いに注目されたが、今度はイタリアの工場のトラブルにより、僅か3~4千挺程度であっさり生産中止となってしまう。
その後アーセナルファイヤーアームズは、イタリアに代わってドイツの弾薬会社RUAG の工場と手を組み、同時に前述のチャベスの助言を元にストライクワンを小型化したニューモデルを開発。これを、2017年のSHOT SHOW においてStryk B(Strike B)の名称で発表する。
しかしココでまたトラブルが起きる。米国内の社名が同じ会社との間でコピーライトの問題が生じ、おかげで新型銃の発売は延期。その1年後の2018年に、社名をArchon Firearms(アルコーンファイヤーアームズ)と改め、銃の名称もストライクB からタイプ Bに変えてようやく販売に漕ぎつけたのが、今回ご覧のモデルというワケだ。
まさに紆余曲折。会社がロシアってのも色々難儀な部分があったかもしれない。残念なのは、先代のストライクワンが姿を消してしまったことか。確かあの銃は、『ジョン・ウィック:チャプター2 』(2017 )でCassianが握っていたし、マーベルのテレビドラマ『エージェント・オブ・シールド』でもGrant Wardが持っていたりで、この先バンバンに活躍するかもと期待していた矢先だった。現在も再販はなっていないから、復活は難しいかもしれない。
ニュータッチ
そんなワケで、Type Bだ。ストライクワンの5インチのバレルを4.3インチに切り詰め、装弾数を17発から15発に減らした改良コンパクト版がコレになる。
先ずは銃の要であるAF-Speedlockについてきちんと書かねばなるまい。このシステムは、一世紀以上前のBergmann-Mars(ベルグマン マース) 1903オートのフローティングロッキングブロックの流れを汲むものだ。
原理としては、バレル下部のチャンバー前辺りにY字型のロッキングプロックが被さっており、このパーツの両サイドの羽がバレルとスライドをロックしている。発射時、ロッキングブロックによってロックされたバレルとスライドは約6.5mm後退し、最終的にロッキングブロックは下部に設けられたカムスロットをメインピンがなぞることで下降させられ、バレルとスライドのロックが解ける。バレルはフレームに当たって停止し、スライドはそのまま後退して空ケースをエジェクトするという仕組み。
トラディショナルなブラウニングタイプとは異なり、バレルはティルトせず前後に動くのみだ。構造的にもシンプルで、おまけにボアラインを12mmという低さに持ってこれた。ボアラインが下がれば、フィーディングのアングルが減少して装弾が安定し、マズルジャンプも低く抑えられる道理である。ライバルのポリマー9mmでココまで下げたモデルはなかなかない。
いかがであろう。もうこの時点で、確実に一歩抜きん出ている。
そこへ持ってきて、エキゾチックで超モダンな造形である。大胆なカッティングのスライド、執拗に長く伸びたビーバーテイル、グリップ部の独特な滑り止めパターン…う~ん、何ともクール。グロックよりも全然ソフィティスケートされた印象だ。生まれがロシアということで、少々謎めいた雰囲気に惹かれる部分も大いにあるわけで。


