2026/01/07
CZ P-10-C Suppressor Ready【動画あり】

Gun Professionals 2021年1月号に掲載
CZUBが2017年に放ったP-10 Cは、グロック19を徹底的に研究し尽くして生み出した、CZ流G19改良型といえる存在だ。“グロックキラー”と呼ばれるほど高い評価を得て、現在そのバリエーションを拡大している。チェコ陸軍も採用したP-10は、今後のCZUBの製品展開の中で大きな柱になるだろう。今回はそのP-10 Cのタクティカル仕様に該当するサプレッサーレディモデルをご覧いただきたい。
追記:P-10 Cは2025年12月、ドイツ連邦軍も大規模採用を決めている。
チェコ陸軍採用
CZUB(Česká zbrojovka Uherský Brod)は2015年に軽量化を中心に改良されたBREN 2を発表、翌年にはBREN 2の評価試験を目的として合計800セットの80G1グレネードランチャーと共に2,600挺の契約をチェコ国防省との間で交わした。
その性能に満足したチェコ共和国陸軍はCZとの間で合計4万挺の追加契約を交わし、2020年4月21日付でCZがこのニュースを公式にアナウンスしている。
4万挺はすべてがBREN 2ではなく、16,000挺のBREN 2、1,600セットのG1グレネードランチャー、100セットではあるがスコーピオンのPDW仕様、そして新サイドアームとして21,000挺以上のP-10 Cも含まれていた。
2010年から2016年までの期間をみても既に4万挺の小火器がCZUBから陸軍に供給されており、その中にはポリマーフレーム化したSP-01ファントムも存在し、空挺部隊に運用されたと報じられる。
CZハンドガンは大成功を収めたスチールフレームのCZ75シリーズを中心に発展してきたが、新機軸のポリマーフレームオートであるP-07とP-09の成功を経て完成したP-10シリーズによって、その印象を更新しつつある。
ストライカー発射方式のトリガーを備えたポリマーフレームが花盛りとなっている市場に2017年に投入したCZ P-10 Cは幅広い一般ユーザーから高い評価を得ているのだ。
今回はP-10シリーズの中でもサプレッサーレディ仕様のP-10 Cを紹介させて頂こう。グロック中で最も人気の高いG19に対抗する最有力候補であるとも評されているP-10 Cは、かなり魅力的な製品だからだ。
CZハンドガン
出世作CZ75からポリマーフレームへの歩みを簡潔に辿ってみたい。
83年の歴史を誇るCZUBは輸出を大きく伸ばし、世界セールスネットワークは98ヵ国、本社従業員1,450人、ファイヤーアームズの毎日の生産数は1,577挺と謳っている。
アメリカには現地法人としてカンザス州にCZ-USA、そして独立した別会社ではあるが独自にCZ製品のカスタムモデル開発に力を注ぐアリゾナのCZC(CZカスタム)との連携で本社CZUBにはない開発環境を持つ。
冷戦真っ只中の1975年、共産主義のチェコスロバキア時代にCZ75は誕生した。口径9mm×19で15連マガジン、DA(ダブルアクション)/SA(シングルアクション)トリガーという内容は欧米の最新トレンドをフォローしたものだった。
西側のようなハンマーデコック機能こそ省略したがDAは当時の欧米製品の水準よりも滑らかで引きやすかった。DAからの安全な初弾発射にはハンマーを手動操作で戻す必要があり、練度の低いユーザーには向かないと指摘される反面、コック&ロックが可能なフレーム側のサムセイフティと、細く丸みがあり握りやすいグリップを持つスチールフレームが1911愛好家の心を鷲づかみにした。
スライドがフレーム内側のレイルで保持されるSIG P210と同方式の設計と、高い工作精度で命中精度も優れている。そんなCZ75は、完成度の高いコンバットオートとして欧米での知名度を確かなものにした。
P-10 Cのメーカー希望小売価格は$499と安く、コストパフォーマンスは高い。サプレッサーレディモデルも$599となっている。
この銃を最も高く評価したのはアメリカだったが、冷戦真っただ中の当時、東側の工業製品の輸入には多くの規制があったため、CZ75を直接チェコスロバキアから輸入できず、他国を経由するため高価となってしまい、1985年に塗装仕上げの廉価版が大量に輸入されるまではコレクターアイテムでしかなかった。その一方で、CZ75のパテントは秘密特許扱いであったため、イタリア等でコピー製品が作られ、これが世界中に普及した。
89年のビロード革命以降、急速に民主化へと向かい93年にチェコとスロバキアが分裂した事を機に欧米市場への進出を加速。アメリカへは代理店を通じての輸入だったが、97年に待望の現地法人CZ-USAを発足させた。
アンビ操作のCZ85、ファイアリングピンブロックセイフティの導入で安全性を高めたCZ75B(実際には過渡期のモデルから導入)、コンパクト、セミコンパクト、デコッカーモデル、.45ACPのCZ97Bなども展開した。
CZ75の持つ新旧が混在した設計思想は、欧米の軍・警察用サイドアームの要求にはあまりフィットしなかったが、IPSC/USPSA競技に大きな活躍の場を得てマガジンを大型化しフルダストカバーを加えたスタンダードIPSC(後にタクティカルスポーツへと改良)も発売された。
その一方で、CZは軽量路線へ邁進する欧米の新型ピストル市場も無視することなく、CZ75D PCRなどコンパクトのフレームをアルミ合金で軽量化した製品を展開している。但し、フルサイズモデルの軽量化には慎重な姿勢を見せ、唯一の例外が短期間だけコルトと組んで製造したZ40、そしてそのリソースを流用したCZ40Bが存在するだけだ。
CZポリマーフレーム
新たなマテリアルであるポリマーは、欧米の銃器市場を大きく変えた。80年代半ばの世界進出により、アメリカでヒットを飛ばしたグロックの影響だ。特許を避けつつグロックに近づけたモデル、またS&Wシグマのように近づけ過ぎて訴えられたモデル、DA/SAトリガーの軽合金フレームをポリマー化するといった順当な製品化を企画するメーカーなど、各社の方向性は枝分かれしたが、この分野にもそれほど遅れることなくCZは反応を示した。
1995年にポリマーフレームへの回答としてCZ100を発表。優秀なCZ75を輩出したCZが完全な新路線でポリマーフレームを開発すれば注目度が低い筈はない。
口径は9mm(13発)と.40S&W(10発)を加えて、細く握りやすいグリップはCZ75ゆずりともいえた。その後のシャドウ2のように側面が傾斜したスライドのエジェクションポート付近の突起が、銃を握った状態で、スライドを何かに押し付けて引く際の突起になるという、現在のレッジタクティカルリアサイトと同様の機能を加えた点などは確かに目新しかった。
ところが魅力を大きく損ねたのが、ストライカー方式によるDAO(ダブルアクションオンリー)トリガーだ。その時代リボルバーで訓練を受けた警官達にとっては初弾と2発目で大きく変化するDA/SA方式は馴染めず、その対応策でDAOが一時期評価された。
DAOは安全性が確かに高かったが、毎回長く重いトリガーを引かなくてはならないことと同時に、リセット距離も同様に長く連射能力を著しく落とす。CZだけでなくこの時代の多くのメーカーが、一般市場でもDAOが広く受け入れられるとミスリードした。バリエーションの1つなら良かったが万人向けではなかった。
筆者も9mm口径CZ100を数年所持していた。自衛用には実用性はあったが、DAOでは標的射撃にも向かず、正直面白みを感じずに手放した。
グロックのセイフアクションは、初弾装填時のスライド操作で一定量をコックするプリコック方式で、DAよりも軽く同一のトリガープルなので乗り換え組の警官にも移行しやすい。トリガーリセット距離もSA並に短く、連射性に優れて競技にも使えるという汎用性がある。
ただCZは、フルコック方式のSAトリガーと背面にデコック機能を追加した兄弟機のCZ110も製品化していた。しかしアメリカ市場ではCZ100を主力商品として展開した。その後に安全性の改良が行なわれたが、結局製造中止となりCZはポリマーフレーム開発競争の大波に乗れなかった。
それ以降、CZは無理してグロックを意識することは止め、主力であるCZ75シリーズに集中した。その次にポリマーフレームに再挑戦したのは2008年後半とかなり後になったが2つの新機種の開発をほぼ同時進行させた。
CZ75のフルダストカバーモデルのSP-01のデコッカー付きのタクティカルをベースに、バックストラップ交換機能も備えたポリマーフレームと、スライドの軽量化で金属フレームより33%の軽量化(重量815g)を実現したSP-01ファントムを発表。
そして新機軸のDA/SAトリガーのポリマーフレーム、CZ75 P-07を発表した。CZ75の名を継承するようにスライド/フレームレイルの噛み合わせやフレーム側セイフティレバーなどCZ75の設計を参考にしているが、これは完全新規設計で構造をより単純化し、パーツ点数も減らしたトリガーメカ、ユーザーが簡単にサムセイフティとデコック機能を入れ替えられる(同時期発表のCZ75Bオメガで導入)特徴をとり入れた。マガジンも僅かに太く、長さを抑えつつ装弾数を増やせる専用設計になり、3.74インチの小型モデルながら9mmで15発、.40S&Wで12発を装填できる。いよいよCZが本気を出してきたわけだ。
P-07は大きな反響を得て、2013年には4.45インチのフルサイズ版のP-09が加わり、9mmで19発、.40S&Wでも16発の大容量マガジンが注目された。特にこの新型マガジンはCZ Customの社長であるアンガス・ホブデルら開発陣を刺激して、後に完全アメリカ製CZ75のA01シリーズ開発のきっかけにもなっている。


