2025/08/16
CZ VZOR 50 チェコスロバキアの32ACPダブルアクションオート
Gun Professionals 2014年10月号に掲載
チェコスロバキアは第二次世界大戦前から優れた銃器の開発/製造で知られており、軍用/民間用を問わず、銃器の輸出は同国にとって外貨獲得の重要な手段であった。
1940年代後期に開発されたVZOR 50は、ストレートブローバックの32口径中型拳銃だ。サイズやシルエットがドイツのワルサーPPに似ていることから、そのコピーであるという意見もある。しかし、フレームの形状や内部パーツを見れば、それが大きな誤解であると気がつくはずだ。


チェコスロバキアの中型拳銃
ナチスドイツによって1938年に解体された後、1939年にドイツに併合されたチェコスロバキアは、ドイツ軍用銃の製造を強いられた。山岳部隊用の短小銃“G33/40”などがよく知られているが、VZOR 27(“VZOR”は英語の“Model ”に相当、以後は“vz. ”と略す)などの拳銃も、第二次世界大戦(以後はWWⅡと略す)では準制式として空軍などで使用されている。
戦後、共和国として復活したチェコスロバキアの軍や警察では、WWⅡ中に製造された各種32口径中型拳銃が使用されていたが、これらに代わる新たな警察用ハンドガンが求められた。設計を担当したのはJanとJaroslavのKratochvíl兄弟で、ドイツのワルサーPPを参考にしながらもライセンス料の支払いを避けるべく、独自のアイデアを盛り込んだモデルを1947~1948年に開発したという。それが32口径の中型拳銃、vz.50だ(アメリカでは“CZ50”と呼称されることもある)。作動方式はストレート(シンプル)ブローバックで、ダブルアクション/シングルアクション(以後はDA/SAと略す)のトリガーメカニズムをもつ。フレーム左側面のセイフティレバーは、一段下げるとハンマーは起こしたままトリガーバーがブロックされ、さらに下げると安全にハンマーを下ろすためのディコッキングレバーとして機能する。製造は1950年からストラコニチェ(Strakonice)のチェスカ・ズブロヨフカ(Česká zbrojozka、以後はCZと略す)で始まり、政府安全保障局向けに製造されたものにはフロントストラップに“NB”と50~52(製造年の下2桁)が、法務省向けに製造された少数には“MS50”と刻印された。
1950~1952年にかけて、88,823挺のvz.50が製造されたといわれている。政府が必要としていた数を満たせたことに加え、軍用制式拳銃となったvz.52の製造が優先されたため、その後のvz.50の製造はCZの支部であったウヘルスキ・ブロッド(Uherský Brod、以後はUBと略す)の工場に移管された。
UB工場でvz.50の製造が開始されたのは、1957年のことだ。現在、CZUBとして知られている大手銃器メーカーの前身である工場で、最初に製造された拳銃がvz.50であったというのは興味深い。マガジンブレイク(マガジンの脱落防止機構)の追加やイジェクター兼スライドストップの強化、スライド後部両側面の滑り止めグルーブやハンマースパーの形状、ハンマーピンの保持方法やテイクダウンキャッチの形状など数々の変更を経つつ、1970年までに約270,000挺がUB工場で製造されたといわれている。


vz.50の全長は166mm、銃身長は96mm、未装填重量は710gで、ワルサーPPの数値はそれぞれ170mm、98mm、660gとなっている。
vz.70
多くのマイナーチェンジを重ねつつ製造が続けられたvz.50であったが、1970年のグリップパネルとマガジン下部のフィンガーレストの形状変更に伴い、モデル名はvz.70に変更された。基本メカニズムに違いはなく、同じ銃と考えてもよさそうなものだが、アメリカの法律上では明確に区別されている。vz.50は、BATFE(火器酒類タバコ爆発物取締局)によって“Curio & Relic”(キュリオ&レリック:歴史的価値のあるクラシカルな銃器、アンティークとは異なる)と認定されており、コレクターズライセンス保持者であれば、通常の銃器購入の際に必要な書類手続きなしで入手できる。一方、同じ基本構造をもつvz.70はC&Rに該当しないので、コレクターズライセンス所持者でも書類手続きが必要になるというわけだ。
1983年に製造中止となるまで、約819,000挺のvz.70が作られたといわれている。

vz.50(下)では、フレーム右側面のテイクダウンキャッチを押しながらスライドを最後まで後退させ、スライド後部をもち上げて前方に取り外す。ワルサーPP(上)では、トリガーガードを下げた状態で維持しながらスライドを最後まで後退させ、スライド後部をもち上げて前方に取り外す。





