2025/05/27
【NEW】CZ Shadow 2 Carry シャドウ2発展型エブリディキャリー(EDC)ピストル【動画あり】
Text & Photos by Tomonari Sakurai
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4月24日、CZ シャドウ 2キャリーが発表された。スポーツコンペティションピストルであるシャドウ 2から発展させ、LEやセルフディフェンス用のEDCピストルとしてのキャラクターが盛り込まれている。この銃はCZ 75の進化系というべき存在だ。

全長: 190.5mm
全幅: 38.1mm
全高: 137.2mm(RMSc無し)
重量: 862g (RMSc無し)
口径: 9×19mm
マガジン装弾数: 15 発
撃発機構: シングル&ダブルアクション
作動方式:ショートリコイルオペレーテッド
フレーム素材:7075 T6アルミニウム
スライド素材:カーボンスチール
銃身長:4インチ
サイトシステム:ドリフトアジャスタブル3ルミナスダット、ポストタイプフロント、レッジスタイルリア
オプティックカット:RMScフットプリント
トリガープル: DA= 5.39kg, SA=2.15kg
シンプルかつ力強いシルエットが際立つサイドビュー。ロゴの刻まれたグリップと低重心なサイトシステムが、実戦的な設計思想を物語る。
ヨーロッパではLaw EnforcementやMilitary向け装備の展示会がいろいろ開催されている。フランス国内でいえば、EurosatoryやMilipolといったイベントだ。それらに参加しているCZUBのブースでは、様々なCZ製品が展示されているが、そこにCZ Shadow 2を見掛けることはない。
CZ Shadow 2の原点であるCZ 75は、かつて“最高のコンバットピストル”と評価されたが、CZ 75は本来スポーツピストルとして開発されたモデルだった。ソ連の衛星国だったチェコスロバキアから外貨獲得の目的で西側へ輸出されている。それゆえ、共産圏時代のチェコスロバキアでは、軍や警察用としてCZ 75を採用した実績はない。高い戦闘能力を持つ銃であったにも関わらず、その検討すらされたことはなかった。
その後、長い時間を掛けてCZ 75は進化し続けた。そんな現代版CZ 75のバリエーションのひとつであるShadow 2は、スポーツピストルとして高い人気を獲得している。正確に言えば、スポーツコンペティションピストル、いわゆる競技用ピストルだ。
スポーツピストル、その中でも競技用ピストルは、命中精度を最重要視した製品で、誰もが扱える簡便さは必要とされていない。そのユーザーは銃の操作に精通した人だけだからだ。
一般的に軍用やローエンフォースメント向けの銃というものは、スポーツピストルより“高性能”であるという印象を持つ人は多いだろう。それは必ずしも間違った解釈とはいえないが、軍用やローエンフォースメント向けの銃は、常時携帯しても使用者が負担に感じないように軽量化したり、暴発を防ぐためにあえてトリガープルを重くしたりしている。
一般の兵士や警察官は四六時中、射撃訓練をしているわけではない。特に警察の場合、銃を使ったトレーニングは年に数回、限られた弾数しか射撃をしていないのが現実だ。だから、警察官といっても、射撃や銃の扱いに関しては、素人同然という場合がある。そんな人にトリガープルが軽い銃を渡せば、暴発させてしまうかもしれない。だからトリガープルを重くする。その結果、性能が少し落ちても構わない。暴発事故を起こされるよりずっといいからだ。
その一方で、軍・警察用の銃には、過酷な環境でも作動不良を起こさず、トリガーを引けば確実に発射するといった高い作動性能が求められる。また壊れにくさと、地面に叩きつけても暴発しないという安全性能も重要だ。
したがって、スポーツピストルと軍・警察用のピストルを比べた場合、どちらの方が優れているか、これは一概にはいえない。しかし、スポーツピストルの方が“使う人を選ぶ、玄人向けの銃”だとはいえるだろう。
2016年3月4日、IWAアウトドアクラシックス2016で発表されたCZ Shadow 2は、正にそのようなスポーツコンペティションピストルとして登場した。滑らかで軽いトリガープルを持っている。その代わり、オートマチックファイアリングピンブロックセイフティは装備されていない。デコッカーもない。ハンマーを安全にデコックさせるには、しっかりとハンマーを押さえながらトリガーを引き、ゆっくりと前進させる必要がある。射撃時のリコイルを抑えるために重量は1kg以上とかなりの重さだ。その代わり、高い命中精度や連射時の安定性は抜群だった。グリップフィーリングも良い。とにかくShadow 2は、射撃に特化した製品として登場した。
その結果、スポーツコンペティションピストルとして爆発的な人気を獲得、2016年の発売当初はしばらく在庫切れが続いた。その後CZは、Shadow 2のバリエーションをどんどん増やしていく。シングルアクションオンリーとしたSA、 オプティックレディのOR、シングルアクションストレートトリガーのTarget 5”、その6インチ仕様であるTarget 6”などだ。
そして、2023年8月21日、新たな派生モデルとしてShadow 2 Compactが登場。このあたりからShadow 2がいよいよ、コンペティションだけでなく、ローエンフォースメントやセルフディフェンスをある程度視野に入れてきたのだな、と感じた。スポーツコンペティションピストルであるならば、コンパクトにする必要はない。

全長: 191mm
全幅: 35mm
全高: 138mm(ACRO P-2無し)
重量: 870g (ACRO P-2無し)
口径: 9×19mm
マガジン装弾数: 15 発
撃発機構: シングル&ダブルアクション
作動方式:ショートリコイルオペレーテッド
フレーム素材:7075 T6アルミニウム
スライド素材:カーボンスチール
銃身長:4インチ
サイトシステム:ファイバーオプティックフロント、チェッカードリア
トリガープル: DA= 4.67kg, SA=1.54kg
オプティックレディだが、リアサイトはカバー上部に配置されていた。そのためアダプターを介してACROを装着するとリアサイトがなくなってしまう。このあたりのデザインは先行したShadow 2 ORの仕様をそのまま踏襲したものだ。
そして2025年4月24日、アトランタで開催されたNRA年次総会&展示会(NRA Annual Meeting & Exhibits)で、さらにローエンフォースメント向けに進化させたShadow 2 Carryが発表された。
この発表の1ヵ月前の3月に、最新モデルを一足先に体験すべく、チェコ・ウヘルスキーブロトにあるCZ本社を訪れた。CZ本社から「新作を撃ちに来ないか」という嬉しい誘いを受けたからだ。
CZがどのような進化をShadow 2 Carryに加えたのか、よい機会なのでそれを確かめようと、CZ Shadow 2 Compactとの撃ち比べをこの時に行なってみた。比較対象としたShadow 2 Compactは、既に述べた通り、2023年に追加されたモデルで、IPSCやUSPSAといったアクティブな競技で高く評価されたフルサイズのShadow 2を、よりコンパクトに凝縮したモデルだ。
Shadow 2 Compactは単なるバレルとスライドの短縮にとどまらず、全体的なプロポーションを見直し、携行性とバランスを重視した再設計が行なわれている。バレル長はフルサイズの120mmから102mmに短縮、フレーム素材はアルミニウム合金に変更された。これにより、スチールフレームのオリジナルが重量1.33kgであったのに対し、コンパクトでは約1.08kgへと大幅に軽量化されている。
トリガーフィーリングやサイトピクチャーといった部分は、競技用ピストルの血統をそのまま受け継いだ。アジャスタブルリアサイトとファイバーオプティックフロントサイトの組み合わせは、素早く正確な照準を実現し、トリガーもDA/SAでスムーズな引き味を保っている。左右両対応のアンビセイフティや、深くえぐられたビーバーテイルなど、その操作性の高さはShadow 2そのままだ。
このShadow 2 Compactをベースに、さらなる実用性を追求したモデルが、今回のShadow 2 Carryとなっている。最大の違いは、オートマチックファイアリングピンブロックセイフティとデコッカーが新たに追加され、安全性を大幅に高めていることだろう。スライドにはShield RMScに対応するダイレクトカットが施され、ダットサイトとアイアンサイトを同時に使用できるようになった。新型サイトや、わずかにリデザインされたスライドストップ、ブラックとなったグリップパネルなど、見た目と機能の両面で進化が見られる。そんなShadow 2 Carryを手にした瞬間、期待感が多いに高まった。





フロントセレーションのデザインは同じだ。写真ではわかり難いが、銃口の上、スライド先端部のフロントサイト基部部分だけ、その面取りがCarryの方が深く、滑らかになっている(矢印の部分)。左右はどちらも同じような面取り加工なのだが、この上の部分だけ、わずかに違うのだ。

Carryのフロントサイトはダブテイルであるのに対し、Compactは差し込み式で、スプリングピンで固定している。Shadow 2はいずれもこの形式だったが、Carryで初めてダブテイルとなった。但し、Carryもスプリングピンを併用している。またCompactのフロントサイトは赤のファイバーオプティックで、この部分もShadow 2オリジナルと同じだ。Carryは白っぽいルミナスダットとなっている。

どちらもスケルトンハンマーなのだが、その形状が微妙に違う。いずれにしても軽量化と慣性低減を狙った設計だ。シャドウ2においては、この軽量ハンマーがトリガーフィーリングを左右する重要な要素となっており、キレのあるレスポンスに貢献している。スポーツ射撃の流れを汲みながら、キャリーガンとしての即応性も意識した作りだ。
スライド後端の面取りも、Carryの方が大きくカットされている。Compactの方は、スパッと切り落としたようなデザインだ。

Carryはマニュアルセイフティを排してデコッカーを装備している。コック&ロックがベストだという考え方が長い間あったが、現代はトリガーを引くだけで撃てる方が、即応性が高いという考え方が広く定着している。そのため、CarryはShadow 2で初めて、マニュアルセイフティを排してデコッカーを搭載した。